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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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92/215

大注目の蒼龍杯

 人でごった返す花やしきダンジョン管理所をぬるっと通り抜けて、ダンジョンの大階段を下った。

 するとそこも混雑している状況だった。もう邪魔くさい。


 本選考に出場するハンターのほか、なにやらよくわからん連中がたくさんいる。

 カメラを構えているのも大勢いて、勝手に撮られまくっているのが気に食わない。ただ、これについては前もって聞いていたから覚悟はしていた。もう仕方ないね。


 でも話しかけられるのはうっとうしい。無駄にうろうろしながら少し考える。

 これだけ人がいるのだから、誰か知り合いはいないかなと思いきや、私はマドカとツバキ以外に友だちどころか知り合いすらろくにいなかった。特に同業者のはずのハンターに、お友だちが全然おらん。


「仲間にするかは別として、気軽に話せる知り合いくらいは作ったほうがいいよね……」


 こういう時にぼっちだと、ちょっと時間を持て余すわ。

 ハンターじゃなくても、ほかに誰かいないかなと思ってキョロキョロ探していると、すごい最近の知り合いを見つけた。知り合いというか、顔見知り?


 あの年配のいかついおっさんの顔は忘れない。ポーションの査定係だった奴だ。

 今日も前と変わらずのテカテカスーツに黒シャツ、ふちなし細長メガネのいかついおっさん、あの人が偉そうにパイプ椅子にふんぞり返っている。蒼龍杯の関係者だろうから、今日はイベントの手伝いかな。


 手伝いにしては暇そうに座っているね。よし、ここは暇つぶしの相手になってもらおう。そうしよう。

 おっさんの顔がめちゃ怖いからか、混雑しているはずの場所で不自然に開けた空間ができあがっている。

 なんせ5人は山に埋めてそうな面構えだからね。それは近づく奴は少ないよね。でもこういう時には、人避けにもちょうどいいわ。


「おいすー、査定係のおっさん」


 開けた不思議空間に踏み込みながら、明るく陽気に声をかけた。するとなぜか少し離れた所にいる周囲の奴らがピリッとした感じになったけど、いったいなんだろうね? ここら辺は別に立ち入り禁止じゃないよね?

 考えてもわからんし、別にいいや。普通におっさんの所まで行き、時間まで世間話に付き合ってもらうことにした。


「永倉、来たか」

「来たよ。すっげー混んでるね。何人くらい予選通ったか知ってる?」


 言いながら折りたたんでおいてあったパイプ椅子を勝手に開いて設置し、どすんと座ってやった。

 ふいー、やっと落ち着けるわ。


「年齢別に7つの区分で、それぞれ6人から8人通している。全部で50人程度だ」

「50人の割には人多すぎない? そんだけ余計な奴らがいんのかー」

「クランを作るなら、いいアピールの場になるぞ。今回の蒼龍杯には、メンバーやスポンサーを募集する場としての意味を持たせてある」


 なんと、そうだったのか。いろいろ考えられているんだね。


「ところで今日って、1回しか戦わないの? トーナメント表みたいのないしさ」

「そうだ、1度でいい。それだけで大抵のことはわかる」

「ふーん? ところで私の出番っていつ? なんも聞いてないんだけど」

「発表はこれからだが……まあいい。永倉、お前は最後の試合だ」


 マジかよ。最後って、それまで結構な時間を待たなきゃいけないじゃん。


「こういうのって普通、若い者順で試合するんじゃないの?」


 ベテラン勢のほうが有名人が多そうだし、試合のレベルも高いだろうしね。


「状況次第だが、今回は若手のアピールの場としての意味が強い。そう宣伝したからだが、スポンサーや多くのハンターの注目は若手に集まっている。そして今回は若手の注目株、お前が最も期待されているということだ。情けない試合はするなよ」


 なるほど、そういうこと。でもね、試合はひとりでやるもんじゃないからね。


「それは私の対戦相手に言ってほしいわー。それにしても、おっさん詳しいね?」


 偉そうな態度なだけのことはある。

 こんなでかい態度で「いやー、僕じゃわからないっす」みたいなことを言われたら、だいぶ腹立つからね。よかったよかった。


「……永倉、妙だとは思ってはいたが、お前もしかして」

「蒼龍様、お話し中に失礼いたします」

「どうした」

「お役人の皆様がご挨拶したいと、管理所の応接室にお越しです。いかがいたしましょうか」

「挨拶? ならここまで来るか、後にしろと言っておけ。大会が終わった後でなら、少しは時間が取れたな?」

「はい、予定通りなら20分ほどは余裕があります。ではそのようにお伝えします」


 柔和な笑顔の初老の紳士が、私に向かってニコリとしてから去っていった。

 めっちゃ執事って感じじゃん。執事選手権があったら絶対にいい線いけるわ。すっごいわ。

 あ、それとだよ。


「おっさんが『蒼龍』だったの?」


 早く言えよ。どうりで貫禄あるはずだよね。


「俺が言うのもおかしいが、なぜ気づかんのだ。それに名乗っているはずだぞ?」

「え、名前だけ言われたってわかるわけないじゃん。私のようなヤングはさー、おっさんみたいな年代の人らのことにはうといんだよ。気を遣ってよね、もう」


 ちゃんと「俺があの『蒼龍』なんだぜ」くらいアピールしてくれないと気づけるかい。


「……わかった。これからはそうしよう」

「たのむよ、ホントに。あ、ところで私の試合って最後なんだよね? 出番まではどのくらいかかんの?」

「そうだな。来賓のスピーチなどもあるから、早くて2時間後、といったところか」


 長い、長すぎる。それはさすがに長すぎるだろ。知らん奴らのスピーチなんて聞きたくもないし。


「ちょっと外に出ててもいい? そんなにじっと待ってられないわ。小腹も空いてきたし」

「構わんが、出番には遅れるなよ」

「2時間でしょ? さすがに間に合うよ。ほんじゃねー」


 腹が減っては戦はできぬ! ちょっとラーメンか牛丼を食べに行こう。

 また更衣室で着替えるのは面倒だし、このまま外に出るかな。いや、今日は人目が多いしちゃんとするか。

 仕方ない、また着替えて外行くかー。

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― 新着の感想 ―
ちゃんうんすよ葵ちゃんは無知無恥無痴じゃないんすよ 人を肩書きとか色眼鏡で見ない良い子なんです信じてください!!
更新お疲れ様です。 ぶっちゃけ二人の会話中は蒼龍氏以外の周りの人全部、葵ちゃんを「あいつ凄い大物(ないしは度胸満点過ぎる)…!?」と驚愕してたか、サタ○を初めて見た時のベジ○タみたく「バカの日本チャ…
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