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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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一般ハンターのお財布事情

「葵ちゃん、お待たせ。ちょうど精算終わったみたいだけど……かなり大きな金額になったわね。貯金でいい?」


 言いながら夕歌さんは、自動査定で表示された画面を見せてくれた。いつもならお金をトレーに置いてくれるのだけど、ちょっと額がでかすぎた。

 そこに表示された金額は、14,505,880円だった。

 いっせんまん超えだ。もう一気に貯金が倍近くになった。我ながらすごいわ。すごすぎて意味わからん。


「おー、ちょっとは予想してたけど、結構いったね。なんか現実感薄いけど……とりあえず100万だけもらって、あとは貯金でたのんます!」

「じゃあ100万円取ってくるわね」


 夕歌さんはすぐに金庫から現金を持ってきて、あとは貯金の処理をしてくれた。


「これで貯金が3,000万いったわ。タワマンまではまだ遠いけど、案外すぐいけそうだね」

「まだタワマンなんて言ってるの?」

「当然! だってホームレスからのスーパー成りあがり伝説を達成したいじゃん」

「うーん、葵ちゃんに必要とは思えないけどなー。でもまあ、お金がたまったら私と雪乃に相談してね。勢いで買ったらダメよ?」

「わかってるって。私みたいな小娘が不動産屋に行っても、カモにされそうだからね。それくらいわかってるって」

「ならいいけど」


 億を超える現金を持っていけば、門前払いされることないだろうけど、代わりにぼったくられたりだまされたりしそうな気はする。

 お金がたまっていざ買い物だとなった時には、お姉さんたちを頼らせてもらうとしよう。


「そういや、第十七階層で今後もしばらく稼ぐつもりなんだけどさ、ほかの人たちの稼ぎってどんなもん? これも参考に知っておきたいわ」


 高品質魔石ばかりをゲットできる私とその他での収入の差は、理解しておいたほうがいい。さすがに私の稼ぎがおかしいってわかるからね。

 夕歌さんはなぜか居住まいを正して「大雑把でもいい?」なんて言いつつ、マジメくさった顔で話し始めた。ちょっとウキウキしてない? 説明とか好きな人だったっけ。まあいいけど。


「まず高品質魔石の価格は取れる階層にもよるけど、ダンジョン中層なら普通の魔石の5倍くらいの価格になるわ。色つきならさらに5倍だけど、これは滅多に取れないわね。でも葵ちゃんは高品質魔石ばかりを持ち込んで、さらにその中から一割程度は色つきが混ざっている。つまり葵ちゃんは、普通のハンターの5倍以上の価格の魔石ばかりを持ってきているってことね」


 同じ数だけの魔石を持ち込んだら、5倍以上の稼ぎになると。


「しかも普通のパーティーが持ち込む魔石の数は、多くても50個なんて滅多にいかないわ。なのに葵ちゃんは、平気で100個以上持ち込むわね?」

「まあ、モンスター狩り放題のソロダンジョンなんで」


 ぼっちで苦労しているからね。そのくらいの恩恵がないとやってられないよ。


「その時点で収入として、さらに倍以上になっていると。そして大事なのが、葵ちゃんは報酬をひとり占めにできることも大きいわよ」

「そっか。普通はパーティー組んだら山分けだもんね」

「ハンターは安全面から5人から7人でパーティーを組むのが常識よ。報酬は人数で割ることになるし、大抵のハンターはクランに所属するからクランに納めるお金も必要、さらには経費もかかってくるわ」


 なんやかんやと、お金がかかるね。


「あー、それでさ。第十七階層に普通のパーティーが行ったとして、1日の報酬はどんなもんなん?」


 小難しいことはいいとして、単純にそれが知りたい。


「第十七階層の場合、通常の魔石が約7,000円、それを仮に50個持ち込んだとして350,000円。クランに収める金額はまちまちだけど、一般的に一割と言われているから、差し引きで315,000円。パーティーが5人なら1人あたり63,000円、7人なら……45,000円の稼ぎになるわね。経費は個人で考えるかパーティーで考えるか、あるいはクラン単位で考えるかで、また変わるから難しいけど」

「おー、まあ経費は別としても、日給で4万以上なら悪くないじゃん」


 私の場合には魔石の質が高くて数も多いから、同じ第十七階層で1日400万以上稼げるけどね!

 やっぱ私ったらすごいわ。圧倒的じゃないかね。


「丸儲けならそうなるんだけどねー。葵ちゃん、ポーションの値段知ってるわよね?」

「あ、怪我した場合か。ポーションって、たしか……あれ?」

「20万くらいするわよ。無理して怪我しようものなら、稼ぎなんてないようなもの。ポーション並みの回復魔法が使えるハンターなんて、ほんのひと握りのトップ層だけだしね。だから、無理せずにモンスターを50体も倒すこと自体が大変なのよ。安全に十分気を払って時間をかけて討伐するのが普通だから、適正レベルの階層で取れる魔石は、20から30個でも多いくらいじゃない?」


 いやー、さすがにそれは少ないわ。


「そんなんじゃ、全然稼げなくない?」

「仮に魔石が20個でパーティーが7人、クランへ一割納めたら、経費を考えない場合に1人あたり18,000円、になるわね」


 ええ? モンスターと戦うのって、一応はそこそこ危険だと思うんだけど。その報酬で割にあう?


「ちょっと夢がないわー」

「最低で考えた場合のことよ。7人パーティーで余裕のある階層なら、もっと多く魔石が取れるわね。高品質魔石もたまには取れるし、ドロップアイテムがあればもっと収入は大きくなるから。きちんと計画的に探索していれば、中層以降をメインにするハンターなら余裕のある生活を送れるはずよ」


 なら悪くないのかな?


「そっか。私はソロダンジョンだから、売れない次元ポーチがたまる一方だったわ。ドロップアイテムか、なるほどね」

「次元ポーチ、もったいないわねー。そういえば、葵ちゃんから預かった装備品のことなんだけどさ、もうしばらく待ってほしいって」


 思い出した。そんなのもあったわ。

 たしか、ソロダンジョン産の私が使わない武器とアクセサリーをお姉さんに渡していた。あれがいくらで売れるか、あるいは買ってくれないのか気にはなる。

 魔石だけでもかなり稼げるようになったから、もうそんなに期待しなくていい。なんならあげてもいいくらいだ。どうせ使わない装備だしね。


「ほーい、別にいつでもいいよ」


 というか、ほかにもいっぱいゲットしまくっているけど、いまの装備に隙がなさすぎて結局使わないんだよね。

 試しに剣とか使ってみたけど、なんか上手く切れなかったし。ハンマーさんのほうが慣れている分もあって、圧倒的に使い勝手がいいわ。


 もう無駄なものが増えていくだけだから、お宝を探す気力は全然湧かなくなっている。そんなことに時間を使うより、モンスターと戦っているほうが有意義だよね。


「よかった。葵ちゃん、この後はどうするの?」

「特に? ホテルに帰って寝るだけ」

「じゃあ一緒にお菓子でもどう? ちょっといいのを差し入れにもらったのよ」

「おお、いいね!」


 暇を持て余した夕歌さんと、終電近くまでおしゃべりしてしまった。

 予定では週に2回くらいのペースで、東中野ダンジョン管理所に魔石を売りに来るつもりだ。その時にはこうしておしゃべりを楽しむのもいいよね。

 明日からまた、ひたすらモンスター倒しまくろう。

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