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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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お得意様モンスター

 移動に次ぐ移動。山岳ステージのダンジョンはそれだけで大変だっていうことを、私はいま嫌というほど痛感している。

 ダンジョンは不思議なもので、下の階層に進もうと思っているのに、次の階層への入り口が山の上にあったりして意味がわからん構造に頭が惑わされる。


 ホントに合ってるよね? と不安にさせてくるのが厄介だ。こういう時に会話できる仲間がいればと思わずにいられない。

 ぼっちの弊害がもろに出てますわね。ソロダンジョンだから仕方ないけど。


 いまのところは順調に先に進めてはいるけど、登って降りてを繰り返すだけで疲れるし、うんざりもする。

 東中野ダンジョン、こりゃモンスターがどうの以前に山岳ステージの時点で人気が出るわけねーわ! 過疎ってて当たり前だわ。


 ただ、ありがたいことに毒蛇のモンスターはシャイなのか、移動するだけの私の前には姿を一向に現さない。

 万が一にも毒なんか受けたくないから、これはよかった。

 スキルの『状態異常耐性』を持ってはいるけど、積極的に試す気には全然ならないからね。


 なんせ私の『ウルトラハードモード』なダンジョンの毒蛇が、どんな恐ろしい毒を持っているか想像したくもない。

 絶対に、普通のダンジョンのより強力な毒に決まっている。そんなもんは避けるが吉というものよ。


「これは逃げではない! 積極的な前進なんじゃ!」


 だって私は先の階層に向かって進んでいるのだからね。毒蛇なんかお呼びじゃないのよ。


 せっせと山を登っては降りてを繰り返し、道なき道を地図を見ながら踏破する。

 無駄に広いけど木々がまばらで目印になる大木や大岩なんかもあるから、移動の最初にルートを考えておけば迷う心配はない。登山初心者には優しいことに、難易度の高い特殊な登山技術を要する場所も特にはなく、大変だけど普通に進んで行ける。


 登山上級者向けの険しい山でないことが不幸中の幸いだ。そんなのだったら、私は拠点を変えただろうね。

 それにどうやら私は地図の読める女子みたいで、これも非常によかった。

 もし遭難なんかしたら、ここは過疎ダンジョンだからシャレにならん。


「というかこれ、第十階層まで行かないと転送陣ないんだよね。そこまで行けない奴って、またこの道を戻るんだよね……?」


 マジかよ。考えただけでも面倒臭くて倒れ込みそうだ。

 ちょっと気合入れて、第十階層まで行けるようにがんばるしかない。



 ダンジョンに潜り始めてから、どれくらい経過しただろう。

 時間を気にすると気が滅入るから、目的を達するか、よっぽどお腹が空いたり眠くなったりしない限りは、時計を見ないことにしている。

 そうやって第六階層から始まった山岳アンド毒蛇ステージを、なんとか無事に駆け抜けることができた。

 ろくにモンスターと戦っていないのに、すっげー疲れた。


「やっとこさ第九階層! おーいるねー、ゴーレムくん」


 でかいモンスターだから、遠くからでも超目立つ。あちこちにめっちゃいっぱいいるわ。

 よし、元気出していこう。


 近づきながらゴーレムをまずは観察だ。

 事前の調べによれば、第九階層から現れるゴーレムはウッドゴーレムと呼ばれる樹木のお化けのような存在と聞いた。

 ウッドゴーレムは太くて長い幹に、これまた太い枝が手足のように生えた感じらしい。大きさは二メートル半くらいで、多少の前後はあって、特に大きいので三メートルくらいのはず。


 ところがどっこい。

 わかってはいたけど、ウルトラハードモードなダンジョンのウッドゴーレムは全然違った。


「木のお化けってよりは、木製の巨人って感じじゃん」


 大きさは普通のと変わらないっぽいけど、がっしり体形の人型だ。木のお化け風じゃなく、いかにもゴーレムって感じ。

 あのぶっとい手足から繰り出される攻撃は、まともに受ければきっとタダではすまない。

 私のレベルは8だから、この階層のモンスターは適正レベルよりもひとつだけ高い。最初は手加減なしに全力でやる。戦闘じゃい!


 走って近づくと、だいぶ手前でゴーレムに気づかれた。

 遠距離攻撃はないはずだけど、ウルトラハードモードで油断は禁物だ。あるかもしれないと考えて行動しよう。

 警戒してモンスターの動きを見逃さないようにしつつも、ぶち込むべき攻撃のためハンマーを構える。


 速度を上げて接近だ。

 ウッドゴーレムは見た目のとおりに動きが鈍い。これなら先手を取れるね。


 ドシンドシンと鳴り響く力強いモンスターの足音は、きっと普通の感覚で聞けば怖気づくようなものだろう。

 でも戦う時の私は不思議と恐怖を感じにくい。やってやるぞと力が湧いてくる。

 叩きのめしてやるぞと、気合が湧いてくる!


 近づくほどにゴーレムの巨体を大きく感じはするものの、やっぱり恐怖はない。

 むしろ一段と速度を上げて、最接近距離に詰めた。

 ウッドゴーレムくんは遅い。立ち止まろうとする挙動、敵を殴り倒そうとする挙動、すべてが遅い。すんごいパワーがあっても、当たらなければ意味はないのだよ。


 振り回そうとする右腕とは逆の左側に回り込みつつ、ハンマーを太い脚に叩きこむ。

 キラキラ光る謎の魔法的なハンマーが追撃するスキル、その名も『キラキラハンマー』での攻撃を食らいな!


 生木を粉砕する音と共に、ウッドゴーレムが倒れ込む。

 左脚の付け根部分をえぐり取るつもりの攻撃は、腰の部分から脚の半分をごっそりと破壊した。

 でも、これで光になって消えはしない。ゴーレム系のモンスターは、核と呼ばれる部位を破壊しなければ死なないと聞く。

 頭か胸にあるはずの核を破壊するべく、うつ伏せに倒れたウッドゴーレムにトドメを刺す。


「どりゃ!」


 倒れた衝撃で身動きのできない一瞬の間も置かず、ジャンプからのハンマー振り下ろし。

 胸と頭を続けざまに破壊してやれば、まんまと核を破壊できたようだ。ウッドゴーレムの巨体が光の粒子となり、小さな魔石だけを残して消えた。


「ふう。装備とスキルのお陰はあるけど、それでもやっぱ私つえーわ」


 握りしめたハンマーをぶんぶん振りながら、いまの戦いを脳内で振り返る。

 うん、どう考えても完勝だった。スキルを使うまでもなかったね。

 ここで戦うのが厳しいようなら、上に戻って毒蛇でレベル上げする感じだったから、これはよかったわ。


「なんなら第十五階層くらいまでいけんじゃね?」


 たぶん。東中野ダンジョンは、ここからしばらくはずっとゴーレム系のモンスターしか出ないから、機動力に劣るあいつらはやりやすい。でっかいモンスターは目立つから不意打ちもされないからね。

 変にすばしっこいのや気持ちの悪い虫系を相手にするより、よっぽどいい。


 移動でちょっと疲れたけど、まだバリバリいくぞ。

 お金と経験値を私によこせ!

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