表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/180

新スキルは使える? 使えない?

「へえ、あの『ソロダンジョン』覚えたんだ。珍しいスキルだけどね。そっか、そっか」

「なんか微妙な反応」

「ごめん、ごめん」


 あっそう、ゴミスキルってわけね。

 いいよいいよ、どうせ期待してなかったし。


「あ、もしかして。覚えたらマズいスキル、とかじゃないよね?」

「マズくはないと思うわよ。それがね、私も古い資料見てて、最近知ったんだけどさ。そのスキル使うとダンジョンの中でソロになっちゃうらしいのよ。モンスターのほかには、だーれもいないダンジョンになっちゃうってこと」

「誰もいない? 気兼ねなく暴れられるってこと? いいじゃん」


 人目を気にしなくていいなら気楽だ。ほかの奴とモンスターを取りあったりもしなくて済むし。


「まあ好きにはできるけど、誰かと一緒に探索できないし、誰にも助けてもらえないスキルってこと。珍しいスキルだけど、ソロだと結局は深く潜れないから、あまり有用とは言えないかな」

「そっか」


 強制的にソロになるわけじゃないなら、必要なければ発動させなければいい。そういうことだよね。

 それに危険の少ない上層で使う分には、案外悪くない気がするけどね。私としては、むしろアタリな気がする。

 能力的にバレても問題ないスキルの感じもあるし、気軽に使っていこう。


 ぼっちの私としては、ソロでのダンジョン探索上等だ。私のステータスってめちゃ弱いから、パーティー組んでくれる人だっていないだろうし。そんな奇特な人を探す労力は無駄に思えてしまう。

 浅い階層で少しでも稼げるなら、しばらくはそれで構わない。まずは今日や明日をやりすごすお金が大事なんだから!


「そういえば魂石はどれくらい持ってこれた? クズでも一応は買い取れるわよ。それこそ二束三文になっちゃうけど、お姉さんが個人的に初回サービスしてあげる」


 な、なんと。色をつけてくれるってこと? それはかたじけない!


「ありがたやー、ちょっとだけど集めてきたよ」


 ビーズ大のちっちゃい魔石をポケットから取り出して、カウンターの上にぽろぽろと乗せた。

 するとお姉さんは眠そうな目を真剣な目つきに変えて、ひと粒ずつ魔石を光に透かして見始めた。


「え、待って。これ全部高品質じゃない? しかも色付きまであるんだけど。葵ちゃん、これどうしたの?」

「どうしたって、そりゃダンゴムシ倒して手に入れたのよ。その反応は、もしかしてこれが10円で売れるってやつ? やった!」

「いやー、ちょっとおかしいわね。ホントのホントに嘘じゃない? ほかのクズ魔石を大量に捨てて、これだけ持って帰ってきたとか」


 おうおう、ケチつけようってのか。なんかやたらと運がよかったみたいだけど。


「そんなもったいないことするわけないでしょ、お金ないんだから。がんばって、やっと手に入ったのがそれだよ。レベルだって1しか上がってないし」

「……だよね。じゃあ葵ちゃんさ、ダンジョンに変なところなかった?」

「んなこと言われても。私、今日が初めてなわけだし」

「そういやそうだったわね。一応、報告あげとくか……あ、もしかしてこれが葵ちゃんの初期スキル?」

「うーん、そうかも?」


 だったらいいんだけどね。

 モンスターが落とす魔石の品質が上がるのがスキル『ウルトラハードモード』の効果なのかな。状況からしてそれはあるんだろうけど、それだけとは思えない。


「すごいスキルじゃないの。ふふ、よかったわね。とりあえず精算するから」

「たのんます」


 お姉さんは極小魔石を変な台にひと粒ずつ乗せて慎重に何かを確認後、トレーに硬貨を置いて差し出した。お金だ!


「これが魂石の代金ね。色付きは100円で、ほかは10円ずつで、合計290円。あと、これは私から」

「おお、いいの? やった、ありがと!」


 トレーの横に、お菓子の詰まった袋とペットボトルのお茶を出してくれた。

 本当はお菓子じゃなくてご飯が食べたかったけど、それでも涙が出るほど嬉しい。これだけあったら、お腹いっぱいになりそう!

 めちゃくちゃいい人だったわ、このお姉さん。

 ほくほくとお金をポケットに突っ込み、お菓子の袋とお茶を手に取った。


たちばなさんっ」


 うお、びっくりした。ダンジョンのあるほうから、汗臭そうなお兄さんが走ってきた。

 あいつがお姉さんに呼びかけたらしい。急にでかい声出すなよ、うるせえな。


「どうしたんですか、そんなに慌てて」

「医務官を呼び出してください、緊急です!」


 慌ただしく受付に走り寄ったお兄さんの格好は、いかつい金属製の装備で、あちこちに黒っぽいシミがついている。血、みたいだね。


「噓でしょ、なにやってんですか。今日はいつもの安定の狩場って話でしたよね」


 お姉さんは言いながらも電話機を耳に当てて、その先にいるだろう人との会話を始めた。その口調はさっきまでの気さくな雰囲気が一変して、明らかにピリピリとしている。なんかやばそうな雰囲気だね。

 ダンジョンって、やっぱり危なそう。私もここでやっていくなら、気をつけないとだ。

 それはともかく。


「えっと、じゃあ私はこれで~」


 ここにいてもきっと邪魔になるよね。

 お菓子とお茶を手にして、そそくさと退散することにした。


 あの汗臭そうなお兄さんのお仲間、無事だといいね。

 ま、私には関係ないけど。というか私は人の心配の前に、自分のことで手一杯だ。


 さーて、ここに来る途中で見かけた公園でいいかな。

 そこでお菓子食べて、適当なベンチで寝てしまおう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ダンジョンの中でぼっちになれる程度の能力……将来が超安全や…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ