表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

203/208

フットワークの軽い自由業

 あいさつ回りと言っても、私があいさつしたいような奴はあまりいない。残念ながら交友関係がせまい! 我ながら超せまい!

 花園のみんなが情報収集に動いてくれる中、私だけ早くもやることがなくなった。


 マドカとツバキは関西の実家に行っちゃってるし、雪乃さんたちもどこぞのお偉いさんと会ったりなんだりしている。銀ちゃんたちは昔の知り合いをメインに会ってるみたいだから、私が行くと邪魔になってしまう。

 いや、もしかして邪魔じゃない? 邪魔じゃないなら行きたいね。


「もしもしー、銀ちゃん?」


 さっそく通話だよ。


「葵か、どうした」

「暇なんだけど。いまどこにいんの? そっちに合流してもいい?」

「いやダメだ。こう言っては何だが、私たちの情報源はあまり真っ当な連中ではない」


 マジかよ。そんなこと聞いちゃったら、むしろ気になるんだけど。


「おう、葵。アタシだ」

「まゆまゆ? あ、スピーカーモードってやつだ!」

「こっちはアタシらに任せろ。変わった奴らの多い業界だからよ、変なのに目をつけられたくねえだろ? 梨々花も苦労してるからな」

「そうですよ、葵ちゃん。わたしは人気があるので情報収集には役立てるのですけど、その分厄介事にもたくさん巻き込まれています。大変ですよ」


 うへー、ストーカー野郎とか?

 それはいまでも面倒だからね。もっと増えるなんて嫌だわ。


「私と梨々花が交渉役、まゆと瑠璃が護衛役で上手く回っている。葵が加わると、どうなるか読めん」

「ということです。葵はおとなしくしていてください」


 沖ちゃんまで。まあ邪魔になるなら仕方ないね。


「わかったよ。ほんじゃ、みんながんばってね」


 私もその情報収集の現場を体験してみたかったけどね。まあいいや。



 さて、どうすっかな。


 雪乃さんたちが会うお偉いさんは、ちょっと私向きじゃないよね。

 暇を持て余してしまうわ。こういう時、お買い物や散歩でもいいんだけど……なんかこう、乗り気にならんね。つまんないわー。


 あ、そうだ。こうなったらマドカとツバキのところに行こうかな?

 関西だけど、私ったら自由なハンターだし、お金もあるし。ついでにいまは時間もあるし。

 心の友の実家は気になるっちゃ気になるしね。実家に帰るとなんか忙しいのか、あのふたりったらメッセージの返信も遅くなるし、気になるわ。


 むしろあれだよ、なんで私を誘ってくれなかったんだよ。一緒に行ってもいいだろ。


「そうだよ、行っちまうか。マブダチのお家だし、別にいいよね」


 どうせならサプライズだ。いきなり突撃して、びっくりさせてあげようね。

 意味わからん事情で追い返されるかもしれんけど、その時はたこ焼きとお好み焼きを食べて回って観光しよう。私ったら立派な成人女性だから、ひとり旅だって全然平気だ。


「お家の場所はなんとなく聞いてるし、まあなんとかなるかな」


 そうと決まれば、さっそく準備だ。

 マブダチの実家だからね。私もオシャレに気合を入れちゃうよ。


 服はマドカがプレゼントしてくれたやつにしよう。英国お嬢様風の中でも、特に上品で落ち着いた雰囲気のやつ。

 薄紫の生地によくわからん花柄のワンピースは、胸元のリボンがいい感じ。大きめの白い襟とリボンがお上品ですわ。半袖だから暑苦しくもないし、マドカはセンスがいいよ。


 あとは高級なお靴に、靴下は新品にしよう。次元ポーチは肩かけにしてっと。お化粧もちょろっとするぞ。

 よっしゃ、こんなもんだろう。


「ほっほー、私ったらいい感じじゃん」


 我ながら決まっている。鏡に映った私はなかなかイケてるわ。

 これはマブダチの実家の人たちにもほめてもらえるね。


 さらに立派な成人女性な私は、地元の手土産も忘れない。

 商店街をうろついて適当にお菓子を買っていくよ。


「あら、葵ちゃん。どうしたの、普段と少し違うわね」

「お、わかっちゃう? さすがは美容院のお姉さんだね。ちょっといいとこにお出かけするんだよ」


 月に1回くらいはお世話になっているから、もう顔なじみの関係だ。フレンドリーだし、いい人だね。


「そうなんだ……葵ちゃん、少し時間ある?」

「んー、まあちょっとなら?」

「どうせなら髪型アレンジしない? いつもの髪型も可愛いけど、服に合わせて変えたほうが楽しいわよ」

「ほうほう、それはいいね。テンション上げていきたいわ。じゃあ、頼んます」


 お姉さんのお店でちゃちゃっとやってもらった。

 シンプルなボブから、やたらとオシャレ感ただようハーフアップへと!

 うおー、テンション上がるわ。


「見違えるほどバッチリ可愛いわよ。いってらっしゃい」

「ありがとねー!」


 たまにはいいね。服にも合う気がするし、やっぱプロはすごいわ。



 そうして、タクシーと電車を乗り継いでやって来ました。関西の地!

 タクシーの運ちゃんには、九条のお家に行ってねって言えば楽勝で到着できた。

 結構時間かかったけど、まだ夕方だ。その気になれば、これからお好み焼き屋に寄って家まで帰れる。


 まあできたら心の友のお家にお泊りしたいけども。いきなりだしね、無理は言わないよ。

 帰れって言われたら、めっちゃ食い下がるかもだけど。


 さてと、それにしてもだよ。


「うおー、でっかいね」


 練馬のクランハウスや蒼龍の家も立派だけど、田舎特有の豪快さみたいな? ちょっとでかすぎる。

 もう個人のお家ってよりは、どこぞの豪華な旅館みたいな感じだね。門なんかもう、巨人が通れるくらいじゃん。お寺とかお城のやつみたいだよ。


 その門は開いているし、ピンポンもない。これは勝手に入っていいのかな。門のずっと向こうにあるっぽいお家のほうに、ピンポンがあるんだろうね。たぶんそうだよね。


 どうするかなと思っていたら、ちょっと大きめの車が門の横手に停まった。

 もしかしたらこの家の人かな? マドカとツバキは乗ってないね。ちょっと離れた場所でなんとなく見守っていると、ピシッとした服のおっさんとおばさんが車から降りて、大きな荷物を持って勝手に門から中に入っていった。


「この家の人っぽくなかったよね?」


 たぶん、そんな気がする。車も外に停めてるし。あの大きな荷物を届けに来たとか、そんな感じなのかな。

 この門にはピンポンもないし、勝手に入っていいっぽいよね。よっしゃ、じゃあ私も入るかな。


「おじゃましまーす」


 とりあえず奥に行ってみよう。お庭の見物もしたいけど、まずはマドカとツバキだよ。


「誰ですか、ここは九条家の敷地です。勝手に入られては困ります」


 うおっ、びっくりした。

 急に声をかけられて振り向くと、険しい目つきの若造が庭木の陰から出てきやがった。なんだよこいつ、隠れてたの?


「えっとー、お友だちに会いに来たっす」


 誰よこいつ。マドカの兄ちゃんにしては、全然似てないね。警備員さんかな。

 まだまだ暑いのに、上下黒のスーツかよ。見るからに暑苦しいわ。


「お約束はされましたか? 本日、そのような訪問予定は聞いていませんが」


 サプライズなんだから、そんなことするわけないだろ。

 さっき入った人たちって、ちゃんと約束してたってこと? マジかよ。


「あー、約束ね。マドカとツバキ、呼んでもらえる? 私の心の友なんで!」

「お約束のない方をお取次ぎできません」

「いやいや。私ったら遠路はるばる……」

「お引き取りください」


 なんだよこいつ、ムカついちゃうわね。

 ちょろっと会うくらい別にいいだろ。なんなら今日は泊めてもらうつもりなのに。

 おめかしだってしてきたのにさ。


 これはあれか? この障害を乗り越えて、私は心の友に会いに行くべき?

 電話とかしちゃったら、せっかくのサプライズが台無しになっちゃうし。


「さあ、お引き取りください」

「いやー、マブダチに会いたいだけなんだよなー」


 ブツブツ言いながらいったん門のほうに向かうと見せかけて、横手のほうにダッシュ!

 がははっ、簡単に追い返せると思うなよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
電話しろよ
やりたい放題で草
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ