よく考えてみれば、それはそうなるのかも
魔石を換金してからお姉さんに長々と愚痴りまくり、そうしてからいつもの簡易宿泊所に移動した。
シャワーを浴びてさっぱりしたら、これまたいつものベッドに倒れ込む。
小さな電灯が照らす室内はとても静かだ。寝ようとしても、目が冴えてしまって寝付けない。
心の中で折り合いをつけたつもりでも、やっぱりせっかくのクラスが山賊だったことはショックだ。
それに次のサブクラスの時に、同じような失敗をしたら目も当てられない。今回、山賊になってしまった原因はちゃんと考えないと。
そうだよ、落ち込んでいる場合じゃない。
「なんでだろうね」
獲得するクラスは行動によって決まるパターンが多いらしい。
剣を使ってずっと戦っていた人は剣術士や剣闘士、槍なら槍術士、そうした武器にちなんだクラスを得るパターンが多いと聞く。
スキルで魔法を使っていた人なら主にその魔法の属性に応じた魔術師系になり、攻撃方法ではなく斥候のような行動をよくする人は密偵やら忍者やらになることもある。
クラスはいっぱいあるみたいだし、私のようにまったく意味不明な理由で決まる場合もあるらしい。
特に理由なく、私は山賊になったのかな? どうだろう。
私の場合には、ハンマーとブーツを使った超接近戦ばかりやっていたと思う。だから最低でも闘士みたいな、戦士系のクラスになるのが順当のはず。それこそ勇者とか。
しかもウルトラハードモードなダンジョンで、ずっとソロで戦っている私は並のクラスじゃないと勝手に思い込んでいた。
思い込んでもいいくらいの資格はあったんじゃないかと、いまでさえ思えてならない。
それともなんらかの行動によって、山賊が適当だよねと判定される要素があった?
ない、と思う。ないよね、だって山賊だからね。山賊的な行動ってなによ、いったい。
「あれ? え、ちょっと待って」
不意にこれまでの記憶が怒涛のように頭をよぎった。
冷静に考えてみれば、だよ?
私ったらまだ短いダンジョンハンター人生で、圧倒的に多くの時間を過ごし、モンスターを倒し続けたのが第十階層の山岳ステージだ。それはもう勘違いの余地なく、絶対に間違いない。
あの慣れ親しんだ山岳ステージのダンジョンでハンマーを振り回し、モンスターを倒してはお宝の魔石を集めまくった。もうザクザクとね。
おまけに最後のボス的巨大ゴーレムくんは、図らずも穴にハメた状態でトドメを刺した。罠にはめて殺したといっても過言じゃない、かもしれない。
それって、もしかしてだよ?
総合的に考えて、山賊っぽくはない?
山の中でモンスターを襲いまくって、たくさんのお金を稼いだ。
別に人を襲ったわけでもないのに、なんで山賊なのよと思わないでもないし、ふざけんなと思うけど。
でも私の行動って、山賊っぽいっちゃ山賊っぽい、かもしれない。
そしてソロで活動する私は、はぐれの称号を得るにふさわしい。そこは認める。
ゆえにクラスが、はぐれ山賊。
「マジかよ」
文句はあるけど、納得できる要素はあったかも。
いやいや、納得なんかできるかい!
ちきしょー、やっぱくやしいわ。
にじむようにぼやける視界の両目を閉じ、考えるのはもうやめだ。眠ってしまおう。
寝て起きれば、いつもの私としてまたがんばろう。
気持ちを切り替えて、お金を稼いでタワマンゲットしてやる。
そんでもってだいぶ先になるだろうけど、次のレベル20の時には絶対にすっごいクラスを取ってやる。
サブクラスとはいえ、この虚しさが少しは紛れるだろうともよ。
というかだよ。
いっそのこと活躍しまくって、山賊ってすげー、山賊にあこがれるわ、みたいになるのだっていい。
山賊への価値観を変えるくらい、私がすごくなればいい!
ハンターランキングだっけ?
スマホがないから見れないけど、そいつに躍り出てやろうじゃないの。
新進気鋭のダンジョンハンター、永倉葵スカーレットは山賊! その山賊が大活躍!
みんなのあこがれ、山賊ハンター!
おうおう、やってやろうじゃないのよ。その意気だ。
がんばるしかないじゃん!
章立てをするとしたら、ここまでが第一章になると思います。
残念なクラスを獲得した葵ですが、次のクラス獲得とホームレスからの脱却、そして新たな目標や出会いなど、ここからまた始まっていきます。
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まだ物語は始まったばかりです。次話からもよろしくお願いします!
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