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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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56/210

まだまだこれからの二人!

 元アイドルの九条マドカちゃん。

 初めての仲間候補の存在に、ちょっとどきどきした気持ちが静まらない。


 そんなマドカと連れだって神楽坂ダンジョンに戻った時には、夜の10時を過ぎていた。

 遅い時間にもかかわらず管理所内にはたくさんのハンターがいて、まだまだ人が引ける様子はない。神楽坂ダンジョンの人気の高さが嫌でもわかる。


 当然ながら、ホットな注目の的となっている私、そして元アイドルのコンビは目立っていたらしく、すぐに気づかれてちょっとした騒ぎになった。

 でもその程度は予想しているからね。親密にふたりで話しながら歩いていれば、知らない奴が簡単に話しかけられる雰囲気は全然ない。空気が読める人たちでよかったわ。


 お陰で邪魔が入らず普通に歩ける。

 そして仲良さげに歩いていれば、それ相応の噂など図らずとも勝手に湧いて出る。もうあちこちで話しているのが聞こえまくる。

 やれパーティーを組んだだの、やれ一緒のクランに入っただのといった憶測が聞こえてきた。これはすぐ噂になって、いまここにいる人以外も知るのだろうね。


 受付だけささっと済ませて、さっそくダンジョンに向かう。


「アオイ、この後でまだ時間ある? スキルの発動が上手くいったらになっちゃうけど」

「全然オッケー。パーティー組むなら、いろいろ決めないとだし」


 パーティーを組むのあたり、声のボリュームを上げて言っておく。

 だからもう余計なちょっかいをかけてくれるなよ。そういうことだからね。


 これでスキルのリンクが上手くいかなかったらどうするか、といった心配は無用だった。

 ふたりでサクッとスキルを発動してみれば、思惑どおりの結果になった。これで晴れて私はパーティーを組むことになったわけだ。

 思った以上にわくわくした気持ちが込み上げる。どきどきわくわくだ。ずっとソロだったから、その反動だろうね。


 ダンジョンに入ってすぐに引き返す私たちの行動は不思議に思われただろうけど、他人がどう思おうと関係ない。

 管理所から外に出て少し歩くと、マドカが手を上げてタクシーを止めた。


「もう時間も遅いし、この後の話はあたしが泊ってるホテルの部屋でいい?」

「いいけどホテル暮らしなん?」

「事務所の寮は出ちゃったし、実家は関西だから。いろいろあって、まだ部屋を借りられていないのよ」


 言いつつタクシーに乗り込み、マドカが行き先を告げた。


「アオイはどこに住んでるの? あ、その前に連絡先交換しない?」


 また出たよ、連絡交換イベント。困るよねー、まったく。


「ちょっと待って! 私にはさ、いろいろ事情があるんだよ。ややこしいから腰を落ち着けてね、話は部屋でってことで」

「そう? まあホテルにはすぐ着くし、それでいいわ」


 10分ほどの無言の時間を置いて、少々立派な感じのホテルに到着した。

 どこをどう取っても、私が使っているホテルとは違う。なんというか格式が違う。立派だ!


「なんかすげーとこ泊ってんね」

「ちゃんとした所じゃないと不安なのよ。お金がかかって大変だけど、これはしょうがないわ。だから早く新居を借りないと」

「へえ」


 自前の部屋がない者同士って意味でも、ますます気が合いそう。

 フロントでちょっとしたやり取りを終えたら、さっそくホテルの部屋に移動した。ひとり用とはとても思えない広い部屋は、たぶん最低ランクの部屋でもこの程度の広さがあるってことかな。マドカはお金持ちっぽいね。


「お茶でいい?」

「なんでもいいけど、どうせなら高級感あるやつで!」


 ちょいと飲み物を用意したり手を洗ったりしたら、ティーテーブルを前に向かい合って座る。

 座った時の姿勢も綺麗なのは、さすが元アイドルだね。なんか迫力もある。でも姿勢のよさでは私だって負けていないはず! 仲間として、気後れせずにいくぞ。


「今後のこともあるけど、まずはアオイのことを聞いてもいい?」

「うん、じゃあ私の生活面の状況からね」


 マドカの事情は聞いたから、今度はこっちの番だ。パーティーを組む仲間として話せることは話してしまえ。

 つらつらと私がホームレスであることや、そのためにスマホを持っていないことを話す。それといまの定宿と部屋番号さえ伝えてしまえば、ほかは特に伝えるべきことはない。


 なぜホームレスか、ということは追々どこかで話す機会はあるかもね。あんまりしょうもない話ばかりしていては眠くなる。

 時折質問をはさみながら聞くマドカに対して話を続けた。そして、ここからが大事なこと。


「でもってハンターとしての状況ね。私のレベルは調べた?」

「ランキングから調査済みよ。レベルは15でしょ? あたしに比べたら高いけど、すぐに追いつくつもりだから心配しないで」

「心配っていうかさ、私ったらすっごい特殊なスキル持ってんだよね」

「それって『ソロダンジョン』以外のスキルってこと? あのランキングに入っている以上、何かあるとは思っているけど」


 一緒にやっていくなら、秘密には決してできない。ウルトラハードモードなダンジョンには、普通の感覚で入ったらマズいと思う。

 私は普通のダンジョンがわからないから、想像しかできないけどたぶんマズいよね。下手をしたらすぐに死んでしまうかもしれない。そのくらいの危機感を持つべき。たぶん。


 穴場のレストランでマドカがそうしたように、私も自分の身分証をテーブルに乗せた。そして魔力を流して裏面を見せてやる。



■星魂の記憶

名前:永倉葵スカーレット

レベル:15

クラス:はぐれ山賊

生命力:42

精神力:42

攻撃力:42

防御力:42

魔法力:42

抵抗力:42

スキル:ウルトラハードモード/ソロダンジョン/武魂共鳴/毒攻撃/星の糸紡ぎ/状態異常耐性/カチカチアーマー/キラキラハンマー/生命力吸収/念動力/健康体

クラススキル:拘束具破壊/威嚇

加護:弁財天の加護/厄病神の加護



 マドカは私の身分証を食い入るように顔を近づけて見ている。

 数十秒ほどもたってから上げた顔は、驚いたような納得がいっていないような、そんな表情。ほかの奴らのことがわからんけど、やっぱ私のステータスは特殊っぽいよね。


「ほい、質問をどうぞ」

「いろいろ気になったのだけど……はぐれ山賊? アオイって山賊だったの?」

「やっぱ気になるよねー」

「だってあたしも、クラスがアレだから」


 どん底アイドル崩れ、だったね。

 正直、私以上にひどいわ。山賊がマシに思えるってなんだよ。いや、山賊もやっぱひどいよね。


「私は次のレベル20で取れるサブクラスが、すっごいのになるようがんばってる。山賊なんてクラスにめっちゃ不満あるからさ、その意味じゃマドカと一緒。レストランで見た時、同志だって思ったから」

「そうだったんだ。それは嬉しいけど、アオイのステータスっていろいろおかしくない? 平均値があたしより低いし、スキルの数がものすごいし、加護まであるし」

「たぶん私の初期スキル『ウルトラハードモード』が、全部の原因だと思う。覚悟して聞いてよ? 私と一緒にダンジョンアタックするって、たぶん思ってる以上に大変だから」


 より真剣な表情になったマドカに、スキルの説明とそれによって得られるメリットとデメリットなどを話していった。

 さらには現在、私がソロで第十七階層で戦っていることも話した。パーティーを組む以上、最初はまだレベルの低いマドカをサポートするつもりはある。それも含めての今後だ。


 私の話を聞いたマドカは、黙ったまましばらく考え込み、そうしてから顔を上げた。


「アオイって、想像した以上に只者じゃなかったみたいね。いまのままだと、とてもついていける気がしないわ」

「なんとかなるって」

「ダメよ。本当は自分の力だけでどうにかしたかったけど、そんなことを言っている場合じゃないみたいね。アオイ、ごめん。一緒にダンジョンに入るのはそうね、1週間待ってくれる?」

「なんで?」

「実家に親族が使っていた装備があるはずだから、それを一式もらってくるわ。ちょっと面倒な家だから、いきなり装備だけもらうってことはたぶんできなくて。それに使い方も少し教わってから戻りたいの」


 おー、なんかすごい実家っぽい。きっとそこらには売ってない、強い装備があるのだろう。なんかそんなニュアンスだ。


「わかった。私は普通にいままでどおり、お金稼ぎとレベル上げして待ってるよ」

「ええ、待ってて。あとできれば、早めにパーティーメンバーを集めたいわね。上を目指すなら人数は必要よ」


 たしかに。どうせパーティー組むなら、ちゃんとした人数をそろえて慣れていったほうがいいと思う。先を見越して動いていかないと。


「じゃあ、お互いに仲間の候補は探してみるってことで。誰かいい人いないか、知り合いにもちょっと聞いてみるわ。スキルリンクのことって話してもいい?」

「言いふらされたら嫌だけど、アオイの知り合いになら構わないわ」


 結局、その後もなんやかんと話し込んでしまい、そのまま泊らせてもらった。

 お泊り!

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― 新着の感想 ―
マドカと一緒に初見のダンジョン行って隠し部屋巡りでいいような?w
友達ん家にお泊りとかおぼっちさまの宿泊じゃない… 公園のベンチがベットだ!なホームレスの教えはどうなってんだ教えは
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