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霧雨の謎  作者: 江川乱龍
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ふとしたきっかけ

 僕のクラスには、健康優良児が居る。

 その健康優良児は、佐竹友晴(さたけともはる)君。毎日学校に来ていて、給食は残さず食べるしおかわりもするくらいで、風邪とは無縁な子だ。でも、そんな友晴君はある特定の日だけ休む。それは霧雨の日。ただの雨じゃなくて、霧雨。水アレルギーとか偏頭痛とかだと最初は思ったけど、ザーザー降っている日、大雨の時は学校に来る。本当に霧雨の時だけ休む。その理由はよくわからない。前々から漠然と何でだろうと思ってただけだから、本人にも聞いたことはないし友達に話したこともない。

 今日は霧雨。友晴君は休み。ちょうど今思い出したし、給食時に皆と話してみようか。

 給食時、友達の林と的井と一緒に食べ始めた。いつもはすぐに話し始めるけど、二人とも今日はすぐに話題が出なかったのか静かだ。早速話ができる。

「なぁ、今日友晴休みだよな」

「友晴? 嗚呼、佐竹か。確かに休みだな」

 的井が解した鮭を取りながら同意した。

「いつも学校に来る風の子、みたいなやつが休むなんて変だよな」

 林がサラダのきゅうりを避けながら言った。

「だよな。それで何となく気づいたことがあんだよ」

「「気づいたこと?」」

 二人とも食いついた。

「友晴ってさ、いつも霧雨が降ってる日に休むんだよ」

 林が眉を吊り上げた。

「堀……。そんなかぐや姫みたいに満月の日に帰りますーって感じじゃねぇだろ」

「いや、マジだって。今日だって霧雨じゃん。ほら」

 窓の外を指し、霧雨だってことを認識させたが、二人の顔は冗談を聞いているような顔をしていた。

「たまたまだって、頭痛が痛いとかそんなんだろ。なぁ、的井?」

「そうそう。そんな感じだろ。持病の仮病がみたいな?」

「違うって。あいつ、偏頭痛持ちじゃねえし。とにかくさ、あいつの知り合いとかに聞こうぜ」

 少しだるそうだけど、二人を協力させることに成功した。

 給食を食べ終わった後、残りの時間で友晴君と同じ中学だった子を三手に分かれて探して回った。同じ学校だった子は少なく、会えたのは二つ隣のクラスに居る花邑(はなむら)さんという女子だけだった。花邑さんは事情を話すと快く応じてくれた。

「佐竹君ね。あの子、確か中二からそうなったんだよね」

「友晴君、何かその時あった?」

「確か、飼っていた犬亡くしていたな。あれは中一の時だったけどね」

「そうだったんだ。有難う、花邑さん」

 花邑さんと別れた後、二人を呼んで成果を報告した。

「話の感じ的にさ、ペットが死んだからじゃないか?」

 的井がうーん、と唸りながら言った。

「いや、そうじゃないだろ。だって死んだのはその一年前だろ?」

 林が訂正を入れた。

「確かに。じゃあ、関係ないか」

 的井が納得した。ペットの死でショックを受けたことが理由なら、中一からじゃないとおかしい。でも、花邑さんは知っていることはそれだけみたいだし、変に隠したり嘘言ったりする理由もない。すぐに解けると思った謎は意外と単純じゃなかった。僕らはこの謎を解き明かしたくなった。

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