これが運命の星!?
突風によって舞い上がった土煙が消え、巨大ゴーレムがその姿を現した。
仕切り直して殺し合いだと思いきや、なんともマヌケな姿がそこにあった。
巨大ゴーレムの体は魔法の矢に削られて、もはや原形を留めていない。
右腕は消失し、胴体部分も半分えぐれて消えている。胸部に収まった真っ赤な核がむき出しで、無事なのは頭部と左腕くらいだ。下半身は私の攻撃で開いたらしき穴に埋まって、哀れなモンスターは身動きもまともに取れない。
いまもボロボロと体が崩れ落ちているし、真っ赤な核は弱々しい感じに明滅を繰り返している。あれって、たぶん弱っているからだよね?
雨あられとぶち込んだ魔法の矢は、きちんと戦果を叩き出していたようだ。
やっぱり数撃ちゃ当たるし、当たれば勝てる。
もはや勝ったも同然じゃん!
「さらばだよ、ボスゴーレムくん!」
ここからの苦戦なんかありえない。逆転なんか許さない。
弱った敵を叩きのめしてトドメを刺す。そして待ちに待ったレベルアップだよ!
過去最高と思えるダッシュ力で山肌を駆け上がり、相棒のハンマーさんを握る手に力を込める。
対抗でもするかのように、手負いのモンスターが最後の力を振り絞って左腕を上に伸ばす。
遅い、遅すぎる。そんなんじゃ、成長した私は止められない。
ゴーレムくんが振り上げた腕を下ろす前には距離を詰め、スキル『キラキラハンマー』を発動しつつ左腕ごと核を打ち砕いた。
さらにハンマーの振り回しの勢いを止めることなく、一回転して頭部も粉砕、油断なく完全に破壊した。
「しゃーっ、おらーっ!」
光の粒子に変わっていく巨大ゴーレムくん。
たぶんこれでレベルアップしたはずだ。なんか達成感で胸がいっぱいな気持ち。こんな感覚は初めてかも。
なんせ100万以上の経験値を積み上げたんだからね。ホント、長い道のりだったよ。
とにかく、これで念願のクラスをゲットだよ。どんなすごいのをゲットできたか、わくわくが止まらない。
身分証に表示されるステータスを早く確認したい気持ちを押し込めて、妄想の時間を大事にする。これが許されるのは、いまだけだからね。
見ちゃったら、もうこの期待と未知へわくわく感がなくなっちゃうよ。
「あ、ドロップアイテムじゃん! これは幸先がいいわー」
光の粒子の中からポロっと落ちていくのが見えた。ボスっぽいのを倒したからか、想定外の報酬をゲットだぜ。
ゴーレムくんがハマっていた穴の底に降りて、転がっていた物を拾い上げる。
「えー斧かー、私には頼れるハンマーさんがすでにいるからねー」
手に入ったのは小ぶりの斧だった。見た感じはすごい地味。
使わない気がするけど一応、鑑定モノクルでチェックしてみるか。
■蜻蛉返し:投げた後に必ず手元へ戻る斧。
まさかの投げる用の武器?
しかも投げたら戻ってくるらしい。これは結構使えるかも。試してみる価値はありそうだね。
「というか。ハンマーさんもなんか、でっかくなってるよね? どう見ても気のせいじゃないよね?」
右手に収まるハンマーは、明らかに大きくなっていた。小ぶりな手斧サイズだったハンマーが、小ぶりとは言えないサイズ感になっている。たぶん重さも相応に増えている。装備品の補正のお陰で力持ちの私にとっては誤差だけど。
とにかく具体的には三十センチくらいだった柄が五割増しな感じになり、ぶっ叩く頭の部分も太く大きくなっていて強そうだ。
これはあれだ、スキル『武魂共鳴』の影響だろう。装備品が私の成長に合わせて強くなるとかいう効果だ。見た目にはわからないけど、ハンマーさん以外のブーツや魔法学園ルックなども強くなったんじゃなかろうか?
嬉しいね、私のレベルアップを祝福してくれているかのようだ。
さてと。そろそろだよ。
お待ちかねのクラスをご開帳といきましょうかね。
そろそろ、見ちゃいましょうかね!
「うおおおおおーーー、頼むぜーーー! なんかすごいクラス! なんかすごいクラス! なんかすごいクラス!」
運命の神へ祈りを捧げながら、目をかっぴらいて食い入るように身分証を確認した。
■星魂の記憶
名前:永倉葵スカーレット
レベル:10(レベル上昇に必要な経験値:1,005,380)
クラス:はぐれ山賊
レベル10がまず目に入って嬉しさがこみ上げた直後、次の行で我が目を疑った。それはもう夢か幻かと疑った。
見間違え? 目を閉じて開けて、目をこすってからもう一度見ても、そこにある文字は変わりない。
クラスのところにあったのは、超勇者でも次元闘士でも宇宙暗黒騎士でもないし、真・聖女でもない。
「うおおおい! さ、山賊? なんで?」
なんでなんでなんで?
「おかしいだろ!」




