霧が晴れた
霧雨、約束通り仮病を使って休んだ。家族に怒られるかも、という怖さはあるけど、確かめなきゃいけないことがあると強く思い込んで、それを押し殺した。出かけるのに必要な物を揃えてから出かけた。待ち合わせは友晴君の家近くの公園にした。まだ朝早いから人はそんなに歩いていない。また別の恐怖を感じながら待ち合わせ場所に行くと、二人はもう先に着いていた。
「遅いぞ堀。的井と一緒に今日の夕飯について話し終わったところだぞ」
「そんなに早く着いていたの? 早くない?」
「何か楽しみでさ、早く来ちゃった」
えへへ、と林が笑って、的井は恥ずかしそうに笑った。
「とりあえず待たせてごめん。それじゃ行こっか」
公園から少し歩き、友晴君の家前で張っていた。今度は通報されるんじゃないかと不安になりながら、僕たちは霧雨の中待った。体感時間三十分弱。友晴君が出てきた。家から出て五メートル程歩いたところから僕たちは尾行し始めた。方向は学校とは反対方向。何かしに行くんだろう。病院か。病院じゃないだろう。じゃあイオンか。イオンは遠いだろう。と好き好き言いながら尾行して行った。これはきっと犯罪じゃない。
色々話して、何故アメリカはアメ車を売りつけようとするんだろう、という話題の途中で友晴君は近所の山に入った。霧雨の日の山登りなんて危ないに決まっている。でも、わざわざ行くには理由がある。きちんと距離を開けながら僕たちも山に入った。
歩いて五分、十分――二十分。それくらい登って友晴君は止まった。一本の木の前で。木を十秒くらい見つめてから、友晴君は手を合わせ始めた。
「何かやばい宗教とかじゃないよね?」
的井が少し怯えたのかそう聞いてきた。林が意地悪そうな顔をした。
「奥からローブ着た人たちが出てくるかも、な!」
「うわあ!」
林が的井の背中をドン、と叩いたせいで的井が大声を出してしまった。その声で友晴君もこちらに気づいてしまった。これがサスペンスやホラーだったらこの後、僕らは消される。流石にそれはないだろうけど、怒られるかもしれない。なんて怒るかなと怯えながら、潔く僕たちは友晴君の前に出てきた。
「堀君、と林君と的井君だよね? 何で此処に居るの?」
「友晴君が、何で霧雨の日だけ休むのか気になって……尾行、してました」
変に敬語になりながらも説明をした。友晴君は別に怒っているような顔はしていない。不思議そうな顔をしていた。
「そうなんだ。理由、話すよ。……オレの姉ちゃんね、此処で首吊って死んだんだ」
沈黙がより重くなった。
「いじめとかそうゆうのが原因でね。誰にも、死ぬところ見せたくなかったんだろうね。それに、姉ちゃんは霧雨が嫌いなんだけど、皮肉なことに見つかった日が霧雨でね」
「それが忘れられなくて、霧雨のたびに休んで此処に?」
「うん。辛かったろうなって」
友晴君の話を聞いた僕たちは、一緒に木に向かって手を合わせた。お姉さんがゆっくりと休めるように。
友晴君の謎が解けた。けど悲しい謎だった。場所的にあまり長居は良くないと思って、四人で山を下りることにした。頻繁に来る友晴君を先頭に、林、的井、僕の順番で歩き出した。友晴君は多分、お姉さんが心配だからよく来ていたんだろうなと僕なりに思った。そう思っていると、後ろからかすかに縄がきしむ音がした。けど、僕は気のせいと思うことにして皆に着いて行った。
授業で書いたものを持ってきました。最近中々此処に出せるものが書けてなかったので、載せました。また同じように載せると思うので楽しみにしててください。