表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安京エイリアンズ  作者: 岬口大鴉
【九日目】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/94

山門の前で

 喜多方から洞窟に戻った僕は、今日集めた素材を広げた。

 薬草、山菜、乾かした茸、それから――天蚕。量は少ないけど、鷺沢さんが「これは本物」と目を輝かせたやつだ。


「持ってくるようになったな、少しは」


 その言葉を思い出して、苦笑する。

 全部まとめて、洞窟に置いた葛籠の中に仕舞い込む。戻ってきたら、分別はやればいい。

 荷物を整理して旅の支度を整えると、瀬戸と合流するために、庵へ向かった。ただ庵を覗いてみると、彼女は不在だった。


「麓の神社か、……慧日寺、かな?」


 思い当たる場所はそのくらい。というか、他に行き先が思い当たらない。

 まず、麓の神社へ向かった。境内にいた宮司に尋ねると、「さっき、慧日寺へ行かれましたよ」と、あっさり教えてくれた。


……やっぱり。


 ただ、慧日寺は、正直、気まずい。

 山での一件。修験者を倒して、封印を壊して、大暴れした記憶は、まだ生々しい。だから、慧日寺に着いても門をくぐるのはやめた。山門の前で待つことにする。

 風が抜ける。春とはいえ、山の気はまだ冷たい。


「……待ち合わせって柄じゃないな」


 そう思ったとき、足音がした。

 振り返ると、三人連れがこちらへ歩いてくる。平安時代にそぐわぬ着流しの侍に、空色の狩衣の男、――いや女性っぽい。そこに、荷物をたくさん抱えた臙脂色の水干姿の男が続いていた。


「……あ」


 先に声を上げたのは、着流しの侍、榊原だった。


「満足、だよな?」


「うん。久しぶり……でもないか」


 相原は、すぐに状況を把握した顔で軽く会釈し、室田は、僕と寺を見比べてから、のんびりと手を振った。


「へえ、知り合いだったの」


 相原が、少し驚いたように言う。


「まあ、序盤とか軍団で一緒だったし、話したことくらいはあるよ」


「うん、軍団の仕事サボりまくってた印象があるね」


 言われてみれば、確かにそうだ。

 しかし、僕の方にはほとんどその記憶がない。面影だけがかろうじてくらいか。初めてログインしたとき、少しだけ彼らがいたような、そんな記憶の欠片があるような、ないような感じ。

 とにかく、ここ数日の出来事が濃すぎて、彼らの存在は、記憶とともに圧縮されていた。それが解凍された感じだ。


「船の手配を頼みに来たんだ」


 榊原が言う。


「慧日寺経由だと、阿賀野川を下れるって聞いてさ」


 相原が、淡々と補足する。


「飽海嶽周辺の調査。陸奥国鎮守府名義」


 室田は、よく分かっていない顔で頷いている。


「……ああ、なるほど」


 そういうことか。


「中に入るよね」


 僕が聞くと、相原がすぐに答えた。


「そりゃね」


「じゃあ、中に瀬戸さんがいると思うから伝えてもらえる? ここで満足が待ってるって」


「了解」


 相原は、迷いなく中へ入っていった。


 しばらくして、門の内側が少し騒がしくなった。

 そして瀬戸が、出てきた。

 その後ろに、榊原、相原、室田。四人、揃って。


「……なんで一緒?」


 思わず、口に出た。

 瀬戸は、少し困ったように笑ってから言う。


「船の行き先が、同じで」


「調査指令、受けたんだよ」


 榊原が、軽い調子で続ける。


「どうせ一緒なんだし、な?」


 相原は何も言わず、状況を記録する目をしている。室田は、相変わらず成り行き任せの顔だ。

 僕は、四人を見て、空を仰いだ。


――どうなるやら。


 でも、不思議と、悪い予感はしなかった。


「……じゃあ、行きますか」


 日本海へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ