ホムンクルスの作り方
あれから学校生活では、不自由することは無かった。いや、無かった様に思えるだけかもしれない。訳もわからず追い回されるよりひどいことなどありはしなかっただけで、普通だったら面倒なことだらけだったのかもしれない。
そのまま、僕は散瑚の屋敷に帰っていった。一つの出来事があまりにも困難過ぎて学校生活が拍子抜けな気もして僕は部屋でガスが抜けたように休んでいた。
「邪魔するわよー。うわ、何?どうしたの?」
布団にうずくまり、脱力した僕の姿をみて少し驚いた様子の散瑚。
別に何に疲れたわけでもない。ただ単に、もう少し学校に溶け込むのに苦労するかと思っていたら拍子抜けで脱力しているだけ。
「あぁ、散瑚か。人の部屋入る時ぐらいノックしろよな」
脱力したまま話を続ける僕。
「そんな疲れたの?」
「いや、ちょっと拍子抜けしてただけ」
「まぁそうよね、繰也からしてみればあんなのどうってことないわよね」
そういって、僕のうずくまってる布団まで来て布団に座りだした。
「んで?一体なんか用でもあるの?」
大体の予想が付いていたが僕は質問をする。
「昨日話したことなんだけど、何かいい対策はないかしら?」
図々しい態度だった散瑚がいきなりしおらしくなり、僕に何かに対しての対策を求めてきた。
話を遡ること前日の夜。
僕は学校に行くことが決定して、クルスにサポートをお願いしたときの事。
「僕は、あなたと一緒にいる姿を誰にも見られてはいけないのです」
サポートを断るクルス。その表情はどこか元気がなかった。いや、むしろ元気に話すクルスの姿など見たことは無かったが、それとは別に表情が暗かったように見えた。
「は?なんでだよ?」
「ふむ、そうね。まだ繰也には中学生二年の時の脳みそのまんまだからわからないか」
「どうゆうことだよ」
なんだか貶されたような気がしてむっとする僕。
「簡単に説明するわよ。最初に繰也が起きたときにクルスが説明したかもしれないけど、まずクルスは私がホムンクルスであって人間ではないの。ちなみに、この世界でホムンクルスを生成することが出来る技術など何処にも存在しない。つまりは、愚民どもからすれば喉から手が出るほど欲しい技術なのよ」
「さすが天才少女散瑚ちゃん。人類の叡智なんて何のその。それで、じゃぁこれからクルスはどうするんだよ」
「暫くの間外出はあまり出来ないけど、屋敷にいれば安心だから一先ず屋敷にいてもらうわ」
「母さんがそう言うなら僕はそれに従うまでだから、あまり気にしないでください」
そりゃ大変だな。外出できないなんてかわいそうに。
「あと、『それとは別の問題』として繰也にもどうすればいいか聞きたいことがあるのよ」
『それとは別の問題』。それが今散瑚が対処に困っているところだ。
「何かいい対策って言っても、散瑚が三年間かけて答えを出せないようなものに何か意見を言うつもりはないけど、クルスも生まれた以上一人の人権が与えられるべきだとは思うけどな。そもそも、僕みたいな凡人にそんなこと言われても困るんだが」
『問題』。それは、クルスがどうやって一人格として認められるかである。人の腹から生まれたわけではない彼には戸籍も何も存在しない。ただ、本井繰也のもう一人としてとしか捉えられることしかできないのだ。その問題は僕が目覚める前からずっと提起されていたことなのだが、散瑚には対処のしようがなかったらしい。
ならば、起きて二日目の僕に対してその問題を提示すのは無理難題。
「はぁー、繰也。あんたねぇ」
何かに落胆したように僕を見やる散瑚。そんなに問題を解決させられない僕が凡人に見えたかこの野郎。
「なんだよ?凡人で悪かったな」
すると、散瑚はどこか見覚えのある分厚い冊子を取り出して僕の前に置いた。
『夏休みの課題 ホムンクルスの作り方(理論のみ)』
目の前に出された冊子は
「んあ?これ僕の中学一年のときに作った夏休みの研究レポートじゃん。何で散瑚が持ってんだよ」
ページ数にして三百六十ページ。我が人生ここに語りけりと言っても過言ではないほどの研究をした中学一年の夏休みの課題。
「これ‥‥‥‥使わせてもらったの。これは今現在何兆円かする価値を持っているのよ。それを作った繰也が凡人な分けないでしょ」
「は?」
「だから、これは今現在国を動かすほどの価値があるの。今は私に所有権があると思われてて私がどうにかしない限りこれを読むことすら誰も許されていないわ」
「いやいやいや、待てよ。その理論には一つ大きな問題点が残ってたはずだろ?」
大きな問題点。それをクリアしない限り絶対に不可能であったこと。それは僕自身もどうしようもなくホムンクルスを実用化することが出来なかったものである。それが、残っている以上価値もクソもへっくれもあるはずが無い。
「私が克服したわそれは。培養機の機構内部構築の養分精製部分はてこずらせてもらったわ。これが追加分のレポートよ」
どさっと、布団にめり込んだおおよそ百ページほどのレポートには『培養機内部機構追加分』と書かれていた。
僕はそのレポートを手に取り少し読んで見る。
「うわ‥‥‥‥確かに、これをこうすれば細胞をごにょごにょ‥‥」
数分後
「と言うわけでどうにかしてよ、繰エモン!」
素晴らしい研究成果に読みふけっていると聡明な散瑚が僕に飛びついて助けを求めていた。今までと少しギャップがあってかわいいが、やはりこんな天才的な研究を一人でする奴に助言など出来る気がしない。
「無理。と言いたいけど、僕が生み出した問題の種だからね。一緒に考えるぐらいはするさ」
「ありがとう。まぁ、クルスと話をしてみて解決策もでるかもしれないし話すのもいいかもしれないわよ」
確かに僕はまだクルスことを知らなさ過ぎるかもしれない。後ででもあいつと話してみるのがいいかも。
そして、散瑚はそのまま重たそうにレポートを持って僕の部屋から出ていった。
後で気づいたが、まだ普通の生活に戻れているわけでもないと言うのに、問題をガツガツと持ち込んでくれて散瑚も中々の鬼だなと。
中学生にしてホムンクルス精製の理論作るってどんななんでしょうね
まぁそこらへんは、中学生の若い脳だからこそ作り上げることの出来た、ものなんだと勝手に自分の中で解決!
・・・・・・
と言うわけにも行きそうに無いので以後繰也の過去設定が出現します
・・・おそらくね、おそらく