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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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26/210

余計なものは売り払います

 やって来ました東中野ダンジョン管理所前。いつもの場所は安心するね。

 時刻は午後九時を少し回ったところ。やっぱり時計があると便利ですわ。うん、ちょっと嬉しい。


 リサイクルショップで見つけたこれは「衝撃に強く、汚れにも強い! ダンジョン探索のお供に!」との謳い文句だった。投げ売りされていたものでも、使えるなら全然いいよ。


 武骨でごつい感じの腕時計は、細腕の私にはどう見ても似合わないけど、必要なのは性能だからね。

 性能とおしゃれの両方を満たすものは、もっとお金に余裕ができたら手に入れよう。絶対。


「おいすー、お姉さん」

「葵ちゃん、おいすー。今日もダンジョン?」

「そうそう。稼いで部屋借りないと、スマホの契約もできないからね。じゃんじゃん稼ぐよ」

「じゃあ身分証貸して……はいどーも」


 返却された身分証を軽く自分でもチェック。

 早くクラスが芽生えるレベル10になりたいものだよ。そうすれば、低空飛行を続けるステータスの数値がどんと上がるかもしれない。



■星魂の記憶

名前:永倉葵スカーレット

レベル:7(レベル上昇に必要な経験値:126)

クラス:―

生命力:12(+560)

精神力:12(+630)

攻撃力:12(+560)

防御力:12(+560)

魔法力:12(+595)

抵抗力:12(+525)

運命力:528

スキル:ウルトラハードモード(試練を与える。ダンジョン難易度の上昇、難易度に応じた報酬獲得率アップ、成長率が難易度相応に変化)

:ソロダンジョン(専用のダンジョンに入ることができる)

:武魂共鳴(装備品が使用者と結びつき、レベルに応じて成長する)

:毒攻撃(攻撃時に毒ダメージを与える)

:星の糸紡ぎ(星魂紋の詳細が可視化される)

:状態異常耐性(状態異常への耐性を得る)

:カチカチアーマー(カチカチしたシールドを召喚する)

クラススキル:―

加護:弁財天の加護(魅力・芸術能力・財運アップ。五頭龍をソロ討伐し弁財天に認められた証)

:厄病神の加護(災厄を返し悪因悪果を与える。疱瘡悪神をソロ討伐し厄病神に認められた証)



 とりあえずは今日のダンジョン探索で、レベル8にはなりそう。

 また使えるスキル覚えられるといいな。

 あれ? なんかまた加護が増えてるじゃん。

 疱瘡悪神ほうそうあくしん? どのモンスターのことだろう。というか厄病神って、これ大丈夫なんかね。


「葵ちゃんさ、よそのダンジョンに行くって言ってたよね。それはどうなったの?」

「お、そうだった。よくぞ聞いてくれました。いろいろ取ったけど、まずは使わない装備品渡すわ。ほい、これね」



■深淵の番人刀ばんにんとう:精神力増強、抵抗力増強、闇攻撃増強、深淵の如き闇の力を宿す刀。

■竜騎士の槍勲章:攻撃力増強、槍の攻撃速度が向上するブローチ。



「へえ。刀とブローチ、特に刀のほうは相当な業物感出てるわね。思ったより『ソロダンジョン』ってすごいのね。売値については、本部と相談になるからしばらく待って」

「オッケー。ほかにも消耗品みたいなの手に入れたからさ、それも見てよ」

「いいわよ、出してみて」



どうのインゴット:銅の金属塊。

■ポーション:服用することで傷を癒す。

覚醒かくせいの書:ランダムにスキルを覚える。



 次元ポーチから次々と取り出していく。

 銅のインゴットは4セットで40個、ポーション瓶は2本、覚醒の書はひとつだけ。


「おー、これは面白いの手に入れたわね。覚醒の書はランダムにスキルを覚えられるレアものよ」

「ランダムってのが気になるんだけど。サクッと使っちゃっていい感じ?」

「やめておいたほうがいいと思うわ。運が悪いと呪いみたいなスキルが取れちゃうことがあるから」

「どういうこと?」


 呪いって。なんだそれ。


「いろいろあるけど、例えば『虚弱』とか『鈍足』みたいなスキルのことね。こういうのは基本的にレベルアップで覚えることはないらしいけど、覚醒の書を使った場合には低い確率で当てちゃうことがあるんだって」


 マジかよ。それは怖いわ。


「スキルって、覚えたら封印とか削除とかできないよね?」

「できないわねー。ただ、よくないスキルを引き当てる確率は低いみたいだから、使っちゃう人はそれなりに多いわよ。ダンジョン管理所としては、取り返しがつかないからお勧めしてないけどね」


 私ったらいまのままでも結構強いし、使わなくてよかったわ。

 待てよ、ここはさらに強くなれるチャンスが?

 いやいや、欲張るもんじゃないよね。私はせっかくいい感じのスキルばっかりなんだから。


「なるほど。ちなみにこれって売れるの?」

「レアものだから、悪くない値で売れるわね。ダンジョン管理所で買い取るなら、25万円。誰かほしいって人に直接売るなら、もっと高く売れるとは思うけど、それはやめたほうがいいかな。その人が変なスキル引いちゃったら、絶対恨まれるからね」

「あー、そういう奴っているよね。管理所に売るわ。ほかのは?」


 銅のインゴットの売値には期待しているよ。綺麗な金属のかたまりだしね。

 ポーションは自分用にとっておきたいけど、価値は知っておきたいわ。


「一応、鑑定してくるからちょっと待って」


 お姉さんはインゴットとポーションをひとつずつ手に取って奥の部屋に引っ込み、一分も経たずに戻ってきた。

 すでに覚醒の書の25万円だけでちょっと興奮しているけど、ほかのはどうなるかな。


「お待たせ。銅のインゴットはこれひとつあたり、1,040円で買い取れるわよ。えっと……全部で41,600円ね。ポーションのほうはひとつ18万円。全部買い取りでいい?」


 あれ、インゴットってそんなもん?

 綺麗な金属だったから、もっと値段がつくのかと思ってしまった。そういや銅で出来た10円玉を思えばそんなもんか。


「ポーションは取っとくよ。ちなみにこれって、どのくらいの傷なら治せんの? 死にそうになっても助かるとか?」

「具体的には難しいけど、全治三か月程度までの怪我ならすぐに治るわね。まあ程度にもよるけど骨折とか、靭帯の断裂とか、深い切り傷とかが該当するみたい。上級ポーションなら、瀕死の重傷でも治るみたいよ」


 おお、すっげえ。


「じゃあ、ハンターは誰でもほしがるね」

「一般の需要だってかなりあるわよ。ポーションがドロップしやすいって言われてるダンジョンもあって、それ狙いで活動してるハンターもいるくらいだからね。特に上級ポーションなら、売値の桁が違ってくるわよ」


 たしかに瀕死の重傷やらはともかくとして、骨折がすぐに治るなら18万円は安いものなのかもしれない。

 効率よく稼げるなら、いつか私もポーション狙いでダンジョンアタックしてみてもいいかもね。


「ポーションは多めにストックして、余ったら売ろうかな。あとは取っといた魔石、これ全部買取よろー」


 次元ポーチから、これまでの戦果を放出だ。

 ちょっと期待できると思う。


「うわー、またたくさん溜め込んで」


 お姉さんは自動査定する道具に次々と魔石を放り込んでいく。

 あれこれと雑談をしているうちに結果が出た。


「さすが葵ちゃんのスキルよね。魂石の代金は、332,800円ね。それと覚醒の書と銅のインゴットもまとめると、全部で624,400円。葵ちゃん、すごいわね」


 ふいー、62万か。マジかよ。

 昨日と今日の午前中の成果だけでこれ。私ったら、これ確実に富豪になれますわ。もう未来の大富豪よ。


「えっと、今回の稼ぎは全部貯金でよろ。ところでお姉さん。ハンターって、もしかしてみんなお金持ち?」

「そんなことないわよ。葵ちゃんはソロだから総取りだけど、普通は五人から七人くらいでパーティー組むからね。あれこれ経費もかかるし、それを引いて山分けしたら当然取り分は減るわよ。そもそも一回の探索で60万円分の魂石を集めようとするなら、ダンジョン下層に近い第二十五階層くらいが目安になるから、そこに到達するのも簡単じゃないわよ?」


 あの、それってつまり私の『ウルトラハードモード』なダンジョンは、上層の第四階層くらいで、すでに第二十五階層並みの難易度ってことじゃない?


 いや違うかな。私の場合はソロだし、条件がちょっと違うよね。

 実際のところ、普通のハンターと比べてどうなんだろ。

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装備のステータスの五十三分の一から四十四分の一くらいしかないあたり本当に装備に着られている……
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