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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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過酷な環境で再チャレンジ

 想定外のお金を払うことになって、全然納得できないままベッドに入った。

 腹は立っても、しょぼいベッドでも、夜になって横になれば眠れてしまう。健康!


「ういー、納得できねー」


 朝になっても納得できないものはできない。でも仕方ないのかな。

 あとで雪乃さんに電話して、お金のことは頼むとしよう。


 切り替えていくぞ。今日はダンジョンで青鬼くんに再チャレンジだからね。


 食堂に移動したら、昨日のめちゃくちゃな状態がすっかり消えていた。

 テーブルとか椅子とか新しい物に変わってるね。夜の間に掃除したのかな。すごいね。


 朝一の食堂はまだ人が少ないけど、みんな昨日のことなんかなかったみたいにメシを食ってる。あ、私をにらんでる奴がいるわ。

 でも昨日の今日で続きなんかやる気はしないよね。また弁償したくないし。


「おいすー、エリカ。高橋もおいすー」

「おはよ」

「よっ、眠れたか? 昨日は最悪だったな……」

「高橋はすぐやられてた」

「そうだったわ。レベル5のムショにいる割には弱っちくね?」

「あたしは情報通なだけで、腕っぷしでどうこうっていうタイプじゃないんでね」


 昨日のことはもういいよ。思い出したらムカついちまうわ。


「今日は超気合入れていくかー」

「葵はまたダンジョン?」

「うん、行ってくるよ。私はさっさとシャバに戻りたいからさ」

「あの試験をすぐに突破したのはたいしたものだけど、第二階層の発見はなあ……」


 てゆーか、すでに第二階層に到着しちゃってるからね。出所は確定なんだよね。

 あとは心残りがないように、モンスターをぶっ倒すだけだ。


 伝統的な感じがする朝メシをモリモリ食べたら、いざ労働の時間です。

 バリバリ働くぞ。



 ダンジョン管理所に移動したら、係の人が頼んだ物をちゃんと用意してくれていた。

 手袋と魔石カイロで防寒対策よし、いつもの装備よし!


 転送陣設置キットで、青鬼くんを倒した後はこれでサクッと帰れる。いい感じだ。


「ほいじゃ、いってきまー」

「待て、永倉。今日の探索予定は? 大まかな探索範囲と戻る時間はあらかじめ決めておけ」


 めんどくさいね。でもあれか、私が遭難しちゃっても大丈夫なようにって感じのやつか。


「おー、わかったよ」


 第二階層の階段まで走って2時間くらいだっけ。帰りは転送陣で一瞬だとして、青鬼くんにどれくらいかかるかな。

 ちょろっとしか戦ってないからよくわからんのよね。めっちゃ強かったから、すぐには倒せない気はする。


 どうかな、すごい時間がかかるパターンだってあるから、あんまり短い時間は言わないほうがいいかな。


「……えっと、今日は気合入れてがんばるわ。探索は階段から見て北のほうね。時間は長めで!」

「長めとは、8時間程度か?」

「ちょっとわからんけど、晩メシまでには戻るわ。早く戻る分にはいいよね?」

「早い分にはな。あまりに遅いと探しに行かなければならない。余計な手間をかけさせるなよ」

「永倉さん、遅れた場合にはペナルティがあるので、そのつもりでいてください」


 防寒対策しても、あそこは風が強すぎるしめちゃくちゃ寒いし、さっさと帰りたい場所だ。長引いてもなるべく早めに終わらせたいね。


「そもそもこの沖島ダンジョンで、いまさら個人がどれだけ探索しようが、何かしらの成果が上がるとは我々は期待していない。決して無理をせず、余裕があるうちに引き返せ。いいな?」


 いやー、成果ならもう出ちゃってるけどね。ホントは楽しみに待っててほしいけど、あとでびっくりさせてあげようね。


「わかってるって! いってきまー」


 刑務官の人たちは見た目はいかついけど、案外優しいわ。でも心配はいらないよ。

 よっしゃ、始めるかね。


 シャキッとする感覚を味わいながら、ダンジョンの大階段を駆け下りた。

 ここからは一気に第二階層まで突き進む。普通に走ったら2時間もかかるからね、だったら思いっきり走ってタイムを縮めてやるかな。体もあったまるし。

 手袋も魔石カイロもここではまだいいや。


「ういー、やるかー」


 暗闇と強い風、薄い空気に乾燥、不毛の荒野。こんなダンジョンも今日で最後と思えば、ちょっとだけ寂しく……はないか。こんな場所よりシャバに出てほかのダンジョンに入りたいわ。


 今日でおつとめは終わりだよ!

 マジの気合で、たったか走り出した。



 なんにもないダンジョンで、私の行く手を邪魔するものはなにもない。

 暗闇も風も関係ないからね。がんばって突っ走れば、予定を大幅に短縮して到着できた。こんなもんかな。

 第二階層への階段が消えるなんてこともなく、ちゃんとそこにある。岩陰でちょろっとだけ休憩して、さっそく乗り込むぞ。


 気合を入れ直して、さらに厳しい環境の第二階層に入り込んだ。


「ぐへー、やっぱ寒っ!」


 こいつは手袋とかなきゃ、もうやってられないね。

 いそいそと魔石カイロをスイッチオンにして、ちょっとあったかくなった。これいいわ。

 ただ風がきついね。前の時もだいぶ戦いにくかったし、どうなるかな。


「ま、ひとまずやってみるか。おりゃーっ!」


 黒いモヤモヤをまとった青鬼くんに向かって、頼れるハンマーを担いでゆっくりめのスピードで走り出す。


 あいつのどでかい剣での攻撃は、すごい威力だった。背が高くてがっしり体形の青鬼くんは、黒いモヤモヤでよく見えないけど防具はつけてなさそう。重い剣と体重で、強い風をあんまり気にした感じもなかったね。


 とにかくめっちゃ強かった。前の時は防寒対策してなかったし、手が冷たすぎて逃げちゃったけど今日は逃げない。やったるぞ。


 攻撃も前と同じことはしない。ちょっとジャンプしたら、それだけでも風に流されちゃったからね。なにもしてなくても風はきついけど、なるべく低い姿勢で戦おう。


 思った以上にスピードが出せない中、青鬼くんに迫る。最初の一撃はバシッと決めたい。


「おんどりゃー! いくぞ『キラキラハンマー』くらえっ」


 青鬼くんまで残り数歩を一気に詰めて、地面をこすりそうな低い位置からハンマーを繰り出した。

 実物のハンマーと、魔法のキラキラしたハンマーがいくつも青鬼くんに襲いかかる。こいつは防げないよね?


 迎え撃つ青鬼くんが速いことはわかってる。でっかい剣でハンマーが弾かれるのは、思ったとおり。でもいくつもの魔法のハンマーが青鬼くんを直撃だ。

 キラキラのハンマーは、雑魚モンスターならすぐ光に変えちゃうすごい威力がある。それが何発も!


「おー、そういう感じね」


 力強い剣で弾かれた勢いのまま、ちょっと距離をとって観察した。

 魔法のハンマーはいくつも直撃したのに、ダメージはそんなになさそう。防御魔法みたいなのは使ってないよね?


 かなりタフなモンスターなのかな。まあ、そういうタイプのやつだと思って、攻撃しまくるしかない。

 前の時は寒すぎて手の感覚がなくなっちゃったからね。今回は手袋と魔石カイロがいい感じだし、ちょっと普通に戦ってみようっと。


 青鬼くんはさっきのダメージなんかなかったかのように、ずいっと私に迫る。

 豪快な剣の振り下ろしだ。こんなの当たったら、死んじまうよ。


「ほいっと、あぶねー」


 風で思ったようには動けない中でも、華麗なステップで横に避ける。すると剣が地面に当たって、バゴンと割れた。えらいこっちゃ。

 でもそれだけ力の入った攻撃しちゃったら、こっちのチャンスだ。

 腰の辺りにハンマーを叩き込んでやろう。無理な体勢で避けようとしたって、逃がさないよ。


「ほりゃっ」


 よし、当たった!

 ドゴンとした感触を残しつつ、跳ね返ったハンマーを完璧に制御。回転しながら追撃だ。


「うおりゃーっ!」


 ちゃんとダメージは通ってる。タフでもこれならいつか倒せるわ。


「え、うわっと!」


 マジかよ。もう一発ぶち当てたと思ったら、突風で体が泳いでしまった。バランスを取る間にほら、やっぱきた!

 豪快で乱暴、でもすっごい勢いの剣が横からくる。

 やばいね。華麗なステップで避ける余裕はないわ。転がって避けて、さらに剣を振り回す猛追を避けるために、ごろごろ転がって距離を広げた。


「ぐへー、苦しいわ」


 無駄に動くと喉が渇くし、ちょい苦しい。

 思った以上に結構やばくね?


 倒すにはまだまだ時間かかりそうだし、どうしようかね。

 寒さはどうにかなったけど、風がマジでうっとうしい。

 だけどまあ、このくらいのハンデがあってちょうどいいのかな。


 そうじゃなかったら私、超強いからね。


 ムショのダンジョンの最後のお楽しみなのに、すぐ終わっちまったらつまらんわ。

 青鬼くんも、もっと気合入れてくれんとね。

 いい戦いをして勝ちたいわ。出所前の記念に!

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― 新着の感想 ―
倒したら新しい加護付くかな
更新お疲れ様です。 青鬼さん、ウルトラハードが発動してるからこの強さなんですかね? 戦闘フィールドが劣悪なのを差し引いて、もしスキルが発動してなくてデフォルトでこの強さとしたら…この刑務所の人員では…
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