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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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200/202

気が遠くなるほどややこしい話

 私たちはハンターらしく、ダンジョンで働くのだ。

 ややこしい話が裏でうごめいていても関係ない。昨日も今日も労働!

 そんな日々を過ごしていたらだよ。


「雪乃さん、なんか深刻な話をしようとしてるよね? そうだよね?」

「わかりますか?」

「うへー、聞きたくないけど大事な話なんだよね……」


 朝のルーティーンをこなしていたら、雪乃さんに集合をかけられてしまった。

 みんなで集まったら、もう空気が重いったらない。


 めんどくさい話とか、ややこしい話というのは、嫌でもやってきてしまう。聞きたくないのに聞かされてしまう。どうでもいいと思いたいのに、それでは済まされない。

 花園は新進気鋭のクランだからね、そういうこともあるんだと受け止めるしかない。嫌だね、ホントに。


 今日は朝っぱらから、そんな話を聞くことになってしまった!

 でも仕方ない。私たちが木っ端クランならともかく、超活躍中のクランで知り合いも増えてきたしね。活躍するってそういうことだ。


「それで、なにかあったんですか?」


 マドカもちょっと緊張気味だね。ほかのみんなもそうだけどさ。


「皆さんに直接関わりはありませんが、特殊空間資源管理局の局長が事故で亡くなりました」


 特殊? 前にも聞いたことがあるような気がするワードだね。

 それにしてもお亡くなりかよ。誰だか全然知らんけど、不幸なニュースは気分が暗くなるわ。


「待ってください。昨夜も今朝も、そのようなニュースは見ていません。雪乃さんの情報ルートですか?」

「はい、銀子さん。おそらく昼頃に発表があると思われますが、伝手から入った速報です。しかも本局だけではなく、政策企画部、関東本部、さらには東京支局、それら組織のトップが乗る車両が、ゴルフ場へ向かう山中で事故を起こしました。全員、死亡したとのことです」


 え、なんなん? なんの話?


「雪乃さん! 全然わからん」

「そうですね、ではまず組織図を見てください。皆さんもこちらをどうぞ」


 モニターに表示してくれたものをみんなで見る。

 ほうほう、なるほど。私たちがよく使うダンジョン管理所の組織図? そういうものみたいだね。


 一番下には各地のダンジョン管理所があって、その上にはどんどん偉い組織が重なっている。東京支局、関東本部、政策企画部、そしていっちゃん上が特殊空間資源管理局の本局。

 つまりめっちゃ偉い人たちが、一気に全員いなくなったってことだよね。


 こんなの絶対、覚えてられないけど、なんかやばそうってことはわかるわ。


「雪乃さん、それをあたしたちに伝える理由は、紫雲館に関わるからですね?」

「そういうことです。事故に遭われたのは、紫雲館と距離の近い方々でした。これによって紫雲館の政治的な影響力は、大幅に低下すると考えられます。もちろん何らかの手はすでに打たれていると思いますが、これまでどおりとはいかないでしょう」

「つまり我々花園に対して、上からの接触もあり得るということですか。特に葵は客観的に考えておかしいですからね」


 え、私かよ。


「皆さんが入手する魔石は、例外なく色付きや高品質ばかりです。これは常識的に異常なことですが、これまでは東中野管理所とその上の東京支局、そして関東本部、さらに本局のトップによって秘匿されていたと考えるのが妥当です。葵さんが個人で少数の魔石を納品している程度ではあまり目立たなかったかもしれませんが、数が多くなればとても隠しきれるものではありません。これは東中野管理所の所長、菊川さんの尽力によるものです」


 あのおっさんが? なんか私のためにがんばってくれたんだ。

 ほーん? よくわからんけど、今度どら焼きとか差し入れてやろうかな。


「菊川さんが上手く利権構造に落とし込んだというわけですね? そして秘密を守れば儲かる、結果的に葵を守る形を作ったと」

「具体的な手法はわかりませんが、聞き及ぶ限りそのようです。これまでの状況と夕歌からの話も合わせれば、これは間違いないでしょう。魔石だけではなく、葵さんが以前に鑑定目的で預けた装備についてもそうです。誰がどこで入手したものかと、一時期話題になったそうですよ」


 すっかり忘れていたね。もうどうでもいいけど、なんか装備品を夕歌さんに預けた気がするわ。


「ははっ、いろいろやらかしてんな、葵」

「いやいや、私は普通にダンジョンでゲットしたもんをお金に変えようとしただけじゃん。普通の活動だよ」

「とにかくですね、あの交流会以降は紫雲館の影響もあって、より盤石な体制が整いつつあったのですが……この事故によって今後どうなるか見えなくなりました」


 なんかめんどくさいことになるかもってことだよね?

 ごちゃごちゃうるさい奴がいたら、もうぶっ飛ばすわ。たぶん私はやっちまうね。


「雪乃さん、あまり考えたくはないのですが、この事故ってもしかして……」


 マドカがまた深刻な顔をしている。


「偶然とは思えない、そう考える見方があるのは当然かと思います。おそらく多くの人がそのように考え、調べるのではないでしょうか。とあるフィクサーと呼ばれる方の病死、天剣の台頭、そして今回の事故です。病死はともかく、事故は完全に天剣を利する状況の変化です」

「まさか天剣の奴らが事故を仕組んだってのか?」


 事故を仕組むって、マジかよ。


「むしろ天剣を押し上げたいとする一派が、己の利益のために動いたと考えたほうが自然だな。紫雲館には長年のしがらみがある。それを壊したい勢力が、この機に仕掛けたと思えばいろいろと腑に落ちる。いくら飛ぶ鳥を落とす勢いのクランとて、そこまでのことを実行する考えも度胸もないだろう。ましてや暗殺となれば、証拠を完全に消すことは難しい。バレればそれこそ破滅だ。そこまで馬鹿とは思えん」

「けっ、プロの仕業ってか? ますます陰謀じみてきやがったが、こんな事故が偶然なわけがねえ」


 もう話がややこしいわ。


「あのさあ、難しい話は私にはよくわからんけど、結局なんなん? 私たちもいつもと同じじゃなんかマズい感じ? 雪乃さん、どうなん?」

「考えてみたのですが、活動を続けても特に問題ないと思います。それというのも利権は誰かが引き継ぎますし、もし花園や葵さんの謎や秘密に気づいたとして、秘密は秘密であることに価値があります。軽々に余人に漏らすとは思えません。それに影響力が低下したとはいえ紫雲館は健在ですし、これからの巻き返しにも期待はできます」


 ほーん?


「じゃあ、これまでどおりでいいってことだね」

「そうですね。私のほうでも微力ですが手を回していますし、蒼龍も動いてくれているようです」

「おー、蒼龍のおっさん! そういや最近会ってないね」

「アオイ、ここしばらくはダンジョンばかりだったし、気分転換も兼ねてあいさつ回りしましょ。情報収集と顔つなぎの意味でもちょうどいいわ」


 なるほど。それもいいかも。

 蒼龍のおっさんもそうだし、菊川のおっさんもそう。あと交流会で仲良くなった人たちとか。

 やっぱりハンター同士、横のつながりも大事だよね。


 よし、あいさつしまくるぞ!

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。累計200話到達おめでとうございます! 記念回(?)なのに不穏極まりない話が舞い込んで来ましたなぁ…。間違いなく天剣、そしてそいつ等にひっついてる腐れ役人の仕業でしょうなぁ…調子に…
な、内閣総辞職ビームのようじゃないか・・・
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