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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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続くぼっち行動と不審者退治

 ラーメン屋から出て上機嫌で歩く。お腹いっぱいで気分がいいわ。

 そんないい気分がすぐに害されるのは、残念ながら予想どおりだ。

 あのストーカーとは違い、店の外で待つ程度の常識はあったのだろうね。そいつらがさっそく私の周囲をウロチョロし始める。


「うっとうしいなー」


 普段はあまり意識しないようにしているのだけど、今回は退治が目的だ。気づいているぞとアピールして、消えてくれるならそれでもいいのかな。

 チラッと視線を各所に走らせれば、数人とバッチリ目が合った。何気ない風を装って隠れる不審な奴ら。堂々としている奴もいるけど、目的がよくわからんね。私をずっと付け回して、何が楽しいんだか。


「しつこくナンパでもしてくれれば、ぶっ飛ばしやるのに」


 どうしてやろうかと思いつつテキトーにしばらく歩いていると、上野駅付近で制服を着たお巡りさんが目に入った。あそこは交番前のようだ。

 花やしきダンジョンのお姉さんが、警察に相談してみろとかどうとか言っていた気がする。ちょっと話してみるかね。

 うおおー、とダッシュで交番に向かった。


「ど、どうかしましたか?」

「困ってます! ストーカーっす! 追われてるっす!」

「ええっ、大丈夫ですか?」

「全然大丈夫じゃねえっす。超ピンチっす」

「とりあえず交番に入りましょう。話を聞かせてください」


 げ、これは根掘り葉掘り聞かれる感じ? 急にめんどくさくなってきた。


「このまま黙って聞いておくれ、お巡りさん」

「な、なんですか?」


 あれこれ言ってもたぶん仕方がない。

 手っ取り早く済ませるには、誰かに注意を向けたほうがいいよね。だったら、わかりやすい奴がいい。よし、あいつにしよう。


「私に右手のほう、ずっとあっちに茶色の革ジャンに金髪の男がいるんだよ。ぴちぴちパンツのなんか変な奴がさ。あ、じろじろ見ないでね」

「その男がストーカー?」

「うん。とりあえず私は左のほうに進んで、ここらをぐるっと回ってまた戻って来るからさ。その革ジャン金髪ぴちぴち野郎を確認してみてよ。わかりやすいでしょ? じゃあ、頼んだよ」

「あ、ちょっと」


 うだうだ言われる前に行動を開始した。

 お巡りさんとの短いやり取りなら、付け回している連中も交番で道を聞いたくらいに思ったはずだよね。

 そうやって商店街の軒先を覗きながら、たぶん10分くらいで交番前に戻ってきた。


「おいすー、お巡りさん」

「君、大丈夫だった?」


 見ればわかるだろ。全然、大丈夫だって。


「それより金髪ぴちぴち野郎は確認できた?」

「ああ、いまもこっちのほうを見ているね」

「じゃあ、そういうことで。私はまたあっちのほうに行くからさ、職質? とかそういうので足止めしてくれない?」

「それは構わないが、君は?」

「あんな奴と関わりたくないわ。だからお巡りさんのほうで、職質のついでに警告してやってよ。適当に。それだけでいいからさ。そんじゃねー」

「ああ、ちょっとまた……」


 うだうだ言われたくないからね。さっさと移動するよ。



 ちゃちゃっと歩いて地下鉄のほうに向かう。

 背後をチラッと見やれば、まんまとぴちぴち野郎は足止めされていた。あれで懲りてくれればいいんだけどねー。ま、無理か。

 なんか楽しくなってきたな、ほかの奴らもおちょくってやるわ!


 いったん地下に入ったあとで、別の出口から地上に戻る。

 不審者一党を引き連れながらアメ横を練り歩き、ちょこちょこと買い物をして今日の充実度を上げていく。


 人混みの中をゆっくりと進んで普通に午後のお買い物タイムを満喫していると、焦れたのかわざとらしく背後からぶつかってくる奴がいた。危険な感じはしなかったので、あえて受けてやる。


「失礼」


 おうおう、こっちはお前がわざとぶつかったことくらい気づいておるわ。どういうつもりなんじゃい、われぇ!

 心の中で威勢よく文句を言いつつ、声の主に向かって振り返る。するとそこには、派手なスーツのお姉さんがいた。ジャラジャラのアクセサリーにピンク色のスーツって、なかなかすごいな。


 んー? この人は新顔かな? 朝や昼から付け回していた中にはいなかったと思う。


「ごめんなさいね」


 派手なお姉さんが謝りながら名刺を差し出してきた。

 一応受け取ってみたけど、やはり芸能事務所のようだった。スカウトか。モテる美少女はつらいわねえ。


「こういう者です。広く名前の通った事務所なので、ご存じでしょう? ちょっとだけお時間いいかしら?」

「知らん、ダメ、ムリ!」


 はっきり言わないとこの手の人たちには通じないからね。これでお引き取りくださいな。


「あの、興味ない? アイドルとかモデルとか、」

「ないっす! 全然、ないっす!」

「そ、そうですか。もしよければ、いつでもいいので連絡くださいね」

「うっす!」


 引き際がいいね。みんなこうならいいのに。

 名残惜しそうに去っていく派手なお姉さんを見送っていると、道端で足を止めたことを幸いに思ったのか、超不審な気配が人混みに紛れて急接近していることを察知した。


 やらせるかよ!


 センシティブな場所に伸ばされた不埒な手を華麗に回避し、足をバキッと踏んづけてやった。感触的にかなりのダメージを負わせたはずだけど、この程度で済まさない。痴漢は犯罪!


 人混みの中であくまでさり気なく、第三者にはわからない自然な動作が大事です。

 足の甲の骨までいく怪我はまだ序の口よ。すすっと背後に回ったら、ひざの裏を踏みつけるようにキック!

 短い悲鳴もあとのことも知らんです。人混みに紛れてささっと移動ですわー。


「ふいー、悪者を成敗すると気分がいいわねー」


 そろそろ上野にも飽きたし、どうしようかな。

 まだ午後3時くらいだ。悪者が本性を表すなら、たぶんもっと遅い時間だと思う。


 ふーむ。ここはまず大胆に移動して、ずっと追ってくる嫌な根性の持ち主をあぶりだすとしようか。その中から、さらに遅い時間までついてくるのを排除しよう。ここからが本番だぞ。


「へい、タクシー」


 付いて来られるもんなら付いて来い!

 きっと本物だけが追ってくる。うん、ホントに嫌な本物だけどね。


 挑発的なタクシー移動で向かったのは新宿。夜まで時間あるからお洋服を買っちゃおう。

 英国お嬢様風ファッションは、しばらく継続すると決めているから、いま持っている5セットでは物足りないと思っていたところだよ。


 前に利用したのと同じデパートに寄って、これまた前の店員さんが私を覚えていてくれたことから、再びお任せでいろいろ選んでもらって購入した。

 たっぷり時間をかけて買い物をしたせいで、日もとっぷり暮れている。いい時間だね。


「えー、雨かよ」


 デパートから出ると小雨が降っていた。次元ポーチから取り出した傘をさす。

 すっかり暗くなった外を少し歩いて、周囲の不審者を確認した。私もそこそこ気配を読めるようになったし、結構目ざといからね。変な奴がいればすぐに気づける。


 しつこいのがまだ数人はいるね。よしよし、本物の嫌な奴らだわ。

 次が最後の移動だよ。成敗してくれるわ!

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― 新着の感想 ―
タクシーすら追い回すのヤバいな……ほかのタクシーに前の車を追ってくれとかいうんだろうか……
葵ちゃんはうんざりしてるんだろけど見てる読者としてはコントめいてて面白いんだよなーごめんね!
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