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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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ざくざくバッグが取れるダンジョン

 周りに人がいようがいまいが関係ない。

 いつものようにスキル『ソロダンジョン』を発動し、ぼっち専用ダンジョンに入る。こうしてしまえば、もう私だけの空間だ。

 完全なる自由の空間!


 さっきまで人のいたダンジョンの階段付近で、服を脱いだって関係ない。

 威風堂々としたお着替えの時間です。


「ヒャッハー!」


 専用ダンジョンだから。なんだってできちまうんだ!


 真の自由を感じながら装備を取り出し、いざ戦闘装束へ。

 魔法学園ルックの制服はやっぱりいい感じ。ループタイや腕輪のアクセサリーだってお気に入り。

 黒のロングブーツとハンマーのセットも含めて、全体的にかなりイケてると思う。

 装備をまとえばこれだけで強くなった気になって、テンション高まりまくり!


「ふいー、今日も暴れてやるぜ」


 相変わらず、ダンジョンなる不思議空間はすごい。この空間に入っただけで、頭も体もシャキッとして、力がみなぎってくるかのようだ。

 今回の目的も、とりあえずは隠し部屋でお宝をゲットすることから始めよう。いい物あるといいな。



 神楽坂ダンジョンの特徴は、なんといってもダンジョンっぽくないことにある。

 事前にちょこっと話には聞いていたけど、実際に体験するとなかなか面白い。きっとこれも人気の理由なんだと思う。

 なんせここは東中野や鷺ノ宮のダンジョンとは全然毛色が違い、ダンジョンというよりは古い町並みとしか表現しようがないダンジョンなのだ。


「おー、こいつはすごいわ」


 まるで江戸時代の日本にタイムスリップしたかような町並みで、でも人の代わりにモンスターが闊歩する薄暗い場所だからホラー感が強い。

 ハンターとしての実力さえあれば、お金のかかった大規模なアミューズメントパークのように探検ごっこで十分に遊べるだろう。


 しかも出るモンスターが上層から下層にかけてずっと骸骨系らしい。町並みの不気味さも合わさって、完全にホラーですわ。こういうのが好きに人にはたまらんだろうね。


 ホラーに興味がない私としては、最初の観光気分が抜けてしまえばいつもと変わらない。

 第一階層から第四階層まで、ほぼモンスターは無視してお宝を集めまくった。


 ただ、ここ神楽坂ダンジョンは私の望みにはまったく合っていなかった。

 私がほしかったのは、自分を強化できる装備か売れるもの。なのにゲットできたのは、次元バッグ系のアイテムばかりだ。

 いま使っているクリーム色のポーチ型とは、ちょっとだけ形や色が違うものを七個もゲットしてしまった。

 ポーチ型以外にもリュックやショルダーバッグ、トートバッグやハンドバッグまで、いろいろと集まった。


 隠し部屋のお宝だけではなく、たまたま遭遇したレアモンスターを倒して、また新たなバッグをゲット!

 コレクターじゃないんだよ、私はさあ。


「うー、もういらねー」


 お姉さんから次元バッグがドロップしやすいとか聞いた覚えはあったけど、まさかポーチやバッグだらけになるとは思わなかった。

 これが私専用の赤い葵のマークさえ入っていなければ、全部売っぱらえばそれなりのお金になっただろうに。


 ふう、でもホントに意味ないなあ。

 ゲットしたバッグの容量はどれもそこそこみたいだけど、いま使っているものに不満はないし、そもそも持ち物が少ない私にはバッグばかりがたくさんあってもね。


 しかも、よりどりみどりになったとはいえ、結局はいま使っているのが一番好みだ。変更予定なし!

 はあ、帰るか。



 第四階層の奥から上に進む階段に向かおうとして、なにやら寒気を感じて足を止めた。

 レベルはまだ7の初心者ハンターだけど、私はモンスターの討伐数ならそこらの奴に負けてない自信がある。しかもソロでだ。

 結構やってるだけあって、モンスターの気配には敏感だ。そして敵は気配を隠そうとしていない。そりゃ気づく。


「でもまだ遠いかな。どこだろ?」


 気配はすれども姿は見えず。わざわざ捜し出して戦うのは面倒かも。

 なんか強そうなモンスターの感じはするけど、ドロップアイテムが次元バッグ系なら別にいらないし。


「いいっ!? ちょ、マジかい」


 びっくりした。油断した。

 気がつけば魔法学園ルックの制服に、光の矢がぶち当たっていた。防御力が高いお陰で普通に弾いてくれたけど。

 いやいや、これ顔に当たってたら死んでたわ。


 ダンジョンに入るようになって、初めて命の危険を感じた。

 でもなんか、肝が冷えたと同時にたぎるわ、これ。

 やられっぱなしでいられるかっての。


 魔法っぽい光の矢が飛んできた方向を見れば、屋根の上に何かいる。そいつは弓矢を構えていて、次が射られた。


 スキル『カチカチアーマー』を発動。レベル7になって覚えた新スキルだ。

 カクカクした感じの透き通ったシールドが目の前に広がり、思ったとおりに矢を弾いてくれた。

 思えば遠距離攻撃を仕かけるモンスターとの遭遇は初めてだったけど、これなら問題ないね。


「屋根の上か、いいじゃん」


 洞窟型のダンジョンだと屋根とかないからね。町並みのダンジョンならではの構造だ。

 わんぱくに壁をよじ登って、瓦屋根をガチャガチャいわせながら謎のモンスターに向かって走る。気持ちいい!

 射かけられる矢はジグザグに走ることで全部避け、ハンマーを構えて迫る。


 近づいてみて、やっとどんなモンスターかわかった。

 立派な鎧武者姿の骸骨戦士だ。全身から立ち上る不気味な青と黒のオーラが、いかにもな強者感を主張している。

 ウルトラハードモードじゃなかったら、第四階層でこんなのが出てたまるかと思う強そうなモンスターだ。それでも。


「悪いね! 私は装備とスキルが、強いからっ!」


 至近距離で放たれた矢を華麗なステップで避け、瓦をまくり上げながら足元を強く蹴ってやれば、まんまとバランスを崩す骸骨戦士。

 下がった頭をハンマーでドカンと粉砕し、いっちょあがり。強そうなモンスターはあっけなく光の粒子となって消えた。

 やっぱ私ったら、結構やるほうだわ。


「おおー、さすが強そうなモンスター。ドロップが二つもあんじゃん」


 さっそくモノクルで鑑定だ。



■剛弓破魔矢の指輪:攻撃力増強、魔法の矢を放つ指輪。

■次元ルームの鍵:異次元の部屋に入れる鍵。



 指輪かー。効果はかなり良さげ。

 瀬織津姫せおりつひめの指輪と一角獣の指輪に続いて三個目の指輪だけど、遠距離攻撃ができる装備は貴重よね。これがあれば、モンスター狩りがはかどりそう。


 それと次元バッグ系の上位互換っぽいのを手に入れてしまった。


「やった、異次元のお部屋!」


 レトロな感じ満点の鍵だけど、さてどう使ったものかと思ったら、いきなり目の前に大きな扉が現れた。

 焦げ茶色の重厚感ある木製っぽい、和風の扉だ。その鍵穴に鍵を差し込んでみれば、ギギッと音を立てて開いた。


「うおー、でっけー!」


 ルームというくらいだから、普通にお部屋を想像していた。なのに、入ったそこはちょっとした体育館くらいの空間だった。

 床も壁も天井も焦げ茶色の木製っぽい材料で作られているのに、謎の光源によって適度に明るい。

 いろいろと使い道はありそうだけど、いまはいいや。


 いいものゲットしてテンション上がったけど、もう次元バッグ系のアイテムはいらないわ。

 神楽坂ダンジョンさんとは、おさらばでいいかな。


 あ、帰るのはいいとして、ダンジョンから出たら人がたくさんいそうだよね。

 変な奴がいなければいいんだけど……。

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