高火力の全力戦闘!
黒い天使はそこそこ速い移動スピードだけど、まだ距離があるね。
いったん集まって、急いで相談タイムだ。
「厄介だな。私とまどかの銃撃には反応しなかったから、小さなダメージを積み上げるか?」
「入れ替わりをさせないためには、それしかなさそうですね」
「やっぱり一定以上の魔力を帯びた攻撃に反応するということかしら」
「だろうな。だがよ、その境目を探るのは手間がかかるぜ? それにダメージを積み上げるっていっても、細かい攻撃で倒しきれんのか?」
「難しいだろうな。あの能力にどう対応するかだ」
みんな難しそうな顔してるけど、簡単な気がするわ。
「先に金の天使をさ、全部ぶっ倒したらよくね? ここから見える範囲だと、どんなもんかな。20体とか30体とか?」
「一理あるが、金の天使も強力なモンスターだ。短時間での全滅を狙えば、それなりの消耗は覚悟する必要がある。その後に黒の天使をやれるか?」
まあ、やるなら分担かな。
「黒いのを倒そうと思うなら、やってみるしかねえんじゃねえか? 銀子はここから動かなくても『収束充填』と『弾丸操作』で金の天使なら倒せるだろ。瑠璃は『迅雷歩法』で移動して攻撃、まどかも『業火装填』か『魔杭貫刺』を使えばやれるはずだ。その間、残ったアタシらで黒の天使を引きつける。タイミングを見て葵が『黒縄』で拘束、やれるならそのまま倒す。これでどうだ?」
そうそう、それならいけそうだよね。
いちいち入れ替わってからの移動時間を待つのも邪魔くさいし。
「ざっと見て金の天使は30体はいるわ。3人でやるとして、ひとりあたり約10体。本当に消耗度外視の全力でなら、やれないことはなさそうだけど……」
「短時間での大技連発は、いくら回復速度が早くても余裕はありませんね」
ツバキの『魔力の天霊泉』は一気にドバッと回復じゃなくて、じわじわ回復系スキルだからね。それはそう。
「試すだけ試してみるか。ただ、入れ替わりの能力が視認可能な範囲外まで及ぶ場合は一時撤退だ。広大なフロアのモンスターをすべて討伐することはできない。私が『一望千里』で見える範囲の全滅を確認次第、葵が黒い天使を攻撃する。これでやってみるか」
「それでいこうよ。まずはリカちゃん、私が黒い天使に近づくからさ、それまで頼んだよ」
「はい。ずっとは厳しいですけど、そのくらいなら耐えられます」
みんなでうなずき合ったら、スポットライトが当たったままのリカちゃんを中心に動きだす。
沖ちゃんとマドカが離れて行って、銀ちゃんはさっそく『収束充填』ですごい魔力を高めている。
黒い天使が近づくまで待って、また100メートルくらいのところから黒い羽で攻撃を始めた。
リカちゃんがバッチリガードしてくれるけど、天使くんいっつもこれだね。つまらんやつだよ。
私が動き出す前に、銀ちゃんがさっそくすっごい威力の一発目をぶっ放した。
ちょっと遅れてマドカの銃の音と沖ちゃんの雷みたいな音の攻撃も聞こえた。
よく見えないけど、たぶん上手くいってるよね。金の天使はお任せだよ!
「いくよー!」
黒い羽の攻撃を横目にしながら、たったか走ってモンスターに近づく。
すると羽攻撃を中断して、こっちに剣を振りかぶったね。さっきと同じだ。それでもって、今度は私が引きつけている間にみんなも近づける。
でっかい剣をひょいっと避けて、続けて振られた攻撃も余裕で避けた。
威力はすごい感じだけど、パワーとスピードだけだね。剣術みたいなのは金の騎士のほうがずっと上手い。
隙がありまくるから殴りたくなっちゃうけど、微妙な威力の攻撃で入れ替わりが起こっちゃったら、また手順のやり直しだ。作戦通りしばらくは回避と防御に専念しよう。
そんなことを考えながら剣を避けたら、リカちゃんたちが追いついた。
ツバキの『たしなみの大結界』の範囲に入ったお陰で、天使の動きが見るからに遅くなったね。さらにまゆまゆの『耐性喰い』やツバキの梓弓の弱体化も入ったから、あとは金の天使がいなくなるのを待つだけだ。
金の天使をやっつける3人の攻撃の音が聞こえるたびに、私の攻撃の番が近づくと思えば、やり甲斐のある待ち時間だね。
そんなことを考えながら、しばらく天使の動きを観察しつつ、避けて避けて避けまくった。
攻撃の迫力はすごいけど、やっぱそんなたいしたことないなと思っていたらだよ。
「うおっ、なんだこれー!」
薄い青っぽい色のツバキの結界が、紫っぽい色に変わって薄暗くなった。
それと同時に体が重くなる。気のせいじゃないね。
「ちっ、天使が結界を発動させやがった。変な異常がねえか、各自確認しろ!」
マジかよ。モンスターも結界とか使うんだね。
ちょっと重い体で攻撃をひょいっと避けながら、感覚をたしかめるよ。
おー、これはたぶん、ステータスが弱まる系かな。天剣の奴らが使った聖域化だっけ? あれに似た感じだ。毒とかはない気がするね。
「力が弱まった感じはありますけど、スキルの使用は問題なさそうですよー!」
「ツバキは結界の維持に専念だ! 凶悪な効果が相殺されている可能性はあるぞ!」
呪符を投げようとしていたツバキが、銀ちゃんの言葉にうなずいた。たしかに、ちょっと怖いね。
ツバキはいま使ってる『たしなみの大結界』のほかに、新しく覚えた『清浄結界』があるけど、同時に二種類は使えないらしい。瞬時に切り替えとかできるのかな? まあいいや。
「たぶんステータスの弱体化だよ! 銀ちゃんは離れたほうがいいかも!」
このままだと金の天使を倒すのに、余計な力を使わないといけなくなっちゃう。
「ああ、私は結界から離脱する。引き付けておいてくれ!」
さっそく銀ちゃんが離れて行ったけど、私とリカちゃんの守りがあれば大丈夫。なんて思っていたら、天使がでっかい剣に黒い炎をボワッとまとわせた。
「なんかやばそう!」
「葵ちゃん!」
リカちゃんじゃなくて私のほうに黒い炎の剣が迫った。剣だけなら余裕で避けられたのに、まとわりついている炎がこれまたでっかくて、完全に避けるのはムリっぽい。
あの炎、ちょっとやばそうだよね。
「やられるかーっ、ほい『ぬるぬるアーマー』!」
名前はカッコよくないけど、頼りになる防御スキルだ。すごい迫力の攻撃だって、にゅるんと防いでくれちゃうよ。
ところがどっこい、まんまとやれたと思ったら。
「うおっ、燃えちゃってるよ!」
私の超ぬるぬるしたシールドは役目を果たしてくれたけど、黒く燃え上がっている。火なのに熱くないから、たぶん特殊な魔法っぽいやつだ。
シールドを消したら火も消えたけど、これってやばくね?
こんなの防いでリカちゃん大丈夫かなって思ったところで、天使が燃える剣をぶん回してリカちゃんの盾にぶち当てた。すると予想したとおり盾が燃え上がる。やっぱ特殊な魔法っぽいわ。
「リカちゃん、魔法の盾を消したら消えるよ!」
「あ、本当! でもスキルは発動時が一番消耗するんですよねえ……」
私のシールドと同じように、リカちゃんは盾を魔力で拡張して分厚くでっかくなった部分を消したら火も消えた。
黒い炎は結構やばそうな雰囲気あるけど、燃えたら消すを繰り返せばなんとかなりそう。疲れるけど。
「まだだ、なんかやってくるぞ!」
まゆまゆの警告と同時くらいにやばい予感を覚えて、急いでリカちゃんの盾の後ろに避難した。
ささっと隠れる寸前に、天使が二対の黒い羽をまたバサッと広げたのが見えた。
そうしたら結界の中に黒い羽を飛ばしまくって、それが突き刺さった地面が燃え上がる。黒い炎の海だ!
しかも羽を無限に飛ばしまくって、全然途切れない。
この黒い炎は熱い感じはしないけど、さわったらめっちゃやばそうだ。
リカちゃんの盾でもずっとは耐えられないし、これどうすんだよ。
一緒に隠れたツバキとまゆまゆも、どうしたもんかと困った顔をしているわ。
マジでどうしたらいいんだよ。
「まゆまゆ、私の『黒縄』で攻撃しちゃう? 金の天使と入れ替えたほうがよくね?」
「それも手だな。梨々花、まだ余裕はあるか?」
「もうヤバイです、もうヤバイです! 魔力が燃え尽きそうです!」
リカちゃんが焦るなんて珍しい。黒い炎はなんか魔力を燃やすっぽいんだよね。それを防ごうとしてスキルの発動をやり直すと、それはそれで消耗するし。
「よっしゃ、私もやるよ!」
ぬるぬるしたシールドをリカちゃんの盾の前に重ねて時間を稼ぐ。私のシールドは範囲がせまいけど、その分そこまで消耗しないからね。
「葵、梨々花、そろそろ銀子たちの討伐が終わる頃だ。あと少しだけ耐えろ!」
「あと少しだけですよー!」
「うちの結界も、このままだと破られそう」
「ツバキ、耐えろ!」
「それは耐えておくれー!」
こんな時にツバキの結界がなくなったら、黒い天使が元気になっちまうよ。そうなったらやばいよね? すぐに金の天使と入れ替えないと!
そう言ってる間にも私も『ぬるぬるアーマー』の大量生産で、マジ疲れてきた。もう結構やばい。
「本当に限界ですー! 葵ちゃん、あれ使ってくださーい!」
「わかったよ!」
うだうだ言っている間にやられちゃうからね。仕方ないわ。
「よし、ギリギリ間に合った! 銀子からの合図だ、遠慮なくやってやれ!」
「うおっ、マジで? どっちにしろこれが最後だよ! 必殺『黒縄』くらえー!」
余裕ないからね、魔法の盾越しにちゃんと見て必殺技を放つ。外しちゃったらやばいわ。
そんでもって焼けた魔法の鎖が――今度こそ黒い天使に絡みついた!
天使の黒い体をバサッと広げた翼ごとまとめて締め上げたお陰で、無限に飛ばしまくる攻撃も止まった。燃える地面の火もすすっと消えていく。これは一気にいくしかない。
「おんどりゃー! 必殺のダブルハンマーじゃい!」
必殺の鎖に焼かれる天使に、さらに必殺技の追加攻撃だ。
超パワーアップした『ギラギラハンマー』に『ビリビリハンマー』を乗せた渾身の一撃!
ドバンとすっごい勢いでハンマーを叩きつけたら、魔法のハンマーがドバババンと追加でぶち込まれた。
「葵、まだ油断すんな」
「ぐえー、つかれたー」
力が抜けちまったよ。完璧なフォローのまゆまゆに抱えられて、リカちゃんの盾の後ろに隠れた。
でも大丈夫。手応えあったからね。
盾越しでもちょっと見える光の粒子は、黒い天使をやっつけた証だ。
ういー、なんとかなった。
もうやばいんだけど。ホントに疲れたわ。




