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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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これからの目標!

 日本有数の人気ダンジョン、神楽坂ダンジョンはいつでも人でごった返している。

 それが深夜だろうが、早朝だろうが、休日でも平日でも変わらず、常に多くのダンジョンハンターで盛況だ。

 今日からは私もその内のひとりとなる。


 ホテルの食堂でパンをかじりながら、改めて目標の確認だ。


 まず欲しいのはお金。ずっと先の目標としてレベル20のサブクラス獲得はあるけど、お金を稼ぐ過程で経験値は勝手に稼げる。並行して進んでいくから、どちらを優先ということはないけど、より大事なのはお金だ。

 なにしろ私はいまだに住所不定の身。早くスマホが欲しいし、ちゃんとした自分の部屋だって欲しい。そして壷とか絵とか彫刻とか買って、どんどん飾りたい。


 当面の目標額としては、なんとなくで1億5千万円くらいでいいのかな。

 金額にちゃんとした根拠はないけど、タワマンの購入代金とそれにかかる初期費用、それと家具とか諸々合わせれば、かなりの額が必要になるのは間違いない。


 どうせなら不足なく、お金を用意したい。

 そのためには1億5千万円くらいかなと思っている。テキトーだけど。1億じゃ足りなくても、もう1億の半分くらいあれば足りるよね?

 いまの貯金は2千万円くらいだから、目標にはまだ全然遠い。


 次に大事なのはレベル上げとサブクラス。

 これはお金稼ぎと同時に進んでいくけど、望まないサブクラスになってしまわないよう気をつける必要がある。次は絶対に超絶カッコいいクラスをゲットしたい。


 だからモンスターとの戦いには、もっと気合を入れて、よりカッコよく、よりすごい戦士っぽく、私自身の戦闘技術を高めることも考えてやっていかないとダメ。

 武器やスキルに頼った力押しでは、超絶カッコいいクラスにはなれないと心得るべき。お金稼ぎの目標額とは違い、こっちはテキトーじゃダメだ。がんばっていこう。


「ふえー、このパン美味すぎるわー」


 焼きたてのパンのいい香りを堪能しつつ、三つ目のパンを手に取った。

 玉子焼きとソーセージとサラダもおかわりです。バイキングスタイルの食べ放題なんで、遠慮なく食べます。このホテル、ご飯が美味いわー。


「葵さん、美味しそうに食べる姿は可愛らしいけれど、しゃんと背筋を伸ばして椅子に座りましょう」

「はい、雪乃さん!」


 お昼ご飯に誘ってくれたホテルの受付のお姉さんが同席している。そしてマナーをうるさく注意される。

 でも牛丼屋で孤独に腹を満たす毎日を送っていた私としては、ちょっとうっとうしいと思う一方で、誰かとの食事を嬉しくも感じてしまう。

 マナーの改善はきっと私によい影響があると思えば、多少のお小言は積極的に受け入れていこう。



 食後の散歩と近所の様子を確認がてらに少し歩き、やってきました労働のお時間。

 現在時刻はまだ日の高い時間で、予想のとおり神楽坂ダンジョン管理所は混みあっている。


 立派な感じの装備を何度も見かけるけど、やっぱりレベルの高い奴らなんだろうね。

 どいつもこいつもグループでわいわいしていて、私のようなぼっちは全然いない。まあ、わかっていたよ。

 うーむ、友だち作るのはなかなか難しいのかも。


 とにかく、私は遊びに来たわけではない。労働をしよう。

 前回の時と同じようにまずは並んで受付を済ませ、これまた前回と同じように更衣室での着替えはせず、私服のままでダンジョンに突入した。


 なんだかたくさんのハンターに見られていた気がしたけど、オラオラと肩で風を切りまくって歩いたから、たぶんなめられないだろうね。隙のない完璧なデビューだよ。

 スキル『ソロダンジョン』についても隠す気がないから、人目なんか気にしない。


「やっぱ誰もいないダンジョンは落ち着くわー」


 つい数秒前までの混雑が、まるっとすっきり消えて気分がいい。ダンジョン突入時に感じる力の解放感みたいなものも合わさって、より一層の気合が入る。

 さっそく英国お嬢様風のお洋服を脱ぎ散らかし、いつもの戦闘装束へとお着替えタイムだ。

 真の自由を感じながら、いそいそと着替えて武器を持ち、とっとこ先へと進む。


 神楽坂ダンジョンでは第四階層までしか進んでいなかったから、最初はとにかく下の階に進むことを重視して戦闘は避ける。

 ホラー感あふれる江戸っぽい町のダンジョンを、ちょいちょい立ち止まっては地図を確認しつつ突っ走った。

 前の時にも思ったけど、私は結構ホラーに鈍感らしい。誰もいなくて薄暗い町並みも、そこらを骸骨くんが歩いていようと、怖いとは全然思わない。


 休憩をはさみながらも、猛ダッシュで三時間ほど突っ走れば、第十階層へとたどり着けた。転送陣に登録して、今日の最低限の成果を確保する。

 移動だけで疲れてしまったけど、ここからがお金と戦闘経験を得る本番の時間だ。


 東中野ダンジョンの第十階層、そこにいたウッドゴーレムくんは楽勝だった。同階層だから同じ程度の脅威と思われる骸骨くんを過剰に恐れる必要はない。

 ちょっとだけ戦ってみて、余裕そうだったら第十一階層に行ってみよう。そうなれば、いよいよ中層に足を踏み入れることになる。


「ま、とりあえずは第十階層の骸骨くんだね。ここのは足軽系? あんま強そうじゃないね」


 銀色の骨の骸骨くんが、赤茶色の薄くてボロい鎧や手足を覆う防具を身にまとい、同色の鉢巻を頭に巻いている。

 ちょろっと高いところに登ってモンスターを観察してみれば、この階層にいるのは刀か槍を持った足軽系骸骨くんばかりのようだ。


 ダダっと走って正面から足軽に近づいたら、反応を見ながらハンマーを横なぎに叩きつける。

 足軽の薄い防具は特に効果を発揮せず、胸の骨ごと砕いて光の粒子へと変えてしまう。


「うーん、余裕!」


 人間サイズの骸骨はゴーレムと比べて小さいし、耐久力も圧倒的に弱いと感じる。一応は同格のモンスターのはずだから、何か特殊な能力を持っているのかも。今後を見据えて、それも確認してみるかな。


 次のモンスターに近づいたら、まずは『カチカチアーマー』を展開して敵に攻撃させてみる。

 刀を高く振り上げた骸骨くんは、鋭い踏み込みと共に刀を振り下ろす。本格的な侍っぽい動きな気がして、モンスターのくせに普通に戦闘技術が高そうに思えた。ゴーレムくんとは違って、その点に怖さがある。


 防御シールドに攻撃が当たると、凄まじい衝突音と共にモンスターが持っていた刀が折れた。

 見た目以上のパワーがあるみたいで、強い防具に身を包んでいてもあれをもろに受ける気にはならない。しょぼそうに見えても、やはりウルトラハードモードのモンスターだ。


「なるほど、今度はこっちの番だよ」


 さっきのように一撃で倒すことはせずに、腕を狙ってハンマーを振り下ろす。

 圧倒的な速度の違いから、たった一匹のモンスターならどうとでも実験できる。まんまと腕を砕いた直後、まさにあっという間に砕いたはずの腕が元に戻った。

 かなりの再生能力で、いかにもアンデッドモンスターらしい能力だ。


「第十一階層以降は、このパワーと再生能力が標準なんかもね」


 注意しないと。

 倒せる敵は一撃で倒すにしても、今後は戦闘技術をもっと磨いていきたい。倒せるからといって漠然と倒すだけではダメだ。

 前の時もやったけど、経験値という数字以上の成果を意識しながらやっていく。


 そしてやがては、超絶カッコいいサブクラスをゲットしてやる。

 そのために、私はここに来たんだからね。

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>私自身の戦闘技術を高めることも考えてやっていかないとダメ。  武器やスキルに頼った力押しでは、超絶カッコいいクラスにはなれないと心得るべき。 動機は面白いしなんか余裕あるんですけど、心掛けめっちゃ素…
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