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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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251/296

厄介者の巣窟

 顔は怖いけど親切な刑務官にあれこれ話を聞いた。

 とりあえず、どんなのだろうがダンジョンは楽しみ。


 やっぱり私は将来有望な新人ハンターだからね、どんな時でもそこに活路を見出すのだよ。

 ダンジョンのことを考えながら長ったらしい廊下を歩いていたら、小部屋が並ぶ場所に出た。


「そこがお前の独房だ。しばらくすれば大部屋に移動だが、その際に派閥は考慮される。なるべく早く決めておけ」

「やっぱ入らないとダメなんかね」


 めんどくせー。なんでそんなもんに入らないといけないんだよ。


「あくまでこの刑務所内だけの話だ。身を護るためにも、仲間はいたほうがいい」

「まあ考えとくわ。それよりもうお昼の時間だよね。食堂とかどうなってんの?」

「昼食は間もなくだな。食堂に案内してやる。こっちだ」


 おー、やっぱ親切な人だ。


「各施設の場所や食事の時間、ほか様々な規則は独房の中の冊子に書いてある。必ず確認しろ」

「ほーい」

「わからないことがあれば誰かに聞くといい。ではな」


 冊子は気が向いたら読むかな。怖い顔の刑務所のおばさんは、どこかに行ってしまった。


 さて、食堂は見た感じ品川の刑務所と似ているね。並んでメシを受け取って、好きな席に座って食べるみたいだ。そうすると、また席でケンカになりそうな気がするわ。


 あ、でもこのムショはケンカしてもいいんだっけ?

 だったらテキトーに座ればいいかな。とりあえずはメシだね。おとなしく並びますわよ。

 新入りだからか、私ったらすごい見られてる。なかなか注目されてるわ。


「うおー、里芋? 里芋の煮物じゃん。いいね」


 煮物がメインで漬け物と味噌汁にちょい多めのごはん。

 純和風のメシだ。普通にいいね!


 お盆を持ったままどこに座るかなーと思って周りを見ていたら、私と同じようにどうしたもんかと突っ立ったままの人がいた。新入りかな?

 髪の毛が超ロングなのはいいとして、目がギンギンなのはちょっと怖い感じだね。

 あ、目が合っちまったよ。でもあんまりフレンドリーじゃなさそうだからね、話しかけなくていいかな。とりあえず、空いてそうな場所に移動した。


 よいしょっと座ったら、ささっと両隣りに座る奴らがいた。

 しかもめっちゃ見てくるんだけど。なんだよこいつら。


「お前、絶望の永倉だな」


 いきなりなんだよ、絶望って。うちは花園なんだよ。


「全然違うわ。そんなの知らないよ」

「とぼけてんじゃねえぞ」

「その生意気そうなツラ、間違えるもんかよ」


 マジでなんなんだよ。腹立つわねー。


「私は花園の永倉葵だよ。花園なんだよ。わかった? 変な呼び方すんなよな、まったくもう」

「そんなことはどうでもいい。お前、のんきにメシが食えると思うなよ」

「覚えとけ。これからのお前はあたしらの子分として生きるか、ここで死ぬかだ。選びな」

「まずは亨介さんに詫び状を書け。メシはそれからだ」


 なに言ってんだろうね、こいつら。意味わからん。


「りょーすけって誰だよ。メシが冷めるだろーが、どっか行けよ」


 崇高なメシの時間を邪魔するとは、マジで許せん奴らだね。やっちまうぞ?


「こ、このクソガキ!」

「亨介さんへの、詫びが先だろうが!」


 うおっと。両側からお箸を握りしめた手が、目の前に迫ったもんだからびっくりした。どっちもパシッと受け止めたけど。


「あぶないなー」


 握った腕をぐいっと後ろに引っ張ってやったら、椅子から転げ落ちちゃったね。弱っちいね。

 これ以上、メシの邪魔されたら穏やかな私でもブチギレちまうからね。その前におとなしくさせようね。

 椅子から立ち上がって、転げたふたりのお腹を蹴っちゃうよ。


「おらよっと! ほいよっと!」


 結構強めに蹴っ飛ばしてやったからね。よっぽどの根性がないと、歯向かう気にならないだろうね。

 がははっ、私のメシの時間を邪魔するからだよ。さてと、メシメシっと。


「うおー、この里芋やっぱおいしいね」


 練馬の商店街の定食屋に負けてないわ。ムショもやるもんだね。

 モリモリ食べて満足! ふいー、食後の茶でも楽しみますかねー。


「よっ、ここいいか?」


 テーブルの向かい側から声をかけられた。金髪ショートのちょっと派手な人だね。ムショなのに染めるところあるのかな。地味にすごくね?


「別に私の縄張りじゃないからね、好きに座ったらいいよ」

「縄張りって意味じゃ、ここら辺の席は久保田派のもんだけどな。それより、そっちの奴らだ。大丈夫なのか?」

「なにが?」

「いや、なにがって。そいつら山城家の手先だろ? 山城家といえば関西の名家だが、その実、裏社会で一目も二目も置かれるヤバい家だ」

「ほーん?」


 そんなこと言われてもね、全然知らんわ。


「あー……いやマジか。自覚なし? あんた、永倉葵だろ?」

「そうだよ。将来有望な新人ハンターね、あと私のクランの略称は花園だから。そこんとこよろしく。キミは誰?」

「あたしは所内一の噂好きで通ってる高橋だ。そんなことより、ひとつ聞いていいか?」

「なに?」

「山城武人会をひとりで潰したって噂、あれって本当か? いま襲われた様子からして、どうやら本当のことみたいだけど」


 やましろ? あ、なんかあったかも。そうだよ、思い出したわ。マドカがくれた服を傷つけやがった奴らだよ。なんとか武人会とか、そんな奴らだったよね。それのことかな。


「うん、まーね! ちょっとムカついちゃったからさ、乗り込んだことはあったよ。あ、でも別に潰したとかはないと思うけどね。全員、ぶん殴ったけどそれだけだよ」

「……ひとりの女にカチこまれて負けた山城武人会は、そのまま解散して消滅したって噂だ。トップの山城亨介はショックを受けて、いまは東北の親戚の家に厄介になってるとか」

「へー、そうなんだ」


 超どうでもいいっす。


「当然、山城の本家が報復に動くって話になったが、ちょうどゴタゴタがあったみたいで、その話も立ち消えたらしい。そもそも厄介者だった亨介がおとなしくなったお陰で、本家の中には喜んだ奴らもいたみたいでね。だけどそれでも、山城武人会の消滅に納得してない連中はいる」


 せっかくの食後のお茶の時間に、ややこしい話するなよ。だいぶ意味わからんし、ホントにどうでもいいよ。


「ういー」

「ここには山城家の系列がまとまった派閥がある。あんた、今後も気をつけたほうがいい。聞いてるか?」

「まあ、わかったよ。よくわからんけど」

「あんた目立つからね、山城家以外の派閥にも目をつけられるはずだ。できれば仲間を作ったほうがいいが……山城と対立したくない派閥は、あんたを歓迎しないだろうな」


 私ったらめっちゃフレンドリーなのに、なんでそんなことになるのかね。


「めんどくせー。この辺の席は座っても大丈夫? メシの時にあんまケンカ売られたくないんだけど」

「久保田派は比較的に穏やかな派閥だし、新人をいびるような真似はしない。今後のことはわからないけど、しばらくは大丈夫じゃないか? いまも様子を見ているみたいだしね」

「そっか」


 やっぱムショなんて、さっさと出て行くに限るね。ダンジョン攻略して、早くシャバに戻ろう。


「困ったことがあったら何でも聞いて。あたしは、これでも新人には優しい女で通ってるんでね。それじゃ」


 金髪ショートの派手な女がいなくなったかわりに、超ロングで目がギンギンの人が目の前に座った。

 それでもって、めっちゃ私のことを見てくる。ケンカ売ってないよね?


「えっと、なに? なんか用?」

「新入り?」

「そうだね。今日、来たばっかだよ」

「恵梨香も。仲間」


 エリカ?


「私、永倉葵だよ。よろ」

「うん。葵、恵梨香は恵梨香。よろしく」


 なんか怖いな、こいつ。意外となれなれしいし。


「葵は何をやって捕まったの?」


 おお、ムショの中での会話っぽいやつだ! それっぽいわ!


「いやー、それがさ。私ったらなんも悪いことなんかしてないんだよ。完全に冤罪なんだよ。マジで許せんわ」

「本当に?」

「ホントだって。売られたケンカを買ったり返り討ちにしただけなのにさ、全然納得できねーわ。エリカはなにをやっちまったの?」


 目がギンギンのこいつは、ちょっと怖いからね。なにをしてても驚かないわ。


「……将来を誓い合った幼馴染に……浮気された」

「ほーん。それで?」

「半殺しにした」


 なるほどね。


「浮気相手も一緒に半殺しにした」


 あー、なるほど。


「その家族もまとめて半殺しにした」


 うーん……いやいや、さすがにそれはないわ。

 なんでそんなことになったんだよ。

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― 新着の感想 ―
人気者は刑務所でもなかなかぼっちになれないな
更新お疲れ様です。 やべぇ…893や反グレ以外の人間の中からガチ目のやべぇ奴が現れましたねww ある意味では葵ちゃんと気が合う可能性もゼロじゃない? それでは今日はこの辺りで失礼致します。
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