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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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練馬区のレジェンド?

 沖田ちゃんたちのファイルを放り出して、ツバキと話す。

 プロフィールを見たら、誰でも警戒するような4人組だった。


「ふいー、めっちゃヤバそうな奴らだわ」

「……一緒にやるんやったら、借金の理由と額、それと前科がついた理由も聞いときたい」


 そうだよね。まあ普通に考えて話しにくいことだろうとは思うけど。でも向こうが仲間になりたいって言うなら、そこを聞かれることくらい考えているはず。沖田ちゃんは仲間も含めて前科があるよって、自己申告してくれたんだからね。


 なにも言いたくないけど仲間になろうぜ、なんてのはまかり通らんし。

 ただ聞けば普通に、ぶっちゃけてくれそうな気はする。


「うん、パーティー組むなら、命預け合う運命共同体だからね。お金のことも前科のことも、理由は知っておきたいわ」


 もしどうしても話したくないのだとしたら、じゃあ話したくない理由を言ってもらわないとだ。


「大事なんは、パーティー組んだ時に誰が主導権を握るかやと思う。葵姉はんがリーダーやったら、誰と組んでもあまり変わらへん気はするなあ」

「あ、そうか。あっちに主導権握られて、好きにやられちゃたまらんわ。私たちが取り込まれたみたいになっちゃうじゃん」


 というか、私ってリーダーだったのか。


「そのとおりよ。パーティーを組むにしても、事前にいろいろ取り決めないといけないわね」

「先に条件を付けたらいいんじゃない? それに応じるなら仮パーティー組んでみて、あとは実際にダンジョンに入って双方の実力や相性を確認していくしかないと思うけど」


 小難しい話が終わったらしく、マドカと夕歌さんが話に入ってきた。


「条件って、どうすんの? そっちの事情をまずは全部話せよなーって感じ?」

「それとアオイをリーダーにすることが最低条件ね。クランを設立する場合、クランマスターを誰にするか決めておかないといけないから。その時になって揉めないためにも、必要なことよ」


 主導権争いみたいなことは、パーティーの中でやりたくないよね。仮で組んでみて、めんどくさい奴らだったらお断りでいいかな。


「あとは目的が大事よ。結局のところ、パーティー組んだりクランを作るなら、ハンターとしての目的が一致していないと。あなたたちのいまの目標はどうなっているの?」

「私たちの目標! とりあえずは、超すごいサブクラスをゲットすることだよ」


 私はレベル18で、マドカとツバキはレベル17、レベルが20になったらいよいよサブクラスがゲットできる。あとちょっとのレベル上げが大変なんだけどね。


「アオイ、クランの設立にはクランマスターが、レベル20以上であることも必要よ。その意味でも、より深い階層でのレベル上げは早めにやりたいわね」


 そうなんだ。レベル上げめちゃ大変だけど、上げる理由が増えればやる気も増す。悪くないね。


「深い階層に行ったら、魔石の売却価格も高なる。沖田はんらの目的とは、とりあえずは合うなぁ。レベルも向こうとはほぼおんなじちゅうのもええな」

「まーね。でも私としては、一時的に組むのはちょい微妙だわ。どうせならずっとやっていける仲間がいいよ」

「それも含めて、まずは話し合いよ。あっちのほうが年も上だから、いいように丸め込まれないかが心配ね」


 あー、それもあるか。私たちはハンターとしては、似たようなレベルの奴らに負ける気は全然しないけど、クランの運営みたいなことになったら、年上のお姉さんたちのほうに主導権が渡りそうな感じはしてしまう。

 主張の強い人たちだったら、その辺で困ったことになる可能性はあるね。


「大丈夫じゃない? ハンターは基本的に実力主義の人が多いし、葵ちゃんとまどかちゃんのスキルがあなたたちの強みなわけだし。パーティーの中心はどうしたって、あなたたちふたりと、それに慣れ親しんだつばきちゃんの3人になるに決まっているわ」


 言われてみればそれはそうかも。向こうは私たちのスキルの秘密を知らないわけだから、いざダンジョンに一緒に入ったら、度肝を抜いてやれると思う。


「いいこと言うじゃん、夕歌さん。いっちょかましてやればいいってことだよね」

「たしかに、そうかも。アオイがいつもの調子でいれば、変に心配しなくてもいいのかもしれないわね」


 まあ、なるようになるよ。

 一緒にやってみて、もし嫌だったらやめればいい。私は遠慮なんかしないからね。

 何事もお試しだ。そうだよ、細かいことなんか気にすんな!



 具体的には何も決まっていないけど、ひとまずの方針は決まった。

 やってみないと始まらんからね。なるようになる。


 いったん落ち着いて、夕歌さんがまたコーヒーを注いでくれた。


「あ、まだ聞いてなかった。葵ちゃん、蒼龍からの報酬ってどうなったの?」

「おー、そうだった。私がクランハウスがほしいって言ったらさ、とっておきをくれてやるとか、カッコいいこと言ってたんだよ」

「あの蒼龍が『とっておき』なんて言ったの?」

「うん。きっと超すごい豪邸に違いないよ」


 なにしろ伝説のハンターがくれるクランハウスだからね。

 楽しみだわー。わくわくが止まらない。


「アオイ、あの封筒よね?」

「そうそう。これ、見ていいよ。住所と電話番号しか書いてないけど」


 蒼龍からもらった小さな封筒を渡してやった。

 マドカが中の紙を引っ張り出して読んでいるけど、書いてあるのは本当に住所と電話番号だけだ。全然、面白くはない。


「ねえ、蒼龍は練馬区に住んでるってこと? 夕歌さん、知ってます?」

「あの蒼龍なら、日本全国にいくつも拠点を持っているはずよ。東京都心だけでも、数件は物件を持っていると噂は聞いたことがあるけど……練馬に住んでいるというのは、聞いたことないわね」

「住んでるのやなしに、葵姉はんに渡すクランハウス、練馬にあるんとちゃう?」


 は? 待って待って。それは話が違うじゃん。

 練馬は都心じゃないだろ。ほぼ埼玉だろ。

 たしかに、練馬は二十三区のひとつではあるけど、ちょっと違うじゃん。


「ハハッ、まさかね」

「葵ちゃん、蒼龍にはなんてお願いしたの?」

「え? いやー、どうだったかな。都心にあって、すっごいやつくれーって、そんな感じ?」

「どんな感じよ……」


 ポーションの査定の時に、会話の流れで言ったことだからね。具体的には覚えてないわ。でも都心のすごいやつで、とは言ったと思う。


「まあいいわ。今日はもう遅いから、明日の朝にでも電話してみましょ。いつでもいいって言ってたのよね?」

「言ってたよ。事前に連絡すれば、いつ行ってもオッケーだって。さっそく明日行こっか」

「先方に聞いてみて、よければそうしましょうか。あたしたちも行っていいのよね?」

「うん、みんなで行くって言ってあるから大丈夫。夕歌さんも行く?」

「さすがに遠慮するわ。蒼龍の家に気軽には行けないわよ、私はパーティーメンバーじゃないし」


 一応は超有名な伝説のハンターなんだし、そういうもんか。

 あのおっさんは細かいことは気にしそうにないけどね。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 話し合いか~…夕歌さんにお願いして、参謀役みたいな感じで同席してもらうのもアリかもしれないですな。 しかし蒼龍氏、どんなクランハウスを譲ってきたのか…なんか凄そう(小並感 それ…
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