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イニシエからの絆  作者: 炎の剣製
10/71

010話 『怒る真紅』

滅多に怒らない真紅が怒ります。


4/22(木)



「海斗さん、すみませんでした!」

「いえ、いいですよ」


そこではクリスが先日に海斗を疑ってかかった事に対して謝罪をしていた。


「いーえ、謝らさせてください! 海斗さんがガリウスさんに頼まれてわたくし達の事を警護してくださっていた事をいざ知らず…しかも敵対ししてしまっていたなんて聖職者の身として恥ずかしいかぎりですわ!」

「ほ、本当に気にしてませんからもういいですよ…」


海斗は本当に気にしていないのだがクリスは気にする質なため深く謝罪を繰り返していた。

そんな海斗に真紅が助け舟を出した。


「そうよクリス。せっかく海斗くんがいいっていってくれてるんだから。だからあまり自分を責めないで、ね…?」

「…はい。ですが今日は寮に帰りましたら教会で懺悔くらいはさせてください…。でないと自分を許せそうにありませんから…」

「そんなオーバーな…。本当に構いませんから元気を出してください」

「…海斗くん、もうだめよ。クリスってこうなると頑固一徹になっちゃうから…。ね、クリス? 私も今日いっていいかな? 部活は休みだし…それに久しぶりに“クレセント”さんに会いたいし…」

「はい、構いませんよ。真紅さん達が来てくれるならきっとマザーも喜ぶと思います」

「真紅さん、クレセントさんという方は一体どんな人なんですか? クリスさんの母親ですか?」


先程から挙がるクレセントという人物に海斗は興味を持ち二人にそれを聞いてみた。


「…わたくしから説明しますわ。マザー・クレセントは親にまだ赤ん坊だった時に捨てられたわたくしを拾ってくださり、そして今は聖梁教会でシスターの長をしていらっしゃる御方です…。

わたくしにとっては本当の母親みたいなものなんです…」

「…過去にそんな事が。すみません、無神経でしたね僕…」

「いえ、いいですよ。わたくしが勝手に話したことですから。それに今ではマザーの事を本当の母さまと思っていますし…。

それに周りにこんなにわたくしの事を気に掛けてくれる方達がたくさんいらっしゃる…こんなに幸せな事はありません」


クリスは心の底から今の生活ができていることに感謝している。


「クリス…」

「お強いんですね、クリスさんは…」

「…いえ、わたくしなんかまだ弱いですよ。でも支えてくれる方々がいてくれるからわたくしはいつまでも頑張れるんです!」

「クリス…!」


そんな話を聞いて、真紅が耐え切れずに思わずクリスの事を抱き締めていた。


「クリス! 私達はいつまでも親友だからね! だからくじけちゃだめだよ!」

「はい…ありがとうございます。真紅さん…」

「本当に仲がいいんですね、お二人とも…羨ましいかぎりです」

「うん! だって一番の親友だからね!」

「はい!」

「でもそろそろ静かにしないと…」


海斗が少し注意を促して、続いて教室に入ってきた琴美が、


「あー…その、真紅とクリスさん? そろそろ私の古典の授業を始めてもいいかしら? でないとみんなが話を聞いてていつまでたっても泣き止まないから…」


琴美が突然話し掛けてきて、気づくと周りのみんなが泣いていた…。


「「あ……!」」


それで二人は顔を真っ赤にする。


「すみません、話すタイミングがなかなかなくて…」

「「すみませんでしたぁ~…」」


真紅とクリスは教室の中だというのに熱中して話していたので授業が始まっている事に気づいていなくて恥をかいていたのだった。



◆◇―――――――――◇◆



そしてお昼休みになり恒例である中庭で食事をとっている時だった。

鈴架がその話を聞いて、


「午前中にそんな事があったんだ…」

「はい。お話を聞かれているとは思っていませんでしたから…」

「二人ともそういう話をし始めるととまらなくなっちゃうもんね」

「それは鈴架も同じでしょ?」

「てへっ…その通りです」

「でも僕達の秘密が聞かれなくてよかったですよ。騒ぎになっちゃうますからね」


真紅、鈴架、クリス、海斗の四人で昼食をとっている時だった。


「秘密…? 騒ぎ…?…なんの事だか知らねぇが俺には関係ねぇなぁ!」

『!?』


その時、上の方からまた声が聞こえてきた。

木の上には翔が立っていて真紅達を見下ろしていた。


「翔くん!?」

「よう真紅!」

「…誰ですか、彼は?」

「雲隠翔っていって昔からいっつもお姉ちゃんに突っ掛かってくる変な奴ですよ…」

「変な奴いうなぁ! ところで真紅…もう傷は治ったみたいだな? なら勝負だ!」

「お断わりよ…いつもいっているでしょ? 私は別に翔くんと戦う理由なんて全然ないんだから!」

「そっちになくてもこっちにはあるんだよ! そんじゃいくぜ!」

「もう…」


真紅がしょうがなく前に進もうとするが先に海斗が前に出た。

それで真紅が不思議がって、


「海斗くん…?」

「真紅さんは下がっていてください。彼の相手は僕がします」

「なんだ…おまえは?」

「僕は昨日転校してきた美薙海斗です。それより君…僕はまだ来たばかりで真紅さん達と君がどういう関係なのか口を挟む立場じゃないですが…。

女性に対してそのような態度をとって恥ずかしいとは思わないんですか…?」

「なんだと…!?」


海斗の言葉に翔はすぐに頭に熱が上がり怒り出した。


「ちょっと海斗くん…これは私の問題だから海斗くんは関わらないほうが…!」

「いえ言わせてください! ああいう人には一言ガツンと言っておいたほうが彼のためです」

「ちっ!」


翔は舌打ちをしながらも、


「(こいつできるな…雰囲気だけでかなり強さが伝わってきやがるぜ!)だがよ! なんでてめえはそんな女の集団の中にいるんだ? 女々しいぜ!…それとも他にダチができなかったのか?」

「!」


真紅はそれで表情を変える。


「なに? いわせておけば…!」


海斗が言葉ではダメだと思い実力行使で倒そうと動こうとするがそれより早く真紅が翔に平手打ちをしていた。

パシンッ!という音がよく響いていた。


「がっ!?」

「あ、真紅さん…?」

「……」


海斗はそれで呆然としていて、でも真紅は怒った表情で翔に対して、


「翔くん! いいかげんにしなさい! 君は海斗くんの悪口をいうためだけにここにきたの!? 君がそんな人だったなんて…私、見損なったわ!」

「…!」

「…さ、いきましょ。みんな…」


それで真紅達はバツが悪そうな顔をした翔をその場に置き去りにしてその場を後にする。


「……」

「あ、秦先輩…」


だが教室に戻る途中で秦が真紅達の通る廊下の壁に背を預けていて、


「すまなかったな、真紅…嫌な気分にさせてしまい…」

「いえ、そんなことは…」

「そして海斗くんといったか?」

「はい」

「翔は頭に血が上るとすぐにカッとなってしまう奴なんだ。悪気はないんだが…だが兄の俺から謝る、先程のあいつの非礼な数々…許してやってくれ…」

「…はい、もう平気ですから頭をあげてください、秦先輩…」

「あぁ…。では翔の事は後は俺に任せてくれ…」

「お願いします。それと叩いてしまった事を謝っておいてくれませんか…?」

「わかった、伝えておく…」


そして真紅達は校舎に戻っていき、秦が無言で立ち尽くしている翔に寄って、


「…なぁ、翔? 今回ばかりはおまえが完全に悪いぞ」

「…秦兄っ、わかってる! わかってるけどよ…!」

「…なら後で一緒に謝りにいこう。今なら真紅達は許してくれるだろう…」

「俺が素直に謝るなんて事できると思ってんのかよ!?」

「翔…」

「俺はなんにしても拳でしか語り合えねぇ馬鹿なんだよっ! ちくしょ! 俺はもう帰る!!」

「翔!?」


翔はその場で跳躍して森の中へと消えていく。

秦は止めようと声を上げるがもう翔の姿は消えてしまった。


「…まったくあいつは!」


そんな翔に対して秦は呆れているのだった。



◆◇―――――――――◇◆



そしてそのまま本当に家に帰ってきてしまった翔は雲隠家の家のドアを乱暴に開き、


「帰ったぜ!」

「…ん? どうしたの翔? まだ学校終わってないじゃない…?」


翔に話しかけた女性は、『雲隠(くもがくれ)(しず)』。

雲隠家の長女で歳は23歳。そして雲隠流剣道場の師範代をしている強者だ。


「静姉か…。早退してきたんだよ!」

「なんで…? お父さんがまた怒るわよ?」

「そんな事関係ねぇよ! 俺はもう山に修業してくるからな!」


そして翔は乱暴に制服を脱いで私服にさっさと着替えて山の中に入っていってしまった。


「もう! 本当にしょうがないんだから!」


そんな翔に静は秦と同じ感想を抱いているのだった。

そして今の翔の心は、


「(ちくしょおっ! あの時頭に血が上っていたとはいえ真紅の動きが見えなかった…! 真紅にあって俺にないものはなんなんだ!?)」


そんな事を延々と考えていた。

…一方、真紅達はというと帰り際にクリスの住んでいる聖梁教会へと足を運んでいた。


「ただいま帰りましたわ。マザー・クレセント」

「おかえりなさい、クリス。まぁ! 真紅さんと鈴架さんではありませんか! お久しぶりですねぇ…」

「はい、失礼します」

「こんにちは」


クレセントは久しくやってきた真紅と鈴架を快く出迎えた。


「あら…? ところでそちらの男の方はどちら様ですか…?」

「あ、昨日わたくし達のクラスに転校してきました…」

「お初にお目にかかります。僕は美薙海斗といいます。よろしくお願いします。クレセントさん」

「まぁ、新しいご親友の方ですわね! よくわたくしの教会にきてくださいましたね。歓迎しますわ!」

「あ…はい」


海斗に対しても温和な笑みを向けるクレセントだった。


「それはそうと皆さんは今日はなにかをしようとここにきたのではありませんか?」

『!』


クレセントの物言いに全員は驚きの表情をする。

それでクレセントは「やはり…」と呟き、


「皆さんのお顔に書いてありますよ? さぁ、なにかあったのですか? わたくしでよろしければ相談にのりますわよ?」

『………』


クレセントの質問に、だが四人はなかなか答えることができないでいる。

するとクレセントはなにかを察したのか、


「…言えませんか? それなら構いません、心のなかで自分の行いに懺悔すれば神もきっとお許しをしてくれることでしょう…それでは目をつぶってください」


そして一同はゆっくりと目をつぶり、黙祷をした。


「では。ああ、神よ…もしお聞きになられているのならばこの迷える小羊達を許したまえ…アーメン…」

『アーメン…』


四人はクレセントにならって一緒にアーメンと唱えていた。


「もう、目をあけてもよろしいですよ…?」


そしてクレセントとの少しの会話を終わらせて一同は帰り支度をしていた。


「真紅さん、そしてみなさん。今日はわざわざ付き合ってもらってありがとうございますね」

「心に迷いがありましたらいつでも来てくださいね…」

「はい、失礼しました。クリスまた明日ね」

「学校で会おうね!」

「それでは…」

「はい。ごきげんよう、皆さん」


それで聖梁教会を後にする三人。


「結構本格的でしたね…?」

「うん、クレセントさんは本当にいい人だから頼りになるんですよね」

「そうね。…そうだ、鈴架に海斗くん。今日ちょっと私寄るところがあるから先に帰ってて」

「わかりました。でもどこへ…?」

「ちょっと、ね…。それじゃ!」


そうして真紅は鈴架達とは違う道を歩いて行った。


「きっとお姉ちゃん、秦先輩の家にいったんだよ」

「え? どうしてですか?」

「お姉ちゃんてかなり性格真面目でしょ? だからきっと今日の昼の事を翔の奴に謝りにいったのよ」

「そうですか…。それなら僕も行った方がいいんじゃないでしょうか…?」

「そんなことないですよ! 海斗さんはあいつにさんざんいわれたむしろ被害者なんですから!」

「ですが…」

「いいから早く帰りましょう。明日にでも謝ればいいじゃないですか?」

「そう、ですね…。(…でも、この嫌な予感がするのはなんでしょうか?)」


海斗は嫌な予感がしながらも鈴架と一緒に帰り道を歩いて行った。




――to be continued.



キリスト教の学校ですから教会もあってなんぼだと思います。

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