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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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お得なランキングシステム

 パンチングマシンのモニターには、間違いなく私の名前が表示されている。

 まさかの事態に数秒ほど固まり、そうしてから同じように固まっていた夕歌さんと顔を見合わせた。


「なんか、ランキング入ったわ」

「え、ええーっ! ちょっとちょっと、どういうこと?」


 自分でもびっくりしたけど、私より夕歌さんのほうが驚いているのが妙におかしい。

 私ったら結構強くなったよねとは思っていたけど、さすがにこれはちょっと予想外だった。


 つよつよハンマーさん含めた完全装備状態なら、私のステータスは装備の補正値込みでかなり高い。でもいまはアクセサリーだけしか装備していないからね。まさかランキングに入るような点数を叩き出すとは思わなかった。そもそも装備含めて全力でやっても、そこまでいくとは思わないし。


「いや、全国9位って。私ってそんなにチカラあんの? このマシン壊れてない?」

「まさか壊れているなんてことは……というか、葵ちゃんのレベルとステータスってどうなってるの? たしか前に聞いた時にはすごく低かったわよね? レベルが上がってすごく増えたとか? ちなみに私はレベル16で、ステータスの平均値は100くらい。同じレベル帯では少し高めのステータスよ。葵ちゃんは?」


 先に自己申告されてしまったら、こっちも言わないわけにはいかないじゃん。まあいいけど。


「夕歌さんよりだいぶ低いね。レベルは15だけど、ステータスの平均はえっと……42だよ」

「ウソでしょ?」

「ホントだって。ただ私は装備とスキルが強いから、明らかにそのお陰だね」


 ステータスは装備の補正値込みなら余裕で平均1,000オーバーだ。まだその能力を完全には引き出せてはいないのが実情だから、私にはかなりの伸びしろがあるはず。

 レベルだってまだ15だし、大器晩成タイプなら基礎ステータスだってもっと伸びるよね。


「それにしたって、あの点数はレベル15で出せる数字じゃないわよ?」

「出たもんは仕方ないって。あ、それにいまは9位だけど、これからすぐに追い抜かれて消えるんじゃない?」


 モニターには10位までしか表示されていない。これからチャレンジする人なんて山ほどいるだろうし、あのランキングから零れ落ちるなんて、どうせすぐだ。


「あの表示から消えても、ハンターランキングには残るわ。言ったでしょ? これは期間限定のお遊びみたいなものだけど、公式のハンターランキングに採用されているのよ。チャレンジした人は全員がランキングに載るし、上位100位以内なら大勢にチェックされるわよ。特に葵ちゃんは所属クランが空欄になっているから、注目度は特別高くなるはずよ」

「もしかしてそれって、あちこちから誘われる?」


 夕歌さんは深くうなずいてから続ける。


「当然よ。多くのクランが有望なハンターを求めているんだから。今夜からさっそく、永倉葵スカーレットって誰だ、どこにいるって、探し回るのでしょうね」

「めんどくせー。でも私はこれまで誰とも組んでないし、いちいち名乗りを上げて歩いてるわけじゃないから。たぶん大丈夫」

「そんな甘いものじゃないわよ? 葵ちゃんって可愛いし名前に特徴があるからね。ダンジョン管理所の職員には覚えられているだろうし、どこから噂になるかわかったものじゃないわ。覚悟はしておいたほうがいいわよ」


 最悪だ。個人情報がどうのこうのって話には、期待するだけ無駄らしい。

 たしかに、私と夕歌さんが仲良く雑談するように、ほかのハンターや管理所の職員だっていろいろな話をするだろう。その中にはランキングに登場した私の噂があってもおかしくない。


「仕方ないか。まあ私ったら結構強いし、しつこい奴がいたら殴って追い返してやる!」

「警察沙汰にはならないようにね?」

「ほーい、できるだけね。そんなことよりランキングってさ、入るとなんかいいことあんの?」


 ただ名前が売れるだけなら、そんなランキングは迷惑千万なんだけど。辞退したいんだけど。


「もちろんあるわよ。基本的にハンターランキングは、個人ランキングとクランランキングがあってね。個人のほうは主に名誉が与えられて、クランのほうに実利がある形になっているの。細かくはいろいろあるんだけど基本的にはね」


 へー。じゃあランキングを狙うなら、クランじゃないと実利的な意味はあんまりないのか。


「ただ、パンチングマシンのランキングは、期間限定の上に完全に個人に紐づいたランキングになっていてね。お遊び企画と言われているくらいだから、参加して上位に入れば少しお得って感じの景品だったはずよ。葵ちゃんは期間中、明らかに上位に残るだろうからちょっと調べてみるわね」

「おー、ありがとね」


 夕歌さんはスマホをポチポチやって、画面を見せてくれた。


「ほら、これよ」

「どれどれ。えっと、パンチングマシンのランキングは9月末まで。景品は上位10%にダンジョン管理所提携の店で、一度だけ使用可能な10%オフの割引券。割引券? びみょー。で、順位が上になるほど割引率も上がっていって、50位までに入れば50%オフだって。このままなら私は半額券ゲットってことか」

「よかったじゃない。半額は大きいわよ?」


 私が一番ほしいのって、タワマンだからね。それが半額になるなら嬉しいんだけど、まさか売ってないだろうし。いや、そのまさかがあるとか?


「もしかして、タワマンも買える?」

「不動産関係の特典は、クランランキングのほうに紐づくのよ。残念だけど、このランキング報酬には関係ないわね」

「そっかー」


 やっぱり微妙かも。ダンジョン管理所と提携の店ってことは、ハンター向けの装備品の店とかだよね。装備は間に合っているし、いま特にほしいものはない。

 というか装備品は使わないのが死ぬほど余っている。むしろ私のやつを買ってもらいたいくらいだよ。


「あ、あともうひとつ、上位入賞者には別の景品があるみたいね。具体的な内容や人数は未発表みたいだけど、ランキング期間が終わったら該当者に通知が行くみたい」

「なんだろね、もったいぶって」


 9月末のランキング期間が終わるまで、まだひと月以上ある。その間に私の順位はどんどん下がりそうだし、気にする必要はないかもしれない。

 未発表の景品はともかく、割引券は別にどうでもいいから、パンチングマシンはたぶん二度とやらない。

 あれ、無駄に名前だけ売れちゃって、私ったら損してない? もしかして。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 夕歌さん結構強かったんですねやっぱ…。多分彼女は全体の平均値と比較してわりかし上澄みと推測→そこから予測するにトップ連中のステは多目に見積もって三倍(平均300位?)と仮定すると…
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