表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平安京エイリアンズ  作者: 岬口大鴉
【八日目】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/95

小さな余韻

 再ログインの瞬間、僕は気づかなかった。

 だが――戻る前より、戻った後のほうが 現実が遠く感じられた。その違和感は、まだ名前を持たない。


 山は、静まりすぎていた。意識が戻った瞬間、満足は、違和感を覚えた。音が、ない。鳥の声も、風に揺れる葉の擦れる音も、聞こえない。


――静かすぎる。


 前回までの山は、もっとざわついていた。人の気配。怒り。警戒。それらが、一度、全部引いたあとの静けさだ。


……終わったのか。


 そう思って、すぐに否定する。終わった、というより――片づいたのだ。人の側の都合で。

 僕は、岩陰から身を起こし、ゆっくりと歩き出す。地面は、なんか温かい。火山の熱というより、押さえ込まれたままの熱。噴き出さなかった分、内側に溜まっている。


……怒ってるな。


 だが、暴れてはいない。怒りを、選別している。

 沢に出る。水は流れている。だが、その音が遠い。


 結界の感触を探る。

 いつもと違った。結界はあるが、所々ほつれている。こんなことは今までなかった。


「……瀬戸」


 名前を口にして、大事なことに、今さら気づく。

 庵の方角を見る。駆け出す。いつもならば張りつめて感じ取る結界が、そこにほとんど揺れない。破られた、というより――管理がされていない感じ。劣化している。

 その瞬間、山の奥で、低い圧が動いた。言葉ではないが、意味ははっきりしている。僕にそれを知らせるなにか。庵に直接行って、確認するまでもない。

 ただ、リスクを冒してでも、僕はこの目で確かめたかった。――彼女が、奪われたことを。


……こうなるのか。


 僕が逃げている間に、決着はついていた。

 誰もいない、見張りすらいない庵へ、僕は向かっていく。別に争ったような痕跡はない。ただ、たくさんの足跡が残されていた。強引だが、確実なやり口だ。誰の仕業かは、考えなくてもわかった。


 約束を、彼女を、守れなかった。後悔ばかりしてしまいそうになるが、今日の僕はすでに決めた。そうやって、自分の殻にこもって逃げることはしない。


――だが、挽回できないわけじゃない。


 システム表示が、視界の端に浮かぶ。


・環境安定度:低

・主要調停要素:欠落


 調停要素……巫女、か……。


 つまり、今の山は――誰の言葉も聞かない状態ということだろう。


 僕は、拳を握る。逃げないと決めた。正面から行く。隠れない。逃げない。

 山を落ち着かせるには、人の都合を一度、真正面から叩くしかない。

 

 僕は、西の方角を見た。

 遠い道のりだろう。だが、行く。

 山は、それを止めていない。むしろ――行け、と言っている気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ