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平安京エイリアンズ  作者: 岬口大鴉
【二日目】

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城の外

 多賀城の外れ。城と市の境界を越えた途端、空気が変わった。

 城内から聞こえてきていた祈りの声が、消える。代わりに、風と、獣の気配。

 ここでは、神も仏も、距離を取る。


 狩りは、ゲームとしては、効率がいい。

 一度倒した獲物は、次からはオート処理。

 時間は圧縮され、結果だけが返ってくる。

 肉。皮。評価点。

 そして――穢れ。

 この数値がネガティブなものだとはわかるが、毎回、確実に溜まっていく。しかしながら、どんなデバフ、デメリットがあるのか、システムは教えてくれない。

 ただ、分かりやすい反応はすぐにあった。

 狩りを終えて城下に戻ると、NPCの視線が変わる。

 初日にはおぼろげだった視線がより、はっきりとしていた。


「……狩人か」

 

 それは、評価ではない。分類だ。

 仏教的にも、神道的にも、嫌われる役割。

 この時代、ある程度、神仏習合が進んだ世界では、居場所がない。


「土人かよ」


 聞こえるように、言われた。

 反論はしなかった。

 この世界では、それが正しいのだろう。

 城下に与えられた狭い自室に戻るころには、空の色が少し変わっていた。


 現実なら、まだ昼過ぎくらいの時間なのだろう。だがこの世界では、一日が、ちゃんと一日として進む。

 井戸で汲んできた水で体を拭うと、ちゃんとすっきりした感覚がする。本日溜めた「穢れ」の数値も、目に見えて減った。しかし、完全にではない。

 HPも減っている。これは、宿で休むことで回復するそうだ。なので、僕は部屋で横になる。すると瞼が自然と重くなった。


 そして、次の瞬間には瞼をこすっていた。鳥のさえずりが、どこからか聞こえる。また、時間が圧縮されたようだ。

 眠った感じは確かにある。疲れも取れている。この時間感覚には、少し慣れが必要そうだ。

 身支度を整え、自室を出ると、まずは市場に向かった。

市は、朝だからか昨日よりも賑わっていた。

 

 通貨は、基本は米だ。


 その質と量でその価値が決まるようだが、なんとなく触れば分かる。当時の人たちの標準スキルとして、このゲームでは設定されているのだろう。なので、NPCとの売買に困ることはない。

 他に通貨の代わりになるのは、多賀城の官人が配っている札である。これは、僕たちプレイヤーに配られる。来訪者向けの補給物資でもあり、通貨のようなものでもある。


「城内引換札」


 薄い木札で、焼き印のような紋。

 任務の達成度に応じて渡され、城の中でだけ使える。

 保存食や簡易な護符、道具の修繕などに使えるということだ。

 貨幣ではないが、信用の証だ。

 猟師である僕にも、最低限の分は渡された。警備をさぼった分、評価は低い。それでも、「完全な不審者」ではないらしい。


 他のプレイヤーたちも、それぞれの役割を生きていた。

 兵役に就いた者。僧として寺に入った者。市で商いを始めた者。

 誰もが、レベル上げという言葉を使わない。

 代わりに、


「慣れてきた」

「板についてきた」


 そんな言い方をしている。

 この世界では、それが正しいのかもしれない。

 猟師スキルは、地味だが確実に伸びる。罠の設置が早くなる。痕跡の見落としが減る。

数値は最小限しか表示されない。だが、身体の動きが変わる。それが分かる。


――さて、試してみるか。


 どうなるかはわからないけど、早速、僕は市庁内にあるだろう記録保管所、文書庫に潜入することを決めた。

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