表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/210

【Others Side】急転の闇カジノ

【Others Side】


「あのクソガキ! 今日のシノギがパアじゃねえか!」

「得意さんには埋め合わせもしなきゃ、この先やっていけねえしよ。カシラになんて言われるか」

「大損こいたなんて、余所の組にバレたら笑いもんだ。冗談じゃねえ」


 本来なら賑やかな声で溢れているはずの闇カジノで、組の兄貴たちが逃げもせずに悪態をついていた。

 ガサ入れはどうなったんだ? 停電もいつの間にか復旧している。


「おい、タカシ。てめえが連れてきやがった、あのガキ。何モンだ?」

「待ってください、あのガキは谷村の兄貴の客ですよ。いや、それよりサツは? 早く逃げねえと」

「カマシに決まってんだろうが。ああでも言わねえと、追い払えねえだろ」

「竜崎さんの指示で監視してたんだよ。あのガキ、丁半からやけに勝ちまくってやがったからな」


 モニターでの監視はいつもやっていることだったが、まさか大勝ちされることの阻止に使ったのか?


「マジですか? なんだよ、それ」


 サツに捕まらずに済んで、正直ホッとした。

 だが、うちの組がそんな汚い真似をするとは思わなかった。いや、そんなことはしていなかったはずだ。少なくとも先月までは。


「タカシよ、なんか文句でもあんのか? ここは俺の仕切りだってわかってるよな。俺のやり方が気に食わねえってのか? あ?」

「いや、そんなことは」


 そうだ。今月から、この野郎の仕切りに変わっていた。何かにつけて、谷村の兄貴を敵視する変な奴。こんなのでもカシラ補佐だってんだから笑わせる。


「だったらその不貞腐れた態度はなんだ? 聞いてんだよ、コラ!」

「ぐっ」


 顔に食らった拳でふらつき、思わず膝をついてしまった。いきなり殴りやがって、この野郎。


「おい、あのガキは谷村の客だとか抜かしやがったな? なんだお前ら、俺に喧嘩売ってんのか?」

「竜崎さん、やめとけよ。俺も見てたが、あのガキは別にイカサマなんかやってねえ」

「うるせえ! 俺はタカシに聞いてんだよ。てめえと谷村、そんであのガキだ。つるんで、俺の仕切りにケチつけようって腹なんだろ? ああっ」


 クソが、好き放題に蹴りやがって。密かにブロックし続ける腕が、かなり痛む。


「タカシよ、本当にわかってんのか? あのガキが、8,500万の勝ちで引くとでも思ったか?」

「だ、だから、もし当てられたとしたって、そこを繋ぎとめて、少しでも取り戻せば」

「そうじゃねえって言ってんだよ。本当に知らねえのか? タカシよ、お前あのガキの目ぇ、見てなかったのか?」

「ガキの、目?」


 ……意味のわからねえことを言いやがって。


「どういうことだ、竜崎さん」

「お前らもわかんねえのかよ。あのガキはよ、只モンじゃねえ。谷村がどっかから連れてきやがった凄腕だ。あんな目ぇした奴が、8,500万で引くだと? そんなわけがねえだろ! ああでもして追い出さなかったら、下手すりゃ、あそこからまだ二倍や三倍はやられたぞ」


 そんな、まさか。あんなガキが。


「だとしても客を全員、カマシてまで追い出すことはねえでしょう。ガキだけ連れ出しゃあ済む話じゃないですか」

「あ? 谷村の連れをか? あんなガキに勘弁してくれって、俺に頭下げろってのか?」

「いや別にそんなことは」

「そもそも勝ちまくってるあのガキに因縁つけてみろ、ほかの客が逃げちまうだろうが。なんにしても、俺のメンツは丸つぶれだ。タカシよ、どうしてくれんだ。クソが、谷村はまだ戻らねえのか?」


 そう言えば谷村の兄貴、集金袋持って消えた松井さんを追って、それっきりだ。


「待ってくれよ、竜崎さん。タカシの奴もそうだが、あの谷村さんが妙な仕込みをするとは思えねえ」

「だったらあのガキは何なんだ? 谷村は戻ってこねえしよ。そうだ、タカシよ。あのガキのガラ押さえろ」

「……それで、どうするんです」

「お前と谷村があのガキとつるんで、俺に喧嘩売ったわけじゃねえって証拠を見せろ。それさえできりゃあ、あのガキに今日のツケを払わせるだけで勘弁してやる」


 あれは若い女だ。どうにでもカネに変えられる方法はある。竜崎のクソ野郎は、そうしたルートをいくつも持っているとの噂だった。

 その噂を耳にするたびに胸くそが悪くなっていたが、その噂は現実になろうとしている。よりによって、俺が片棒を担がされてだ!

 だが、若い女を金に変えるなんて、そんなことを谷村の兄貴が許すわけがない。


「タカシ、竜崎さんの言うとおりにしろ。急げばまだ駅のあたりで追いつくかもしれねえ」


 こいつら、本気で言ってんのか?

 あのガキが凄腕? 谷村の兄貴の仕込み?


 そんな馬鹿な。竜崎の野郎こそが、兄貴をハメようとしていると考えたほうがまだ納得できる。

 だがこの場で逆らっても意味がない。

 どうする? そうだ、とりあえずは兄貴を捕まえて相談しよう。


「わかりました。追いかけます」

「いいか、逃げられたじゃ済まねえぞ? 絶対に連れてこい」


 答えずに裏口から隠し通路に出ると――その時だ。

 扉を閉める瞬間、いくつも重なる怒号を耳にした。


「サツだと? ガサ入れはカマシだって話じゃあ」


 思わず閉めた扉に耳をつけると、今度は扉の向こうで乾いた破裂音が聞こえた。

 これは、銃声? 間髪入れずに次々と聞こえるこれは間違いない。続けざまの銃声に背筋が凍る。


 サツとの銃撃戦だと? まさか本当に踏み込まれたのか。

 しかしいったい、何をやっているんだ!


 マズいな。こんなところにいたら俺まで捕まる。

 馬鹿の巻き添えはゴメンだ。

 とにかくここから逃げて、まずは兄貴と合流、先のことはそれから考えよう。


 クソが、なんだってこんなことに。

 この肝心な時に兄貴はいねえし、今日はとことんツイてねえな……。

横道にそれましたが、次話からまたダンジョンに戻ります。

※OthersSideは基本的に単発のお話であり、葵視点の裏側の出来事や、物語を補強するエピソードとして時々差し込む形になっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ああ、疫病神の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ