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彩時 〜嚆矢の命編〜  作者: ビードロくん。


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#F15B40 後編

性蝕菌の出処を探るべく華蓮と別れた後、遥冴はメジャーでは無いマイナーな観光地を回った。


「いやぁ、この中華まんはなかなか美味いな」


遥冴は華蓮とは違い、非常にゆっくりなペースで出店を回っていた。


「……まぁ、こんな所で性蝕菌が発見され訳ないんだけどねぇ。よく考えると、メインの大きな観光地に構える方がいいもんね」


呑気にしていると、少しづつ人の気配が少なくなっていった。

方向で言えば、大きな観光地に向かっている最中である。隠れ観光地とは言えここまで人が少なくなるものでは無いだろう。


「………観光者だけじゃなく、とうとう店員さん達も居なくなったか」


観光客、旅行客が居なくなる事は少なからずあるかもしてないが、出店や店内、周りの住居から一切の人気がしなくなった。


遥冴は念には念をという事で、性蝕菌の反応があるか調べようとした時、遥冴は赤黒いコートを羽織った人物達に囲まれた。


「赤黒いコート…………んー、めんどくさい方はこっちだったか」


遥冴は、辺りを見渡し自身を囲う人物達の人数を正確に確認する。


「十五人か、いけるな……それで何かようか?」


赤黒いコートの人物達は問に答える様子は無い。


「あくまでも、足止めか…俺が動かなかったら問題なし?」


一切の動く素振りを見せないコートの人物達。

遥冴は首に装着している無線を使い連絡をとる。


〈大野。聞こえるか?〉


〈えぇ、どうかしましたか?〉


〈俺の位置情報から、周囲の生体反応を確認してくれないか?〉


〈わかりました。〉


遥冴は仲間に頼み事をした。

周囲の建物から本当に人気がなかった場合、何も気にせずに戦闘する事が出来るが、そうじゃない場合下手に動く事ができない状況だ。


〈確認できました、遥冴君を中心に半径30キロ圏内の生体反応は遥冴君含め十五です〉


〈俺、含めて十五人? ……その反応は俺を囲うように反応してるか?〉


〈はい、そうですね〉


〈………円になってるなら、その中で空きがあったりしないか?〉


〈えっと、はい。確認できました、遥冴のちょうど正面に空きが確認でしました〉


〈わかった、ありがとな〉


〈いえいえ、ではお気をつけて〉


遥冴は無線を終えると、自分の正面に立っている人物と目を合わす。


「おかしいね、今調べてもらったが……あんたは何者だい?」


「我々は、あのお方のために存在する」


「そう…それであのお方ってのは?」


「今ここで死んでいく者に関係はない」


「十五対一……たった十五人で勝てると踏んでるのか?」


遥冴の発言を皮切りに一斉に攻撃を仕掛けた。


「チッ……だるいな」


遥冴はコートの集団の攻撃を避けている時、一人だけ動いてない人物がいるのを発見する。


「なるほどね」


なにかに気づいた様子の遥冴は、動いてない人物に近づこうとするが他の人物がその道を阻む。


遥冴は反撃をせずにただ避けることに徹した、何故そのような行動を取っているのか、遥冴には何か考えがあるようだった。


「……もういい、止めだ」


戦闘に参加しなかった人物が、一言発するとピタッと動きを止めた。


「何をしてるんだ? 攻撃しないと俺を殺す事は出来ないぞ?」


「それは、こちらのセリフだ」


「……防戦一方の俺に情けを掛けてるのか?」


遥冴は体勢を整えながら話す。

周囲から伝わってくる殺意とは裏腹に遥冴の正面に立つ人物からは不気味な暖かみを感じる。


「そう捉えても構わない」


「気持ち悪いなぁ……それで、何がしたいんだ?」


今のこの状況の異質さを感じながら尋ねる。

遥冴は周囲を囲む十四人を一切警戒せずに、目の前に経つ男ただ一人に集中する。


「簡単な話しだ、私達と共に来ませんか?」


「どういう事だ」


「あなたは先程の私達の攻撃を意図して防御し続けた。まるで、私達の狙いが分かっているかのように」


意味深な発言をする男。

周りにいるコートの人物達はざわざわし始めた。


「さぁね、俺はおまらの仲間じゃないからな、何も分からんよ」


「意地でも、知らないふりをするのか?」


「意地じゃないさ本当に分からないんだよ、ただ……あんたらが戦いたくてうずうずしてたのが伝わったからな、あんたらが喜ぶ事をしたくなかっただけさ」


遥冴は相手の攻撃が始まる前に、コートが揺れているのを確認していた。

風は無く、髪ひとつ揺れることは無い空間でコートだけが揺れていた。


いくら、体が少し揺れて居るとはいえそこまでコートがなびくことは無いだろう。


「……あなた達、そこまで殺気立っていたのですか。はぁ…少々残念です」


周りを見渡したあとに男は、一人声を零した。


「まぁ、良いでしょう。あなたが私たちの狙いに気づいていたとしても、そう出なかったとしても、私達はあなたを歓迎しますよ?」


「意味がわからんな、たった今命を狙って来た連中に勧誘されて、はい入ります。なんて言うはずないだろ」


男は顎に手を当てて一瞬考えるがすぐに話し出す。


「そうですかね? このままじゃ負けてしまうとなれば、話は違うのでは?」


「……俺があのまま負けると思っていたのか?」


「うーん、思いませんね。ですが、興味は無いですか? 私達の仲間になることへの」


「そりゃ、興味はあるだろ。少なくとも俺達に噛み付いてくる組織だ、そりゃ気になる」


「そうですよね、でしたら私達の仲間へ」


男は仲間に勧誘するという行動の一点張り、遥冴が何を話したとしても、次第に遥冴が説得する立場に回って何とか場を収めようとする。


「あー……一体何がしたいんだよ。俺は言ってるよね、俺は君達の敵なのだから仲間にはならないって言ってるの」


「ですが、私達の事は気になるのですよね? でしたら仲間になるのが一番だと思うのですが」


「うん、気になる。凄い気になるけど、それは俺達を狙ってくる人達だから、どうしてなのかなって気になるの」


「はい、何回も聞きました。ですから仲間になりませんか?」


「…………仮に仲間になってその後に内部からぐしゃぐしゃに掻き乱す可能性もあるんだぞ?」


遥冴は、あえて言わなかった事をとうとう口にした。


敵を勧誘するという事は、情報を抜かれたり、内部から混乱を招く可能性があるのは考えればわかる事……だからあえて言う必要な無いと遥冴は思っていたのだか、一向に聞き入れる気配がないので仕方なく説明するように伝えた。


「……わかったか? 内部から掻き乱されたくないなら大人___」


「構いませんよ」


「だろ? だったら___はっ??」


遥冴とその周りにいる男の仲間であろう人達も思わず声を出してしまった。

今まで黙っていた、静かにしていた人達が声を出してしまう程だかよっぽど予想外のことだったのだろうか。


「ん? いやいや、何言ってるのかわかってるの?」


「はい、分かってますよ? むしろそれが狙いですから」


男は微笑みながら云う。

その発言にさすがの仲間達も、困惑の言葉をあげる。次第にそこ声も大きくなり始めると、男は威圧するように全員を睨み倒した。


その鋭い視線に圧倒されるコートの集団。


「それが狙いってのはどういう事だ」


「そのままですよ、実は最近私達の指示役が変わったんですよ___」


男は話し出した。


「今までは、ボスが直接私達に指示を出していました。が、最近……二週間前くらいですかね、仲介役のような立場の人が現れて、ボスからの指示をその人が伝えてくるようになったのですが…………私達はあくまでもボスに仕えてるのですよ」


話しながら、遥冴の周りを歩き出す。


「それなのに、何処の馬の骨かも分からない仲介役の命を聞くのは…侮辱されてるのと同じですよ。たとえ、その指示がボスからの命であっとしても聞き入れたくはないのです。何故ならボスの口から"直接"指示を出されたいんですよ……この気持ち分かりますか?」


遥冴の周りを一周して元の位置に戻るのと同時に、質問を投げかける男。


「……どうだろうな。俺はいつも指示を出す側だ、出される側の気持ちは知らん……が、あいにくうちの連中もあんたと同じ思考だからな、理解はできる」


遥冴は自分の部下達の事を思い浮かべる。

部活達に指示を出すのは必ず遥冴で無ければならない、何故なら遥冴が組織のトップ……頭だからだ。

そして、その遥冴に拾われた人達の集まりでもある。それ故に、遥冴以外の指示を受け入れはするが見るからに機嫌が悪くなり動きもいつもより悪くなる事がある。


「そうなのですが、理解していただきありがとうございます。それで、仲間になりますか?」


「……あんたの言うその、仲介役を殺す事を条件に内部の情報を盗んでも良い……という事か?」


遥冴は最終確認をとる。


「えぇ、その通りでございます」


「なるほどな、一旦考えさせてくれないか? 流石に俺にも立場があるからな」


「分かりました。でしたら一週間後、再びこの地で再開しましょうか」


「わかった」


「それでは、また一週間後。皆さん! 行きますよ」


指示が出されるとコートの集団は、一斉に歩き出して姿を消した。

遥冴は、何が起こったのか理解し難い状況に多少混乱の色を見せていた。


「……一体なんだってんだよ。頭おかしくなりそうだな…とりあえず、菌探すか」


本来の目的を忘れかけてた遥冴は、忘れない内に

性蝕菌を探そうとしたが目線の先にうっすらと何かが見えた気がした。


「……?」


『彩時……青』


遥冴は瞳の色を青色に変化させると、自身の視力を極限まであげた。

すると、目線の先に路地裏が映る。

路地裏では、二人の女性が激しく戦闘を繰り広げていた。


「あれ…って華蓮と…誰だ?」


遥冴は無線を使い連絡を入れた。


〈デュナ、今から血液の情報を送るから誰か調べてくれないか?〉


〈かしこまりました〉


一言連絡を入れた遥冴は、腰に付けていた五センチ程度の大きさの筒状の装置を取り出す。

スイッチを押し空中にほおり投げる。


その瞬間、筒状の装置の両端から刃が飛び出し二メートルサイズの槍に変形する。


遥冴は変形した槍を刃が下向きになるように掴み構え、投げる。


槍は音を立てて飛んでいく。

華蓮らしき女性とは違うもう一方の女性目掛けて飛んでいく。

ギリギリで避けられるように調整したが、遥冴が思っていたよりスレスレの回避になっていた。


槍は掠る程度で済んだが遥冴はそれが狙いだった。


「……後は、華蓮の方でなんとかなるでしょう」


遥冴は華蓮に槍を託して、無線を入れる。


〈どうだ、何か分かったか?〉


〈ただいま解析中ですが、どうやら少し可哀想な人のようです___〉


槍に付着した多少の血をデュナが解析し、あの女性について調べる。


「……訳あり少女か…少女って言うのか? まぁいい、華蓮がどう判断するかだな。合流しよう」


遥冴はデュナから分かった事を報告されたが、その内容を聞き判断は華蓮に任せることにした。


華蓮のいる元まで走り出した。

青の影響で遥冴は、人に視認されること無く移動することが出来る。

目にも止まらぬ速さで走り、到着すると華蓮が脅し勧誘をしている最中だった。


「さて、一旦今日は帰ろう。この人も怪我を治療したいだろうしね」


「わかった、今車を手配したからすぐに到着すると思うよ」


「りょーかい」


遥冴と華蓮は車が到着するまで適当に会話をしながら、本命の話をする。


「……まぁ、見つからないよね」


「あぁ、流石に規模が規模だからね。一切追いつかないよ」


「じゃあ、また後であいつらに任せるか」


「遥冴って意外と人使い荒いよね」


「そうでもしねぇと、あいつらから文句出てくんだもん」


ふたりで話をしていると、車ガ到着する。


「あっ、着いた見たいだよ」


「わかった、あんたも行くんだよ。磁馬 ちいろ」


無い左目を見開いて驚く女性は抱えられながら車に運ばれた。

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