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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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まだ失われていない希望

 あまりに残酷な現実に直面して途方に暮れた。

 嘆きの声を上げたところで現実が変わるはずもなく、身分証に記されたクラスは何度見てもそのままだ。


 はぐれ山賊


 山賊! よりにもよって山賊! あの山賊だよね? 盗賊的なあれだよね?

 待って、ほかに山賊って名前の立派な職業があるとかない?

 いやいや、山賊は山賊でしかない。ほかにあるわけねーよ、おい!


 ホントに私、山賊になったんか。


 激しい戦闘で荒れた山に座り込み、立ち上がる気力も湧かない。

 がんばった結果が、これか。山賊になるためにがんばったわけじゃないんだよ。

 なんかかっちょいい、すごい感じのやつを超期待していたんだよ。


 私ったらウルトラハードモードなダンジョンで、たったひとりでがんばってるのに。

 ああ、わかったよ。理解した!


「この世に、神は、いない!」


 永倉葵スカーレットは、16歳にして世界の真理を知ってしまったのです。

 二度と神なんかに祈るか、ぼけぇ!


 ふう、仕方がない。

 夢見る乙女とは違う私は、そろそろ現実を受け止めるよ。仕方ない、仕方ない。しょうがねえわ!

 山賊になっちまったもんはしょうがねえわ!


 改めて現実を胸に刻むため、身分証にはっきりと刻まれたクラスを睨み付ける。

 そういやクラスのことで頭がいっぱいで、ほかの部分は全然見ていなかった。

 節目のひとつのレベル10だからね、ちゃんと確認しよう。



■星魂の記憶

名前:永倉葵スカーレット

レベル:10(レベル上昇に必要な経験値:1,005,380)

クラス:はぐれ山賊

生命力:20(+800)

精神力:20(+900)

攻撃力:20(+1,000)

防御力:20(+800)

魔法力:20(+850)

抵抗力:20(+750)

運命力:536

スキル:ウルトラハードモード(試練を与える。ダンジョン難易度の上昇、難易度に応じた報酬獲得率アップ、成長率が難易度相応に変化)

:ソロダンジョン(専用のダンジョンに入ることができる)

:武魂共鳴(装備品が使用者と結びつき、レベルに応じて成長する)

:毒攻撃(攻撃時に毒ダメージを与える)

:星の糸紡ぎ(星魂紋の詳細が可視化される)

:状態異常耐性(状態異常への耐性を得る)

:カチカチアーマー(カチカチしたシールドを召喚する)

:キラキラハンマー(キラキラするハンマーが追加攻撃する)

:生命力吸収(攻撃時のダメージに応じて、対象から少しだけ生命力を吸収する)

クラススキル:拘束具破壊(拘束具を簡単に破壊できる)

加護:弁財天の加護(魅力・芸術能力・財運アップ。五頭龍をソロ討伐し弁財天に認められた証)

:厄病神の加護(災厄を返し悪因悪果を与える。疱瘡悪神をソロ討伐し厄病神に認められた証)



「あ、ステータス結構上がってんね。さすがレベル10だよ、クラスはへぼかったけど。最悪だったけど」


 全然上がらなかった基礎ステータスが、14から一気に20まで上がっている。

 これは喜ばしい。今後はこの調子で上がってくれるとありがたいね。


 次のレベルまでの経験値はちょっと異常だ。100万とか普通に要求されるようになったらしい。

 これはウルトラハードモードすぎないかい?

 もしかして、中層以降のモンスターがすごい数値の経験値をくれるとか? どうなんだろうね。


「でもって、初めてのクラススキルが『拘束具破壊』って。こんなん覚えてどうすんのよ」


 手錠とか縄で拘束された時に、その拘束具を簡単に破壊できる能力っぽいね。そもそも拘束なんかされないから。

 もしサツに捕まったとして、絶対に逃げ切れないからそんなことしないわ。おとなしく捕まっておくわ。


「ふわ~あ、疲れた」


 腕時計に視線を落としてみれば、草木も眠る丑三つ時というやつだ。真夜中。

 目標のレベルに到達した達成感よりも、がっかりした残念感のほうが強い。こんなはずじゃなかったのにーって、もういいや。

 連日、山岳ステージのダンジョンで戦いまくっていたから、いい加減に疲れがたまっている。

 ホントに疲れたわ。これ以上はやる気がしないし、キリもいいことだし店じまいにしよう。



 オフモードの芋ジャージに着替えて転送陣からささっと地上に戻り、静まり返ったダンジョン管理所を重い足取りで移動した。

 受付にはいつものお姉さんが、いつものように深夜のテレビ番組を眠そうな顔で眺めている。


「おーい、戻ったよー」

「葵ちゃん、お帰りー。レベル10にはなれた? クラスはどうだった?」


 こっちの気も知らないで、気楽な調子で聞いてくれるわねー。

 本来の予定ではここで自慢するはずだったのです。すんごいクラスになったんだぜって。そう言いたかったよ!

 でももう自棄やけだ。開き直ってやる。


「なれたよ、山賊にね! レベル10までがんばって、よりにもよって山賊にね!」

「山賊? 葵ちゃんが?」


 そうだろうとも。疑問に思うだろうともよ。

 不健康で全身ボロカスだった私はもういない。おまけに弁財天の加護によって、魅力アップしまくりだ。そんな美少女の私がまさかの山賊。誰ひとりの例外なく、世の中の全員が驚くだろうともよ。聞いて驚けよ!


「この世の不思議だよ、まったく。私のどこに山賊要素があったんだか。あっ、そうだ。待って待って! お姉さんさ、クラスチェンジってできないの? 山賊から変えたいんだけど! どうにかして変われんじゃないの? ねえ!」


 そうだよ、転職みたいな方法があればそれでオッケーじゃないの。

 もしかしたら、できるんじゃないの?


「なに言ってるの。変更なんてできるわけないでしょ」

「……だ、だよねー」


 わかっていたよ。はいはい、言ってみただけだから。


「でもレベルが20になったら次はサブクラスを獲得できるし、こっちは難しいと思うけどレベル50になれたら上級クラスに変わるわよ。大変だけど、またレベル20までがんばってみたら?」

「あんですと? サブクラス? 聞いてないんだけど」

「うーん、葵ちゃん。そのくらいは常識かな」


 あ、そうすか。


 でもそれって、まだ私が超時空勇者になれる可能性が残されているってことだよね。

 サブクラスで超絶スゴイのをゲットしてさ、それからレベル50の上級クラスでもっともっとスゴイのになれれば、いま山賊でも全然関係ないってことだよね。


 なんだよ、これからじゃんか。

 ふー、あぶねー。私のスタイリッシュでカッコイイ、ダンジョンハンター人生が終わったかと思ったよ。


 考えてみればまだレベル10だからね。

 こんな序盤で終わってたまるかって話よ。

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