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発見済みの未発見隠し部屋

 ちょろっと走って、ぱぱっと到着。

 地図によれば、目の前の壁の向こうが隠し部屋だ。閉じているということは、やはり予感は当たっていると思う。そこにお宝がある!

 勝ったな、と思いきや。


「これ、どうやって開けんの」


 盲点だった。隠されているからこその隠し部屋。簡単に開くはずはなかった。

 でもここで諦められるわけがない。お宝は目と鼻の先にある。どうにかしなければ。

 そこら辺の壁を触りまくってみても、特に異常なし。床にも異常なし。天井や壁の高いところは、手が届かないから無理。


「げー、これ手が届かない場所に仕かけがあったら詰んでるじゃん」


 貧乏女子にお宝を諦める選択肢はない。諦めたらそこで試合が終わるからね!

 棒でも持ってくるかな。あ、受付のおっさんに聞いたら、開け方知ってるかな。


 いやー、でも解除できない仕かけなんてあるものかね。

 不思議空間のダンジョンさんだからこそ、その辺の調整はちゃんとやってるもんでしょ。

 ねえ頼むよ、ホントにさ。


 隠し扉があるだろう場所を広く見渡してみたくなり、反対側の壁まで下がってよーく目を凝らす。


「やっぱ、見た目じゃわからんか」


 壁に寄りかかって肘に体重をかけると、あれ?

 何かを押した感覚があった。するとスーッと目の前の壁がスライドしていったじゃないか。


「うおおおおおお! ほーら、やっぱりお宝!」


 狭い隠し部屋の中には、入るまでもなく何があるか見える。

 そこには仰々しい宝箱ではなく台座があり、その上に武器が置いてあった。


「ほっほーう、わかってるねえ。いいじゃん、いいじゃん」


 手ぶらの武器なしだった私には、とってもありがたい。

 台座の上には少なくともトンカチよりは強そうなハンマーがあった。全体が金属質で、シンプルな柄の部分が黒、ちょっとゴテっとした頭の部分が赤っぽい黒でかっこいい。よくわからん細かい模様が、つよ武器感を主張しているのもいい。


「なんか、すっげーかっこいいね。手にもなじむわー」


 サイズ感はトンカチより少し大きな手斧って感じ。小ぶりだけど、非力な私には使いやすそうではある。


「よっしゃあ、試してみっか」


 次の隠し部屋へ向かいがてら、通りすがりにダンゴムシに叩きつける。おらよっと。


「……おおう」


 強くてびっくりした。まさか一発で倒せるとは思わなかった。

 なんだこれ、思った以上のつよ武器か? これならガンガン行けるね。


「ひゃっほーーーうっ」


 視界に入ったダンゴムシを片っ端からぶっ殺しつつ、次の隠し部屋に到着した。

 ふう、これが無双ってやつか。脳汁がやばいね。

 ポケットには極小魔石がたくさん溜まりつつある。ほくほくだ。

 まだまだ行くけど、今日はちょっといい稼ぎになりそうな予感。いいね!


「隠し扉、隠し扉っと」


 また扉付近の壁と床を探る。見逃しがないように。

 やっぱり、素直な場所にはないらしい。でもでも~?


「ほらあった!」


 隠し扉とは逆側の壁、しかも少し離れた意地悪な場所にスイッチがあった。それでも要領をつかんでしまえば、大した苦労なく見つけられる。

 まあ第一階層だからね、仕かけの類も簡単になっているのだろう。


「お宝回収っと、ブーツか。これもかっこいいね」


 黒い金属質のロングブーツを手に入れた。武器もそうだけど、ファンタジー感がすごい。

 ぼろのスニーカーを脱ぎ捨て、芋ジャージの裾をまくって履いてみれば、想像よりずっと心地の良いフィット感だ。

 歩いてもガチャガチャ音はしないし、重さもそれほど気にならない。

 これはきっと良い物だ。ハンマーと一緒に、売らずにこれからも自分で使ったほうがいいだろうね。


 まだ隠し部屋は二つもある。あとは何か売れる物がいいな。



 次の隠し部屋に向かいがてら、今度はブーツの性能を試してみる。

 スニーカーではダンゴムシにダメージらしいダメージを与えられなかった。

 金属感バリバリのブーツなら、ちょっとは期待してもいいはず。


「よいせっと!」


 這いずるダンゴムシくんを無造作に踏みつけてやれば、グチャリといった。

 なんとなく予感あったけど、やっぱ強かったわ。

 普通じゃなさそうだし、特殊な能力がありそう。受付で調べてくれるかな。

 でもこれが強い装備でかなり珍しい物だったりしたら、ちょっと心配な気はする。私が初心者なのをいいことに巻きあげられそう。


「とりあえずいいか。次だ、次っ」


 第一階層の端っこも端っこ、ソロダンジョンじゃなくても誰もいそうにない界隈に、それほどの距離を置かずに二つの隠し部屋がある。

 要領をつかんだ私の行動は早い。さくっと扉を開けて、さくっと二つとも回収してしまう。

 はは、慣れたものよ!


 ひとつは指輪だった。武骨なほどにシンプルな銀色の指輪。

 観察しても何もわからないことから、とりあえず左手の中指に装着した。


「うーん、特に何も?」


 何か効果があるのだろうか。謎だ。まさか呪いの装備とかないよね?

 考えてもわからないことはいいや。本命はこっちだ。


 手にしたのは横長の四角っぽい形に、ベルトのついたバッグ。ウエストポーチとして使うものだろう。

 ハンマーとブーツは黒と赤の色合いでかっこいい感じだったけど、ポーチはクリーム色で割とかわいい感じ。

 ダンジョンの隠し部屋で手に入れたものが、まさか普通のバッグという可能性はない。となればだ。


「ふおおおおおおっ、やっぱりマジックバッグ!」


 ポーチに手を入れ、腕まで突っ込んでも底に届かない。

 これは見た目の容量を無視してたくさん物が入れられる代表的な不思議アイテム。

 脱初心者のハンターなら、大半が持っていて珍しいものではないらしい。それでも実際に手に入れてみれば、これほど便利なものはなかなかない。

 ありがたやー。


 今日の収穫はハンマーとブーツ、謎の指輪、それにマジックバッグまでゲットしてしまった。

 でかすぎる!


 いやあ、テンションマックスよ。

 この調子でダンゴムシくんを倒しまくってレベルアップ、第二階層にもチャレンジできそう。


 がはは、やっぱり勝ったわ!

 私の人生、ここから一気に逆転よ!

めちゃくちゃ調子に乗っていますね。

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