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レベル上げの険しい道

 アタックするダンジョンを神楽坂に変えてから3日がたち、今日は労働後に東中野に移動した。

 たった3日空けただけでも、なんだか久しぶりな感じがしてしまう。ずっとダンジョンに集中していたからかな。

 そんなことを思いながら、馴染みのダンジョン管理所に突入だ。


「おいすー、お姉さん。元気でやってる?」


 相変わらず人が全然いなくて安心する。過疎ってるわ、東中野ダンジョン。


「おいすー、葵ちゃん……なにその格好。いつものジャージは?」

「ハッ! あんな芋くさいジャージとは、とうにおさらばしたんだよ。これがいまの私のスタイルだから!」


 サービスでくるりと一回転だ。よく見てよね!


「なにやってんの。いいからほら、魔石の換金でしょ?」

「ええー、リアクション薄くない? ちょっとは褒めてよ、がんばってんだから」


 カウンターに乗り上げるくらいの勢いで、お姉さんに詰め寄る。

 なんであれ、がんばりは褒めてくれよ。


「冗談よ。でも突然どうしたの? 私はてっきりジャージが好きなのかと思ってたけど。葵ちゃんて結構なお金を稼ぐようになってからも、服にお金は使ってなかったじゃない?」


 別に好き好んでジャージだったわけじゃないんだけど、まあいいや。


「お姉さんさ、オシャレタウン神楽坂だよ? あの街で生きていくにはジャージじゃダメでしょ。オシャレ女子のハンターたちに、絶対になめられるからね」

「それはたしかに、あるかもしれないわね」


 嫌だね、ホント。ファッションでマウントを取りあうなんて、本当にアホくさい。

 でもよく知らない奴らに陰口叩かれたり、ましてや面と向かってイラッとするようなことを言われたくもない。どういう関係かは知らない奴らだったけど、たった数日のうちにそういうのを何回か見たことがある。


 バカにされないくらいの備えはしておくのが無難というものだ。ケンカ売られたら、たぶん私ったら買っちゃうからね。ぶっ飛ばすぞ!

 貧乏だったらオシャレなんてしないけど、いまの私にはちょっとした余裕がある。イメチェンくらいやっちゃうよ。


「あ、そういやお姉さん。ホテルの予約してくれてたんなら、先に教えといてよ。あやうくスルーして、別のホテルに行くとこだったよ」

「スルー? まさか教えたホテルに行かないとは思わないし、驚かせたかったのよ」

「まあ聞いておいて行かないってのもね。そりゃそうだわ」

「雪乃とはどう? ちょっとシフトがかみ合わなくて、最近は話せてないんだけど。本当だったら葵ちゃんの様子を聞いておきたかったんだけどね」


 あのホテルで受付をやっていた、みなもと雪乃さん。あのお姉さんはどうやら、この目の前にいるお姉さんとマブダチらしい。


「いい人だね、雪乃さん。あの人のお陰でホテルに泊まれてるようなもんだし」

「あれ、名前で呼んでるんだ。私のことも夕歌ゆうかでいいのに」

「じゃあ夕歌、これからもよろしく頼むぜ」

「呼び捨てはちょっと違うわね。夕歌さん、でよろしくね。葵ちゃん」

「仕方ないなー。ほいじゃ夕歌さん、とりあえず換金よろ」


 ここ数日でためこんだ魔石をトレーにドバドバと放出した。

 夕歌さんは目を丸くして驚いている。ふふん、我ながら結構がんばった成果だからね。驚かれてちょいと嬉しい。


「すごいわね、相変わらず高品質ばっかり。ちょっと待って」


 数が多いから、自動査定にも時間を要するみたいだ。雑談にはちょうどいい。


「実はいま中層の第十七階層を稼ぎ場にしててさ、今回はだいぶ儲かったんじゃないの? 最高記録を叩き出したんじゃないの?」

「もう十七階層まで行ってるの? いくらなんでも早くない? 大丈夫なの?」

「よゆー。全然、よゆー。私ったら、めちゃ強くなってるから。日々、強くなってるから。まさに、女子三日会わざれば刮目かつもくして見よって感じ?」

「じゃあだいぶレベルも上がってるんじゃない? 十七階層で余裕なら、そろそろサブクラスを意識する頃よね」


 これがねー。めっちゃモンスター倒しまくってるけど、なかなかレベルが上がらない。


「なんかレベル上がりにくいっぽいんだよね、私。ハンパなく、いっぱいモンスター倒してんのにさ」

「あー、レベル10以降はクラスで結構、変わってくるから。似たようなクラスでも個人差はあるし、ひょっとしたら葵ちゃんは大器晩成タイプなのかもしれないわね」

「大器晩成?」

「そう。レベルが上がりにくい代わりに、ステータスが高くなりやすかったり、スキルを覚えやすくなったりするみたいよ」

「へえー、じゃあ私はもろにそれだわ。ステータスはヘボいけど、スキルがいっぱいあるし強いからね」


 それにしたって、必要な経験値が多すぎるように思うけど。それもやっぱりウルトラハードモードのせいなんだろうね。


「特にスキルの恩恵は大きいから、大器晩成タイプは悪くないと思うわよ」

「そんなもんかー。ちなみにレベル10の人のステータスって、どんなもんなん? 人によるんだろうけど参考に知りたいわ」


 私はレベル10の時点で、ステータスは全部20だった。レベル1の時には普通の人の半分だったから、どのくらい挽回できたんだろうね。


「レベル10だとクラスの影響は無視できないわ。それでもよければだけど……そうね、各ステータスは平均で50前後といったところかな? 強い人なら、さらにプラス20くらいあるかもしれないけどね」

「……は? 平均で50前後? マジで?」

「あ、お湯沸かしてたんだった。ちょっと待ってて」


 夕歌さんが席を外したところで、次元ポーチから身分証を取り出した。



■星魂の記憶

名前:永倉葵スカーレット

レベル:11(レベル上昇に必要な経験値:435,467)

クラス:はぐれ山賊

生命力:23(+880)

精神力:23(+990)

攻撃力:23(+1,100)

防御力:23(+880)

魔法力:23(+935)

抵抗力:23(+825)

運命力:539

スキル:ウルトラハードモード(試練を与える。ダンジョン難易度の上昇、難易度に応じた報酬獲得率アップ、成長率が難易度相応に変化)

:ソロダンジョン(専用のダンジョンに入ることができる)

:武魂共鳴(装備品が使用者と結びつき、レベルに応じて成長する)

:毒攻撃(攻撃時に毒ダメージを与える)

:星の糸紡ぎ(星魂紋の詳細が可視化される)

:状態異常耐性(状態異常への耐性を得る)

:カチカチアーマー(カチカチしたシールドを召喚する)

:キラキラハンマー(キラキラするハンマーが追加攻撃する)

:生命力吸収(攻撃時のダメージに応じて、対象から少しだけ生命力を吸収する)

:念動力(念じることより物体に干渉する)

クラススキル:拘束具破壊(拘束具を簡単に破壊できる)

加護:弁財天の加護(魅力・芸術能力・財運アップ。五頭龍をソロ討伐し弁財天に認められた証)

:厄病神の加護(災厄を返し悪因悪果を与える。疱瘡悪神ほうそうあくしんをソロ討伐し厄病神に認められた証)



 まだレベル11だ。この3日で格上のモンスターをめちゃくちゃ倒しまくっているのに、なかなかレベルが上がらない。

 レベルが上がりにくいのは大器晩成タイプということで納得するとして、基礎ステータスだよ。

 普通は平均で50前後、でも私は23しかない。半分以下!


「全然、挽回できてねーわ!」


 むしろ差が開いてんじゃねーか!

 大器晩成タイプが本当なら、レベルがもっと上がれば一気に追いつけるのかな。

 装備とスキルの恩恵で、とんでもない補正値が加算されているにせよ、基礎ステータスで負けているのがなんかくやしい。


 せめて戦いの技術では勝ってるから、と言えるようになりたいね。

 ステータスは平均以下でも、実力は平均以上!

 数字なんて関係ないんだよと、上から目線で言い放ちたいわ。


 装備やスキルに頼らなくたって強い永倉葵です、よろ!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >平均値の半分じゃねーか! まぁそのぶんアイテムでの補強がヤバいですからねぇ…他とは一長一短という感じでしょうか?次のジョブ次第ですね。 実際問題、葵ちゃんとトップクラスの冒険者…
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