↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/405

夜のほうが簡単?

「なーんか閑散としてんね、富山ダンジョン」

「意外よね。蒼龍杯の影響があるはずだから、かなりのハンターがいるかと思っていたわ」


 それそれ。あれに何人参加するのか知らんけど、もっと盛り上がっていてもよさそうのに。

 日本一人気があるという神楽坂ダンジョンほどではなくても、そもそもポーションが落ちやすいダンジョンにはハンターがたくさんいるはず。それを表すように受付カウンターも広く大きなものだ。いまは受付係がふたりしかいないみたいだけど。


「聞いてみたら、ええんとちゃう?」

「それはそうね」


 わからんことは素直に聞けばいい。

 受付に向かって歩きつつ、ふたりいる受付係のどっちに聞くか少し迷った。それというのも、どっちも私たちが管理所に入ったことに気づかないはずがないのに、完全に無視されているからだ。愛想がなさすぎるだろ。


 片や暇そうにネイルをいじくっているギャル。

 片や野球のボールを天井付近にまで投げてはキャッチしてを繰り返している若い兄ちゃん。


 なんだ、こいつら。やる気あんのか!


 どういうつもりか知らんけど、ハンターの私たちが遠慮する必要はないね。

 とりあえず、手前側にいるギャルに話しかけることにした。


「おいすー、ギャル。暇そうじゃん」

「……なに?」


 なにってことはないだろうよ。仕事しろい。

 あんまりな対応に、マドカとツバキは閉口している。


「あんた、もしかして東京モン? まさかこれからダンジョンに入ろうっての?」

「そうだよ。シティガール感あふれちゃってた?」

「はあ? よそモンはこれだから。いま何時だと思ってんの? 出直したら?」


 あんだとー? こんな晴れた労働日和の朝に、なんてこと言うんだ。


「うおい! ギャル、ケンカ売ってんのかー?」

「ちょっと待って、アオイ」

「葵姉はん、あの話は予想以上やったんとちゃう?」


 おっと、それだ。ポーションがゲットしやすい、ガラスの森ダンジョンは難易度が高いことで有名らしい。


 基本的な考え方として、レベル=ダンジョンの階層数がちょうどいい探索場所と考えられているけど、ここのダンジョンは推奨レベルがプラス5とされていた。

 しかもダンジョン上層ではポーションのドロップ率がかなり低く、圧倒的多数を誇るレベル10未満のハンターが挑戦するには難しいという事情もあるらしい。


 難易度と推奨レベルが高いことによって、挑戦するハンターの絶対数が減り、だから流通するポーションの数が増えない。そのせいでポーションの取引価格が高くなってしまうというわけだ。


 そして難易度を上げる特徴として有名なのが、このガラスの森ダンジョンには地上の時間と連動して昼夜があること。


 ガラスばかりで構成されたダンジョンは、昼間は上から差し込む光の影響で、光の屈折と反射がすごい勢いで発生するらしい。ガラスのゴーレムは光の影響で見えにくく、幻影を見たり錯覚を起こしやすくもなるらしい。

 実際に体験してみないと、よくわからんけどね。


 とにかく、そうした光のある時間に対して、夜はその難易度が多少落ちるとは聞いた。

 ハンターが使う範囲の光源のみが環境に影響を与えることと、夜間はガラスの透明度が下がって障害物やモンスターの存在を察知しやすくなるのだとか。

 そういったことで、ガラスの森ダンジョンは夜の探索が推奨されていた。


 昼夜で違うことはわかっていた。それにしても、まさかここまで極端だとは思わなかったわ。

 それに私はできれば夜間に働きたくない。朝から働いて、遅くても晩メシ前には仕事を終わる。そんな生活が美容にも健康にいいのだからね。

 特に弁財天の加護を得てからは、ちょっと美容にも気をつけるようになっているし。無理でなければ、私は朝から働くのだよ。


「……ふう、ギャルよ。私たちも昼間は難易度が高いことは知ってるよ。でも入ったらダメってことはないよね?」

「ダメじゃないけど、入らないほうがいい。これは忠告。ここひと月くらい前から、よそモンが何人も大怪我してる。あんたらもそうなるよ? 下手したら命落とすよ? しかもそんな少人数でダンジョンに入ろうなんて、頭大丈夫?」


 これってもしかして、心配してくれてる?

 それにしては、ぶっきらぼうだけど。


「大丈夫。私たちったら、めちゃ強いから。もし無理っぽかったら、すぐ引き返すし。ほい、受付よろ」


 身分証をカウンターに差し出した。3枚の黒いカードが並ぶ。


「永倉葵スカーレットに九条まどか、それと九条つばき? あんたらが話題の3人組か」

「そうそう、いま話題のね。まさか富山の人まで知ってるとはねー、困っちゃうわー。こりゃあ、カッコ悪いとこ見せられないね」

「蒼龍杯のため?」

「知ってんだ? ポーション集めろってやつね。がっぽり集めまくってやるわ」


 ギャルはだるそうな態度を改めて、受付業務を進めてくれた。


「わかってると思うけど、初めてみたいだから説明する。ポーションはガラスのゴーレムを倒せば落とすけど、第十五階層までは確率的に低くて落ちる見込みは相当低いと思ったほうがいい。第十五階層以降でも、10体倒して1本取れたらいいほうだから。これは言う必要ないと思うけど、もし上級ポーションを狙うなら、第三十五階層からドロップを狙える。はい、これは地図」


 地図はありがたいし、情報が具体的でいいね。まあ私の『ウルトラハードモード』だと、全然あてにならないけど。


「じゃあ、最低でも第十五階層を目指さないとだ。ほいじゃねー」


 これ以上の雑談は時間の無駄だ。さっさと受付から離れ、ダンジョンの入り口を目指す。


 あのギャルと話している間、もうひとりの受付の兄ちゃんは、ずっと野球のボールを投げてはキャッチしていた。ずっとだ。

 怖すぎるだろ、なんだあいつ。あれと一緒にいなきゃいけないギャルが、すっごくかわいそうになったわ。


「更衣室は寄らなくていいよね。ちょっと見てみたい気はするけど」

「いいんじゃない? 特に面白いものがあるとは思えないし」

「うちは着替えへんし、どっちでもええ」


 ちょろっと歩いて到着したダンジョンの入り口は、そのほかに見てきたものと大差ない。地面にぽっかりと大きな穴があり、地下に伸びる階段は見慣れた光景だ。


 久々に『ソロダンジョン』を発動し、マドカの『グランドリンクⅡ』と連動して、私たちだけのダンジョンに入る。

 階段を前に、服を脱ぎ散らかしてのお着替えタイム。3人でダンジョンに入るのは、ひと月ぶりだから久々に感じる。


「あ、そういやさ、ふたりは銀座で新しい武器買ってたよね? 私、まだ見せてもらってなかったわ」

「そういえばそうね。久しぶりということもあるし、あたしたちの武器や連係の確認もしながら進みましょう。今日のところの目標は第十階層にしない? 移動だけでも時間かかると思うし」

「うん、そんなもんかな」

「ええ思う」


 ダンジョン装備一式を身につけ、違和感などないかを念のために点検する。そうやって準備完了だ。

 初めてのダンジョンでは、自然といつも緊張を感じる。階段を下っていくと、徐々に景色が変わっていく。


 最初に目に入る光景は、やはり広大なガラスの空間だ。神秘的なまでに透き通ったガラスと、あまりにまぶしい光。

 階段を下れば下るほどに強くなる光は、ちょっと耐え難いほど。


「うわー、まぶしっ!」


 こりゃ、サングラスしないと目を開けていられないね。

 ガラスの森ダンジョン、なめてました。

 ここは思った以上に難易度高そうだわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
眩しい昼、サングラスをすれば……嫌な予感
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。