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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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悔い改めた敗北者

 電車に揺られる間、私は大いに反省した。

 ギャンブルで稼ごうなんて、世の中舐め腐った甘ちゃんの考えだった。


 ほんの少し前の私は、8,000万円相当のお金を手に入れるヴィクトリーロードを目前にしていた……かもしれない状況だった。

 そんな夢のような話は泡のように儚く消えてしまったわけだけど、ああそうだとも。世の中、そんなに甘くない。

 ちょっと稼げるようになったからって、調子に乗りまくったアホで愚かだった自分をののしりたい。


 バカバカ、私のアホ!

 丁半博打の当たりだけで帰っていたら、丸儲けだったのに!

 いや、違うそうじゃない。楽して儲けようなんて、そんな考えだから結局は損をする。


 私はダンジョンハンターだ。新米といえども、立派な職業のひとつであるダンジョンハンターなのである。

 ハンターらしく、ダンジョンでお金を稼いでいくとしよう。そうしよう。


 よっしゃ、心機一転だ。

 ちょっと気分転換したら、労働に励もうではないか。


 安心感を覚える東中野に戻ったら、まだ夕方には少し早い時間だけど牛丼を食べて腹を満たし、銭湯でリフレッシュ。

 これで準備は万端だ。バリバリ働くぞ。


「たのもー!」


 いつものように、閑散とした東中野ダンジョン管理所だ。

 職員以外に誰もおらんね。今日も平和だ。


「こんにちは、永倉さん」

「おいすー、おっさん。今日も元気に稼いでくるわ! ほい、身分証」

「菊川ですが、はい預かります……どうぞ、お返しします。しかし、今日はまた一段と元気ですね」

「浅はかだった私はもういないのだよ。マジメにがんばってくるわ」

「そうなのですか? お気をつけて」

「ほーい」


 今日はいつもより、ドバンと気合入れまくって超がんばるぞ。

 汗水たらして、労働で稼ぐのだ!



 第五階層への転送陣から私専用の『ソロダンジョン』に突入し、さっそく服を脱ぎ散らかして戦闘装束にお着替えタイム。

 めんどくさいから、アニメにみたいに一瞬でお着替えしたいわ。

 まったくもう。なんかのスキルでどうにかならんかね?


 魔法学園の制服ルックにロングブーツ、首飾りやら腕輪やら指輪やらを装着し、最後に頼れるハンマーを握りしめる。

 これさえあれば、私は無敵の戦士としてモンスターをぶっ殺しまくれる。

 ぼっちでたくさんのモンスターを倒しているし、きっとレベルが10になったあかつきには、すごいクラスをゲットできるに違いない。


 なんかもう勇者とか? 伝説の戦士的な?

 あ、ひょっとしたら聖女とかになったりして?


 なんかすごい聖女とかいう奴の話を聞いたことあった。私ったらよく銭湯に入るし、結構綺麗好きだからね。そんな清らかさを考慮すれば、聖女になってもちっともおかしくないわ。

 もう超聖女とか?


 とにかく楽しみだね。いまの目標は、お金稼ぎとレベル10になってクラスを獲得すること!

 よっしゃ、いくぞ。

 と、その前に、いまのステータスを確認しておこうかね。



■星魂の記憶

名前:永倉葵スカーレット

レベル:8(レベル上昇に必要な経験値:1,169)

クラス:―

生命力:13(+640)

精神力:13(+720)

攻撃力:13(+800)

防御力:13(+640)

魔法力:13(+680)

抵抗力:13(+600)

運命力:529

スキル:ウルトラハードモード(試練を与える。ダンジョン難易度の上昇、難易度に応じた報酬獲得率アップ、成長率が難易度相応に変化)

:ソロダンジョン(専用のダンジョンに入ることができる)

:武魂共鳴(装備品が使用者と結びつき、レベルに応じて成長する)

:毒攻撃(攻撃時に毒ダメージを与える)

:星の糸紡ぎ(星魂紋の詳細が可視化される)

:状態異常耐性(状態異常への耐性を得る)

:カチカチアーマー(カチカチしたシールドを召喚する)

:キラキラハンマー(キラキラするハンマーが追加攻撃する)

クラススキル:―

加護:弁財天の加護(魅力・芸術能力・財運アップ。五頭龍をソロ討伐し弁財天に認められた証)

:厄病神の加護(災厄を返し悪因悪果を与える。疱瘡悪神をソロ討伐し厄病神に認められた証)



 たしか、あれだ。

 第五階層だともうモンスターを倒しても、経験値が3くらいしかもらえなかったはず。

 とっとと次の階層に進むとしよう。


「今日の目標はレベル9、いや10に上がること。そして50万どころか100万稼ぐぞ!」


 地図を見ながら、スケルトンのモンスターは無視して第六階層に足を踏み入れた。

 そして、これまでとは違った光景にちょっと驚いた。


「あー、そっか。第六階層からは雰囲気変わるって聞いてたわ」


 広めの洞窟っぽいダンジョンから、急に開けた山に変わった。不思議な感じだ。

 ここからしばらくは山のダンジョンが続くことが、東中野ダンジョンが人気のない理由のひとつになっていると聞いた気がする。


 モンスターを狩ることを目的に山を登ったり降りたりするのは大変だし、親切な登山道があるわけでもないから、迷ったら大変なことになる。

 上層のここはまだ木々がまばらで見通しはいいほうだし、遥か遠くには次の階層への階段も見えるくらいだ。モンスターを探し回って変なところに行かず、階段の見える範囲を移動するだけなら問題はなさそう。


 ここがハンターに嫌われるのは、出現モンスターのせいもあるって話だ。

 情報によれば、東中野ダンジョンの第六階層から第八階層までは、毒蛇のモンスターがいっぱい出るらしい。

 毒を受ければそれ専用の治療薬が必要になるし、山の中だと不意打ちを受けやすい。そりゃ人気なんか出るわけねーわ。


「私も毒蛇ステージはスキップでいいや」


 地図を見ながら周囲を見渡すと、現在地は大きな山の中腹だろうか。第七階層への階段は、ずっと南方面の下にある。

 第六から第八階層までは毒蛇パラダイスが続き、第九階層から先はゴーレム系のモンスターばかりがずっと続く。山岳ステージはそのままに、硬くて耐久力の高いゴーレムは相手にするのが大変なんだとか。


 山のステージに加えて、毒蛇とゴーレム。東中野ダンジョンが人気ない理由はここに詰まっている。


 私には悪くなさそうだけどね。人が少ないほうが利用しやすいし、私のつよつよハンマーは特にゴーレム系のモンスターと相性がいいんじゃないかと思える。

 お宝のある隠し部屋の情報もないみたいだし、もう一気に第九階層を目指すぞ。

 もし第九階層で余裕があれば、転送陣のある第十階層まで視野に入れる。今日の私はひと味違うぜよ。


「甘ちゃんだった私は、もういないんだよ!」


 気合も新たにダダっと走り出し、次のステージに向かってまっしぐらだ。

 うおお、ギャンブルのことを思い出すとまったくもって腹立たしい。

 早くレベルアップして、嫌なことは忘れたい!

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― 新着の感想 ―
中々の鉄火場っぷりで草 火の女! 葵ちゃんどこへゆくのやらw
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