表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/210

考えてみると結構厳しい?

 マドカは新武器のバトンを自慢げに私に見せてきた。

 ずっとこうした機会を待っていたのか、とても楽しそう。新しい装備ってウキウキするからね。


「前からアオイの斧がうらやましいと思っていたのよ。だから似たような武器をね。しかも、これ!」


 なんと、もう1本同じ武器を次元ポーチから取り出した。

 驚かせたかったのか、あえてもう1本のほうは仕舞ったままにしていたらしい。


「2本もあんの? もしかして、その両手の指輪が戻ってくる目印みたいな感じ?」

「そうなの! 微量の魔力で戻せるし、戻すタイミングもそれで調節できるのよ」

「え、それってめっちゃ便利じゃん。すげーバトンだね」


 私の斧は勝手に戻ってくるから、器用な使い方はできない。それに私はいまいちノーコン気味だけど、マドカは鳥に一発で命中させるくらいに上手だ。


「扱いが難しいから、もっと練習が必要だけどね。ちなみにエコーロッドって名前の武器よ」

「ほえー、いいもん買ったねえ。ツバキのは?」


 ツバキは小さい弓を手に持ったままで、さっきは使う様子がなかった。あの鳥はマドカだけで十分と思ったのだろうけど気にはなる。

 ただ小さいだけの弓とは思えない。全体的には黒い木で作られているっぽく、中央の手で握る所に金の装飾が少しあるくらいでシンプルな感じ。


「うちのはまたあとで、お披露目するなぁ」

「もったいぶるねえ」

「そないなわけとちゃうけど。うちのは、鬼哭浄化きこくじょうか梓弓あずさゆみって言うて、邪気や呪いを払う効果があんねん」

「ほえー、そんな武器があるんだねえ」


 なるほど、いいね。

 ツバキは呪い系の攻撃特化だったから、それが効かない敵への対処法がほしかった。邪気や呪いを払う武器なら、まさに足りないところを補える。

 実際にどう使うのかは、またあとで見る機会があるよね。



 ガラスの森ダンジョンでの初戦闘を終えたあとでは、特に戦闘も起こらずに第五階層まで進めてしまった。

 昼間はモンスターと遭遇しにくいのかな。案外余裕だ。


「ちょい、休憩してもええ?」


 地図担当の私と戦闘担当のマドカは暇だったけど、結界を張っているツバキは警戒もしてくれているから疲れるよね。

 休憩に賛成して、私とマドカが周辺警戒に気を回す。五階層毎にある転送陣に登録してしまえば、いつでもここまでスキップできる状況になった。キリのいいところではあるけど、帰るには早すぎるし、一度ダンジョンを出ると集中がぶっつり切れる。まだまだがんばって行きたいところだ。


「このペースなら、第十階層までは余裕をもって行けそうね」

「モンスターが全然、出ないもんね。深く潜ってもこの調子だったら、稼ぎになんないわ」

「さすがにそれはないんじゃない?」

「だといいけど」


 ウルトラハードなダンジョンは、基本的にモンスターの数が多いはず。不思議に思うけど、出ないものは仕方がない。

 この第五階層までは鳥型のモンスターばかりらしいから、地上を進む私たちは単純に遭遇しにくいのかも。結界を張っていると全然、周りが見えないしモンスターがどこにいようがわからない。もしかしたら、昼間はモンスターの活動があまりない説は当たっているのかも。


 20分ほど休憩して、先に向けて進むことにした。

 そうして第六階層に入ると、明らかにダンジョンの様子が変わった。まぶしい光が乱舞するガラスの森はそのままに、うるさいくらいの音が聞こえる。間違いなく、モンスターの足音だ。


「左から2、ちゃう3匹」

「情報どおりに猪型ね。予想はしていたけど、ずいぶん大きいわね」


 綺麗なガラスの猪が、ツバキの『たしなみの結界』を通り抜けたせいで、のろのろと迫力なく動いている。

 本来なら、まさしく猪突猛進な体当たりをかましてきたのだろうけど、これでは形無しだ。


「バトン、じゃなくてロッドだっけ。殴って倒せそう?」


 猪型モンスターの分厚く大きいガラスの体は、鳥型とは違って砕くには結構なパワーがいると思う。


「エコーロッドね。やってみるわ!」


 投げたロッドはくるくる回転しながら、猪の体にガツンと見事にヒット。でも傷をつけただけで倒すには全然至らず、大きく砕くこともなかった。

 マドカは手に戻ったロッドを、今度は接近して持ったまま殴りつける。

 殴った部分のガラスは小さく砕けるけど、一気に破壊することは無理なようだ。マドカはパワータイプとは違うし、痛みを感じないゴーレム系とは相性がいいとは言えない。ロッドで殴り殺すのは、あまりに効率が悪そうだね。


「これはダメね」


 素直に諦めたマドカは、腰に装着した魔法の散弾銃に持ち替えた。

 構えてぶっ放すと、2体の猪をまとめてガシャンと豪快に砕き、光の粒子と魔石に変えた。

 残る1体にも連続で撃って倒してしまう。しかも、魔石と共に小さな瓶が落ちていた。


「これ、ポーションよね? 第六階層にしてはモンスターが硬いし、やっぱりアオイの『ウルトラハードモード』は違うわね」


 マドカが拾い上げて、私とツバキに見せてくれた。透き通った薄い緑色の液体は、間違いなくポーションだ。


「幸先いいねー。第六階層からそこそこ取れるなら、もうちょい深く潜ればザクザク落とすかも」

「出遅れ、挽回できそうやな」

「受付の人は第十五階層まで行かないと、確率的にドロップは狙えないと言っていたわ。しかも10体倒して1本くらいと言っていたはずよ。でもアオイの『ウルトラハードモード』ならいけそうね」

「しゃー、この調子でガンガン進むよ!」


 足取りも軽く先を急ぐ。深い階層に進めば進むほど、ドロップ率はきっと上がる。

 順調にいけるといいなー……んんー、でもホントに大丈夫?

 進みながら、ふと思って聞くことにした。


「ところでさ。私たちの出遅れって、具体的にはどれくらいだと思う? ポーション何本くらいリードされてんの?」


 目標があれば、それに向かって突き進むだけ。そのほうが、わかりやすくていい。


「前から1匹」

「おりゃー! マドカ、ちょっと計算してよ。モンスターは私がやるからさ」


 ツバキの声に応えて、ガラスの猪をハンマーで楽々と粉砕。私にとってゴーレム系はお得意様だ。


「そうね……えっと、まずわかりやすく遅れた期間を30日間とした場合、1日あたりに手に入れられるポーションの数をかけたら、それでわかるわね」

「右から2匹」

「ほいよっ」

「確率的に、ひとつのパーティーが1日に入手可能なポーションは、多めに見積もっても5本くらいと思うわ」

「えっと、つまり?」

「1日で5本の30日間、合計で150本ね。実際はここまでにはならないと思うけど」


 多めに考えて、そのくらいのリードを許しているわけね。

 まあなんだ、そのくらいなら普通に逆転できる気がするね。期間はあと1週間くらいあるし、がんばれば大丈夫かな。


「左前から1匹」

「ほいっ、あ、ポーションゲット!」

「最大を考えるなら、あとはクラン総動員でポーションを集めている場合もあるわよ」


 総動員?


「クラン所属メンバーの最大50人、そこから戦闘がこなせる人だけで考えて、そうね……これも多めに7つのパーティーで協力している、なんてこともあるかも。あの蒼龍の報酬と考えれば、そこまでする価値は十分にあると思うし。クランによっては、下部組織のサブクランを動員する可能性まであるわね。そこま考えるとキリがないけど」

「ちょい待ち! えっと、じゃあ……え? つまり何本分、出遅れてんの?」

「そうね。サブクランの協力はないと考えても、30日間、7パーティー、ひとつのパーティーあたり1日5本……合計すると現時点で1,050本ね」


 え、さすがに多くね? ホントに巻き返せる?

 マジかよ。私たちったら、まだ2本なんだけど。

 めっちゃ出遅れまくってるじゃん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
くっそ出遅れてるのに舐め腐ってダンジョンの情報もそこそこに観光までしたパーティーがいるらしいっスよ!
更新お疲れ様です。 千本単位の遅れか~。実力なら決して負けてないですが、人手が必要な要素では他所に確実に先を行かれてしまうのは少数精鋭の欠点ですね…。 それでは今日はこの辺りで失礼致します。
ポーションには星魂紋ついてないん?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ