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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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深淵ダンジョン見学と面会

 大階段を下り始めて、前を慎重に歩く高橋にエリカが引っついた。階段だし、めっちゃ歩きにくそう。

 いつも使う『ソロダンジョン』を発動しないのも、ちょっと変な感じするわ。


 だんだん暗くなっていくダンジョンの大階段をゆっくり下っていくと、風もどんどん強くなってきた。結構怖いね。


「うへー、この時点でだいぶやばくね?」

「下に行けば行くほど、風はもっと強くなる。それに完全に見えなくなるから、気をつけたほうがいい」


 ゆっくりペースをさらにゆっくりにして進み、やっと一番下まで到着した。


 ――その瞬間、体の奥がぐわっと熱くなった。


 うわっと思ったけど、すぐに落ち着いた。

 え、なんだったんだよ。このダンジョンのせい? やばくね? 大丈夫かな。

 とりあえず大丈夫っぽいか。まあいいや。


 それにしても風が思った以上に強いし、ちょっと寒いわ。


「真っ暗で本当に何も見えない。そもそも風で目を開けてられないし、平衡感覚がおかしくなりそう。息も苦しい。これで長時間の探索は無理」

「だろう? こんなのは余程の装備や道具をそろえた上で、かなりの人数が力を合わせてやっと探索が開始できる状況だ。過去の事例を考えて、とてもではないが挑戦する気になれないな」


 うーん? エリカと高橋はだいぶキツそうな雰囲気だね。

 でも私ったら加護の力で、暗闇でも全然見えちゃうわ。風も割と平気だし、息苦しいとかもあんまり感じないし……あ、これってたぶんあれだ、私の山賊のクラススキルだ。たぶん『荒野の生存者』がめっちゃ効きまくってるよね。


 過酷な環境に耐性が得られるとかなんとか、そんなスキルだったはず。あんまり意識したことないスキルだけど、たぶんすごい効きまくってるような気がしなくもないわ。


 だからかな。風の勢いはちょっとキツいし、乾燥が気にはなるけど、まあそれだけだ。私の頼れる装備で全身バッチリ固めれば、ステータス盛り盛りでもっと楽になると思うし。


 なんだよ、山賊スキルも役に立ってるじゃんね。


「そういやさ。次の階層ってどっちに行ったらいいの? それだけはわかってんだよね?」

「残された記録によれば、このスタート地点の階段を背にして真っすぐ行けば到着するらしい。ただ、過去の大規模探索では、丸3日間ずっと進み続けても、階段は見つからなかったって話だ」


 3日とか、マジかよ。ウソだったのかな?

 ホントに第二階層あるのかね。第一階層だけのダンジョンだってあるんだし、次の階層なんてやっぱないんじゃね?

 どうなんだろうね。たしかめるにしても、結構ムズそう。


「葵」

「なに?」


 風がすごいから、ひっついて話す。髪もバサバサして、この風うっとうしいわねー。


「葵は若手のハンターの中で一番。そんな葵は、ここを探索できる?」

「まあ装備があればいける気がするけどね。エリカはムリっぽい?」

「スキルの相性はいいと思うけど、環境がひどすぎて太刀打ちできない」

「え、相性はいいんだ。ちなみにどんな感じ?」


 どんなダンジョンでもモンスターでも、相性が結構大事なんだよね。


「恵梨香は温湿度制御の結界が張れて、酸素や水分の生成もできる。それに道しるべの設置もできる」


 なんですと? マジかよ。


「すごくね? まさにこのダンジョンの攻略に役立つスキルじゃん」

「でも長時間の維持が無理」

「おー、そっか。めっちゃ時間かかりそうだしね、このダンジョン」


 それは残念。一緒に攻略できるかと思ったのに。


「あたしも風を弱めるスキルが使えるが、同じ理由で断念した口だ」

「高橋も? なんだよ、もったいないね」

「逆にあんたはどうやって攻略するつもり?」

「そんなもん、気合だよ」


 私の場合はここで役立ちそうな加護もスキルも、勝手に発動してるっぽいからね。あとは気合だけだわ。


「くははっ、深淵ダンジョンに入ってまだそんなことが言えるのか。あんたやっぱり大物だ」

「まーね!」


 私ったら、いまの時点でも大物なんだから、この先は超大物で間違いないよ。


「葵、高橋、目が痛い。そろそろ出る」


 エリカが私たちを引っ張って、階段を上り始めた。

 風は強いし、乾燥するしで、長居したい場所じゃないよね。とりあえずは、どんなダンジョンかわかっただけでも収穫はあった。

 うん、目標があればやる気はどんどこ湧いて出る。いい感じだ。



 ――次の日。


 心の友が会いに来てくれた。


「うおーっ、マドカー!」


 遠路はるばるこんな海の孤島までさ、めっちゃ嬉しいわ。

 結局、私はムショにぶち込まれてしまったけど、マドカたちはなんやかんやといっぱい動いてくれたみたい。苦労をかけちまったもんだよ。


 この食堂みたいな面会スペースには、ほかにも面会中の人たちがいる。特に時間制限とかもないみたいだし、ここも割と自由な感じだね。


「久しぶりね……アオイ。大丈夫?」

「うん。まだそんなにケンカしてないし、心配ないよ」

「刑期が伸びた上に、レベル5の刑務所に移動よ? 急な話にみんな驚いたわよ」


 私もびっくりだよ。てゆーか、最初からレベル5のムショだったら、ケンカしても刑期伸びなかったんじゃね? ここはケンカしてもいいって言ってたよね? なんか納得できねーわ。


「でもダンジョン攻略すればさ、サクッと放免らしいから。私、サクッと攻略するわ。荷物持ってきてくれた?」

「刑務官に渡したから、あとで受け取れるはずよ。それよりこっちでも調べたけど、沖島ダンジョンてかなり難しいらしいわね」

「だね。でもやるしかないよ。4年半もこんなところにいたくねーし」


 普通にやばいよね。私ったらクランマスターなのに。将来有望なクランなのに、その将来があやうくね? ちゃんと考えたらさ。


「アオイが強いのはわかってるけど、無理はダメよ。いい?」

「そんなこと言われたってさあ、4年半だよ?」


 いや、マジで長いわ。なんかちょっとだけ実感湧いてきてんだよね。


「……そうよね。でもアオイの場合は起訴内容に疑義があるし、執行猶予が付かないことにも大きな疑問があったの。上訴も退けられてしまったしね」

「まったくもって、意味わからんわ」

「このままにしてはおけないわ。だからあたしたちも、まだあきらめないわよ」


 なんであれ、私のためにありがたいよ。


「マドカさんや、すまないね。みんなにも言っといておくれ」

「できるだけのことはするわ」

「それはそうとさ、みんなはこれからどうすんの? 私のためにあれこれしてくれんのはありがたいけど、そればっかりしてらんないよね。なんせ最悪は4年半だし」


 すぐシャバに戻る気だけど、ちょっと気になる。


「もちろん話し合ったわよ。花園のメンバーと、紫雲館と蒼龍にも相談に乗ってもらったわ。力を貸してもらえることになってるの」

「おお、そうなんだ」

「葵のこと以外だと、当面は以前のように各地のダンジョンを回る予定よ。第二十階層に到達するのを目安にして、よさそうな場所を探すの。それと並行して、新しいメンバーを入れようとも考えてるわ。アオイが戻った際には、花園が力を増しているようにね。どう思う?」


 ダンジョンの下層に挑戦するんじゃなければ、あんまりレベルは上がらない。たぶん、私の帰りを待ってくれてるのかな。

 いい感じの稼ぎスポットになりそうな場所を探してくれるのも、面白くて頼れる仲間を見つけてくれるのも嬉しいね。


「超いいと思うよ! みんなが選んだ仲間なら、私だって気に入るはずだし」

「そう、よかった」

「まあさっきも言ったけど、私はさっさと帰るつもりだから。そんな長くは待たせないよ」

「無理はダメだけど、期待はしてるわね」

「うん、期待しといてよ」


 マドカに会って、元気100倍になったからね。

 ホントの本気で攻略してやる。誰も先に進めないダンジョンとか、そんなの関係ないわ。


 そして夕方の船の時間になるまで、マドカにみんなのことを聞いたり、他愛もないことを話したりした。


 あれこれ話を聞いてみると、シャバではなんやかんや起こっているっぽい。よくわからんけど、このムショの所長が立て続けにクビになったり、世間を騒がす大きなニュースがあったりなんだり。

 私にはマジでよくわからんけど、世間様も大変みたいだね。


「――じゃあね、アオイ。また来るわ」

「嬉しいんだけどさ、しばらくはいいよ。ダンジョンに集中するし、寂しくなったら電話するから」

「そう? ツバキもみんなも会いたいって言ってるわよ?」


 面会に来られるのは1人だけみたいだから、全員とはなかなか会えない。


「だからだよ。マジでがんばるから、しばらくは大丈夫!」

「わかったわ。いつでも電話して」

「うん、ありがとね」


 マドカとまたお買い物とかしたいし、みんなでメシ食いに行きたいわ。

 牛丼屋の贅沢よくばりセットにラーメン、スペシャル大王ミックス、神楽坂のどら焼き……たまには寿司も食べたいね。

 いろんなダンジョンにも行きたいし、夕歌さんやセーラさんたちにも会いたいよ。


 うおおーっ、絶対攻略!

 どんなダンジョンだろうが、将来有望な新人ハンターならやってのけられるはず。

 超絶難易度だろうが、なんぼのもんじゃい。やったるぞ!

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― 新着の感想 ―
刑務所にいる間紫雲館とのウルトラハード貸し出しどう誤魔化すんかな
一緒にダンジョン入ったからエリカと高橋に新しいスキルが覚醒してるのでは こっちも新しい花園メンバー獲得か
更新お疲れ様です。 >荷物は刑務官に渡した 絶対まともに渡さない=中身パクろうとするゾ(断言) ゴミ虫政治家どもの息のかかった刑務官は無論の事、この掃き溜めの中にいる受刑者どもにも盗人野郎はいるでし…
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