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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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お山の番人

 毎日飽きもせずここ数日間、それも長時間におよぶ戦闘をひたすら繰り返した。

 ウルトラハードモードなダンジョンだからか、モンスターがいなくて困る心配がないのはすごくよかった。


 いくらでもいる。

 だから、いくらでも狩れちまうんだ! ひゃっほーい。

 ソロダンジョンはやりたい放題だよ。


 第十階層の魔石をゲットしまくったお陰で、お金はめちゃくちゃ稼げていて、なんと合計で1,700万くらい稼げてしまった。

 もう私の中で、お金の価値が暴落したわ。

 それでもタワマンの一括購入には遠いし、いまの私はレベル10になることに集中している。それに稼ぐ額が大きすぎるからか、なんだか実感も薄い。


 特にこれといって高い買い物をしていないせいもあってか、大金を得てもお金持ちになった感じが全然ない。やっぱ絵とか壷とか買わないとダメっぽいね。

 とにかく、いまはお金より経験値!


 広大なダンジョンの山岳ステージを舞台に駆けずり回り、手当たり次第に戦いを挑む。

 練習のために遠距離攻撃を仕掛け、接近戦では流れの中での攻撃パターンをいくつも編み出した。私は手も足も右利きだけど、左も割と使えるようになってきた。


 戦闘技術を向上させてくれる装備『瀬織津姫せおりつひめの指輪』の効果がきっと大きい。これまでの私は割とテキトーに戦っていたけど、意識して考えながら戦うことによって、これまでに使っていなかった力を引き出せるようになった気がする。

 レベルが上がらなくても身体能力的な意味で、ありとあらゆる能力が伸びているのが実感できる。たぶん、そんな感じ。


 移動と攻撃と防御。体の使い方と同時に、スキルの使用にも慣れるため、いろいろ試す。試しまくる。

 そういう意味で、これまでで一番がんばっている。


 もはや雑魚同然のウッドゴーレムくんをひたすらぶっ倒しまくった。

 たまに変種なのか、やたらと強いゴーレムくんも出たけど、いい訓練相手になってくれてとってもありがたかったね。

 お陰で私は数字にならないところで、結構レベルアップしたと思う。そしてついにだ。


「ふい~、きたきた! あと一匹!」


 ちょこちょこ確認していたステータスを見ると、次のレベルアップに必要な経験値がわずか86になっていた。

 あと一匹だけゴーレムを倒せばレベル10に至り、念願のクラスをゲットできる!


 私はやり遂げようとしているんだ。

 100万とかいうアホみたいな経験値を積み上げてやったんだ!


 もうあれだ。絶対に、誰もがうらやむようなクラスになれる。私はなれるよ、これ絶対。

 超勇者か超戦士か、スーパー大聖女か、はたまた宇宙大元帥か。時空暗黒騎士みたいな超すごくてヒールっぽいクラスもいいよね。

 よくわからんけど、ウルトラハードモードでがんばっている私は、なんかすごいやつになれるはずだ。

 きっと! たぶん!


 妄想の世界に入りかけたところで、なにやらゴゴゴゴ……っと地鳴りみたいな音が聞こえてきた。


「なにごと?」


 ダンジョンの中で天変地異など聞いたこともない。

 あ、初心者で物を知らない私が聞いたことないだけで、割と普通にある現象なのかも。


 雨も降っていないのに山崩れはないだろと思いつつ、念のため転送陣に向かって移動を始めた。

 すると進行方向の山がぐわっと動いたじゃないか。気のせいじゃない。

 まさかホントに山崩れ? これはマズいわ。


 全力で横手のほうに走って逃げたけど、どうにも様子がおかしい。

 立ち止まって様子を見ると、盛り上がった山肌が人型を形作りつつあった。

 うへー、わかったわ。


「あれってたぶん、ゴーレムが発生しようとしてる場面だよね」


 なにやら超巨大なゴーレムくんが誕生する瞬間らしい。すっげーわ。

 私がレベル10になるタイミングを計ったかのような、ボス的なゴーレムくんの登場だ。


「いいね! お前を越えて、私はレベル10になってやる」


 あんな大物をエサにできれば、すっげークラスをゲットできる確率も高まるってものだ。

 これはきっと運命の神様からの贈りもの。歓迎してやる!



 やると決めてしまえば行動は早い。

 とっとこ走って近づきながら、剛弓破魔矢の指輪から魔法の矢を放ちまくる。

 まだ変身中のゴーレムくんの事情なんか知ったこっちゃない。なんならアレが態勢を整える前に、核を撃ち抜いて終わらせたいくらいだ。


 ところが私の遠距離攻撃は、数日間の練習程度ではまだまだ命中精度が高くない。

 装備による戦闘技術の向上効果は、どうやら魔法の矢の扱いには適用されないらしい。

 それでも数撃ちゃ当たる!


 標的に当たるよりも、周囲に着弾するほうがずっと多い。でも変に威力が高いせいで、ドカンドカンと山の木々や土がぶっ飛んでいった。


「撃って撃って、撃ちまくれ!」


 地形が変わろうが知ったこっちゃない。どうせ私専用のソロダンジョンでのことだから、誰にも迷惑は掛からないし第三者が潜んでいる可能性だってない。


 指輪をはめた手をそれっぽく構えて、魔法の矢をどんどこぶち込む。

 ただのお試しや牽制じゃなく、本気でこれだけで終わらせるつもりで攻撃を続ける。

 装備品のお陰で私の精神力はかなり高い。まだまだいけるよ。


「うおおおおおおおおおおおお!」


 もっと命中率を高めたい。

 そうするためには簡単だ。近づけばいい。


 走って巨大ゴーレムに近づきながら、魔法の矢をこれでもかとぶち込みまくる。

 派手に巻き上がる土煙のせいで、もはやちゃんと狙い定めることは不可能だ。それでもあれだけの巨体だから、テキトーな狙いでもそこそこ命中するはず。


 なんとなくの攻撃で、やられてしまえ!


「あう、ぺっ、ぺっ!」


 急な突風が巨大ゴーレムくんのほうから吹き付けて、大量の土煙を全身に浴びてしまった。目にも口にも土埃が入って、さあたいへん。

 涙を浮かべながらもスキル『カチカチアーマー』を発動し、予感にしたがって緊急回避。その直後、私のいた場所に大岩がドスンと着弾した。


「おー、あっぶねー」


 あんな巨大な岩が当たったら、防御スキルごと押しつぶされてしまいそうだ。とても受けてみる気にはならない。

 さすがクラス獲得をはばまんとするボス的モンスターだ。なかなかやるじゃん。

 でもこいつさえ倒せば、クラスをゲットできる。


 わくわくするね。かかってこいや!

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― 新着の感想 ―
私は戦うにしても先にレベル10になって少しでも有利に戦いたい気持ちになったが、本物はこの大物でレベルを上げてレアなクラスを狙うんだなあ そもそも普通の感性ならこれだけ稼げれば深い階層に潜るより安定狩り…
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