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平安京エイリアンズ  作者: 岬口大鴉
【幕間】

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60/95

三好千沙の計算と距離

やや大人向けの表現があります。苦手な方は閲覧をお控えください。

 正直に言えば、三好千沙は、このゲームにあまり興味がなかった。

 面白いかどうかで言えば、面白い。リアルすぎるし、作り込みも異常だ。でも――ハマるほどじゃない。それに、VRの後遺症が気持ち悪い。それが、彼女の結論だった。


……また、ややこしくなってきたわね。


 慧日寺の一角。仮にあてがわれた部屋で、三好は装束の袖を整えながら考える。

 近衛恒一は、向こうで僧たちと話している。いつものことだ。彼は、こういう場に強い。立場と肩書きを、自然に使う。現実世界でも、そうだった。


 恒一とは恋人ではない。将来を語ったこともない。ただの――都合がいい関係。お互いに。

 恒一が欲しいのは、従う女。口を挟まないパートナー。隣に置いても格が落ちない存在。そんなことは私もわかってる。私も、自分なりに自分を磨く、その労力を惜しんでいるつもりはないし、それで見合ってると判断されているうちは、彼の隣は居心地がいい。


 私が欲しいのは、安全と情報、それに彼と一緒にいることで体験できる世界、まあ娯楽がほとんだけど、それが次に進むための足場になる。彼に人としての扱いは求めるが、愛情を求めたことなどない。フリなら数えきれないほどしたけど。

 このバイトだって、正直、恒一に言われなければ参加していない。


……男子たちみたいに、ここに居場所を見つけたわけでもないし。


 直人は制度が好きだし、修司は体を動かすのが楽しい。里穂は、VRゲームの世界を自由に遊んでいる。

 でも、自分は違う。私は、ここを使う場所として捉えている。


 そういった意味で私と似てるのは、満足くんと恒一。満足くんは、あの変で、面白い先輩の影を追って、このゲームをしている。個人的にはそういうのは好きだし、応援してあげたくもなるけど、流れで対立関係になっちゃってる。それもあまり楽しめない理由かも。


 そして、恒一は瀬戸さんと仲良くなりたくて、このバイトに参加している。そういった意味では、対立する彼らは気になる誰かを追ってプレイする似た者同士。まあ、私はもう少し亘一の隣にいたいので、恒一には振られてもらい、その慰める役回りになることを期待している。


 ただ、瀬戸さんはよくわからない。彼女はなんでこのバイトに参加し、あんなに真剣なんだろうか。こればっかりは、一度、本人に聞いてみたいところである。というか、あんなに美人なのだから、もっと効率よく生きれば、人生楽しいと思うんだけど。やっぱり、彼女のことは、よくわからない。


 私と恒一の関係は、ゲーム内でも、現実と大きくは変わらない。恒一が「試してみたい」と言えば、私は断らなかった。ゲーム内での夜の関係も、恒一が試してみてみたいというからした。

 倫理? そんなものは、どうでもいい。やる意味があるか、対価があるか。それだけに意味がある。


――結果は。


……正直、驚いた。感触。反応。距離。現実より、いい意味で鋭敏で、かつ分かりやすく整理されていた。余計な不安も、後腐れもないのが何よりいい。……皮肉なことに。


 だからといって、何かが変わったわけじゃない。

 私は、彼に関して、執着はしているけど、それもほどほどである。なんといったらいいか、直人風に言えば自分をわきまえている。情がないわけじゃないが、それにすべてを捧げるような価値を置いていない。


 そして今回、恒一の計算が狂っている。上手くいってるようで、いってない感じがわかる。で、イライラしている、悶々として悩んでる。それは、まあこの距離感で付き合ってれば、修司以外はみんなわかってる。修司もたぶんわかってるはず……。


 巫女を連れてきた。つまり、瀬戸さんを攫ってきた。つまり、気になる女を自分ちに囲った。あれは、やりすぎだと思う。

 恒一は「正しい判断」だと思っている。でも、正しさと感情は、一致しない。


……山、も怒ってる。


 私は、薬師女官としてのスキルで、プレイヤーやNPCの状態を見る。数値は、安定している。けれど――いろいろな人たちの気持ちが、不安定だ。


 こういうとき、事故は起きるのだと思う。

 そして、事故の責任は、立場の弱いところに落ちる。

 このまま、恒一に付いていって、その役割を私が背負う可能性もありそう。だから、私もリスクある立場。ここのグループは居心地がいいけど、そろそろ私も別の道を探すときかも。そんな風にも考えるけど、答えは、まだ出ない。もしかしたら、この状況で「忠実な駒」でいるのは、一番、危ないかもしれない。


 私は、自分の薬袋を確かめる。


――満足くんの中にいる、「禍津日」の穢れを、一時的に抑える薬。

 

 彼は面倒なことを、引き受けている。でも、不思議と――筋は通っている。私とは全く違う生き方だけど、よくわからないけど、少しうらやましい。そんな感じ。

 私は、たぶんまだ選ばない。選択肢すら、まだ出そろってない気がするから。

 ただ、いつでも自分のしたいように身を振れる位置に、自分を置くだけ。


 これまで私は、そうやって生きてきたし、この先も今のところ変えるつもりはない。

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