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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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棚上げと遠出の準備

 マドカ&ツバキと別行動を始めてから、気づけば3週間くらい過ぎてしまった。

 私たちはちょくちょく集まっては、お互いの経過を報告し合っていた。今日は私の部屋に集まって、お決まりに近い内容を話している感じだ。


「へえ、今回は直接話してみたんだ?」

「偶然を装って話だけね。だけど、どうにもピンとこなくて」

「うちらを警戒してる人、多かった印象やな」

「警戒かー。結局、私たちって評判いいんだか悪いんだか、よくわからんね」


 もう10月も終わりになる。この別行動をしている間、私はストーカーやスカウトマン退治、そしてマドカとツバキには仲間探しとその調査をやってもらっていた。仲間候補については、随時に夕歌さんから追加の情報をもらっている。


 でも結果としては、微妙と言うしかない。

 ダンジョンでの稼ぎを放り出してまで取り組んだのに、相応の結果が得られかといえば、ちょっとどころではなく微妙な感じになってしまった。びみょー!


「アオイのほうはどう? 昨日も今日も変わらず?」

「だね。どんだけおっぱらっても、また次のが来るだけ。あんま意味ないわ」


 私を付け回す変な奴らは、ストーカーやスカウトマンに限らず、よくわからん自称記者やら、あげくの果てには強盗までいる。

 そんな奴らを次から次へと強引な話し合いや嫌がらせで退治しても、すぐにまた違う奴が現れる。

 なんなんだよ、あいつら! ホントにもう!


 まあやってみなければ、わからないこともある。そういう意味では、やってみてよかったと思うことにしている。迷惑な奴を退治すれば、ちょっとだけストレス解消になるし。


「仲間集めは、どないすんの?」


 それだ。選り好みしていては、いつまでたっても仲間なんかできない気がし始めている。


「もうこいつらとは絶対やだなって以外の人と、お試しで組んでみる? 組んでみたら案外、上手くいくかもしれないし」

「それもアリね。クランを作るには3人じゃ足りないし、今後に向けてどうしても仲間は必要になるわ。夕歌さんから教えてもらった候補の中でも、すでにパーティー組んだりクランに入った人が何人もいるみたい。妥協するつもりはないのだけど、高望みばかりしてもね」


 組んでみてダメなら、お別れすればいい。失敗を恐れていては、前に進めないからね。

 合わない人とはやっていられないし、やってみなければ合うかどうかわからない。

 別れを告げて変にごねる奴がいれば、ぶっ飛ばして叩き出す! その後のことなんて、知ったことかい!


 最悪、暴力的女子パーティーと評されても別にいい。なめられなくなりそうだし。私は常にポジティブにいくのだよ。


「よっしゃ。ほいじゃあ、いったんその方向で。とりあえずはマドカとツバキから見て、一番マシなパーティーに声かけてみよっか」

「ええ、考えてみるわね。それで状況作って、あたしから切り出してみるわ。でもタイミング的には、もう少しあとがよさそうね」

「なんで?」

「葵姉はん、そろそろ蒼龍杯やろ? 予選でせわしなくなるし、仲間集めはいったん中止にしいひんと」

「おー、そうだったわ」


 あったね。蒼龍杯とやらが。

 なんだっけな、あれだ。レジェンドのハンターで『蒼龍』とかいう爺さんが、スポンサーをやっている変な大会。私はそれに招待されている。

 それに参加すれば、賞品としてレジェンドが持っているとかいう金目の物をゲットできるわけだ。意味不明なことに、賞品は爺さんが勝手に決めて渡してくるらしいけど、希望くらいは聞いてもらえるんじゃないかと期待している。


 というわけで、私の希望は不動産。それをもらうつもりだ。

 超がんばって結果出すから、土地と建物をくれ! それならがんばれる!


「来月の頭からだったわよね? アオイ、パンフレット出して。あたしも細かいところは覚えてないから」

「ほーい。私は全然覚えてないわ」


 次元ポーチから、無駄に豪華なパンフレットを取り出してテーブルに置いた。

 パンフレットの真っ白な表紙には、金色の文字で「蒼龍杯」と書かれている。それをめくって、大会の詳細を見ていく。


「どんなんだっけ?」

「まず予備選考が11月3日から開始ね。そこから7日間で集めたポーションの合計価格を競うみたい。そこを勝ち抜けると本選考に進んで、ハンター同士の戦闘によって勝者を決めるという内容よ。アオイは16歳から20歳の部に出場ね」

「こまいところが書いてへんね」

「前にも夕歌さんとそんな話をしたわね」


 私はそんな話、ほぼ覚えていない。ホントにしたっけ?


「アオイ、前にも話したはずだけど事前にポーションを用意しておいたとしても、それをいつ手に入れたのかなんて判別は難しいはずよ。ダンジョン管理所で買い集めていればバレてしまうけど、それも別の第三者経由ならわからない。基本的にはダンジョンでのドロップ狙いだから、パーティーで集めることはいいとして、クラン単位の人海戦術で集めることも別に禁止されていないように読めるわ。あとそもそも予備予選の参加人数や、予選を通過できる人数も不明よ」


 あー、なんかそんな話を聞いたね。でもたしか、ポーションがドロップしやすいダンジョンは地方だし、買い集めるにしても高価だから、そういう不正っぽいことはやめておこうって話になった気がする。参加人数はどうでもいい。


 私たちは仲間集めや身辺整理を優先したから、出遅れるのは仕方ない。

 ポーションが落ちやすいダンジョンは地方だったから気軽に行けないし、私の『ウルトラハードモード』なら出遅れても巻き返せるだろうって判断だったと思う。


「予備選考は、実質とっくに始まってたってことだよね。別にいいよ、いまから逆転してやれば!」

「実際のところ、神楽坂ダンジョンでのドロップ率を考えれば問題ない見込みよ。本当はここまでに仲間が増えていればよかったのだけどね」


 ソロダンジョン印の赤い葵のマーク入り、私のほかには誰も使えない次元ポーチは死ぬほどたくさん集まっている。

 ポーションは次元ポーチよりもずっとドロップしやすいと聞くし、なんなら上級ポーションを狙ってみるのもいい。上級はまだ見たことないし、もし取れるなら普通にほしいよね。


「まどかおねえ、ポーション落ちやすいダンジョンってどこ?」

「いくつかあるけど、東京から近いのは富山ダンジョンよ。さっそく明日から行く?」

「うちは構わへん」

「おー、富山。初めて行くわ」


 全然、なじみのない土地だ。どこらへんかもよくわからん。

 とにかく、私たちは身軽なダンジョンハンターだからね。いつでもどこでも、自由に行ける!


「しばらく滞在することになるから、まずホテルを押さえないと」

「ホテルだったら雪乃さんに頼んでみる? 系列のホテルなら、ぱぱっとやってくれるかも」


 雪乃さんは私が泊まっているホテルのフロントマネージャーで、何かと世話になっている人だし頼りになる。きっと手伝ってくれるよね。


「いいわね。さっそく聞いてみるわよ」


 フロントにいた雪乃さんに相談してみれば、頼もしいことにささっと部屋を手配してくれた。

 持つべきものは頼りになるお姉さんだわ。


 蒼龍杯に出る奴がどれだけいるのか知らないけど、出場する奴らはすでに多くが動いているのだろうね。やっぱりみんなやるなら勝ちたいだろうし。

 でも主役は最後に登場するんだって、教えてやろうじゃないの。

 出遅れたとしても、私だってやるからには勝ちたいし。というか、絶対勝つ!

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― 新着の感想 ―
アウトロー思考だから初手選考外になった前科持ちPTが相性いいんじゃないですかねぇ 頼れるおねえちゃんは外付け知能回路!頭脳担当ありがてぇなぁ
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