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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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ハードモードとは!

 セーラさんと約束した日になった。


 細かいことは聞いてないけど『ウルトラハードモード』をお試しするらしい。私と一緒にダンジョンに入って、あとは適当なモンスターを倒せばスキルが強化されるはず。

 メタル系モンスターが出まくるダンジョンは、今後も使わせてもらうからね。これくらい、お安い御用だよ。


「夜に出かけるのって、結構久しぶりだね」

「甲府に行った時以来かしら? 人の多い時間を嫌って、夜から動き始めるハンターは割と多いのだけどね」

「ほーん? 私は夜から働きたくないけどねー」


 今日のことは秘密にする約束だから、目立たないように行動する。お忍びだ。

 ぞろぞろみんなで行動したら目立つから、本当は私だけでもよかったのに、マドカも一緒に行くことになった。みんな心配性だよ。私だけでも、全然まったく問題ないのにね。


 移動もセーラさんがお迎えの車をよこしてくれたから楽なもんだ。


「そういやマドカは車の免許取らないの?」


 この車も結構な高級車だと思う。黒い色のいかにもな感じ。私の趣味じゃないけど、ぼろっちいうちの車とはもう全然別ものだ。

 まゆまゆと買ったあのオープンカーみたいなやつを私も乗り回したい。私たちはすごいハンターになるんだから、あのくらいのは乗りたいよね。きっとほかのイケイケなハンターも車にはこだわってるだろうし、負けてられないよ。


「あたしはいいわ。運転してもらったほうが楽だもの」

「えー、一緒に免許取りに行こうよ」

「免許ほしいの? アオイが運転しても事故を起こす場面しか想像できないわ。やめたほうがいいわね」

「いやいや、大丈夫だって。私ったら運動神経はすごいからさ」


 もう映画のすごいドライビングテクニックだって習得できると思うわ。たぶん。


「試験があるのよ? 勉強する気ある?」

「まあ、大丈夫じゃない? そこらのアホみたいな奴だって、普通に運転してるじゃん。きっとめっちゃ簡単な試験だよ」


 たしかに勉強は苦手だけどね。誰だって取れるような、超簡単な試験に決まってるわ。


「そこまで簡単かしらね……」

「取れたらまたすっごい車買いに行くからさ。マドカは一番に乗せてあげるよ」


 マブダチで心の友だからね。


「あたしはアオイが免許を取ることにあまり賛成じゃないんだけど……まあわかったわ。その時には乗せてもらうわね」


 楽しみが増えるよ。そのためなら勉強くらい、ちょっとはがんばれる。



 街灯の少ない道をしばらく走って、到着したのはメタル系モンスターが出まくる三鷹ダンジョンだ。

 立派な門構えの敷地に入って車を降りたら、迎えに出てくれた管理人さんと一緒にお屋敷に入る。


「よく来たね、葵」

「楓おばあちゃん! セーラさんと琴葉さんも、おいすー!」


 3人がティーテーブル? そんな感じのところで待ってくれていた。

 この人たちは優雅だね。どうやったらその雰囲気が出せるんだろうね?


 やっぱ服装とか姿勢かね? おばあちゃんは和服、セーラさんは映画スター感あふれるブランド物っぽい服、琴葉さんはいつもの秘書っぽい服だけど。

 服とか姿勢なら、私とマドカも結構いい感じだから、よそから見たら私たちも優雅かもしれないね。思った以上にね。


「九条さんも今日はありがとう」

「いえ、あたしはただの付き添いですから」

「始める前に少し話そうじゃないか。こっちに座りな」


 楓おばあちゃんに言われて、マドカと一緒に座った。するとこれまた高級感あるカップと香り高いお茶が出されたよ。いちいち上流階級感があるね。

 ちょっとした近況やら世間話なんかをしちゃって、それから本題に入った。


「では私から。葵さんの『ウルトラハードモード』の前に、まずは記録に残っていた『ハードモード』と、独自に集めた高千穂さんの『ベリーハードモード』の詳細をお話します。これらの確認から始めたいと思います」


 琴葉さんがお仕事モードで話し始めた。こうなると急激に眠くなるけど、今日の私は花園の代表だからね、さすがに居眠りはできないわ。


「まず『ハードモード』とは、そのスキル所持者がダンジョンに入っている間、そのダンジョンに限定して全階層の難易度を上昇させる効果があります。難易度の上昇とは出現するモンスターの強化を意味し、ダンジョン自体の環境に変化は生じません。また難易度の上昇に付随して、高品質魔石およびその他アイテムについての入手率が上がります。さらに難易度の上がったダンジョンで戦闘行為を行い、モンスターを討伐した場合には、戦闘参加者の所持スキルがいずれかひとつ、無作為に強化されます。ただし『ハードモード』環境下ではレベルの上昇がしにくくなるというデメリットが存在していたようです」


 ほうほう。しかし琴葉さんは声が綺麗だね。


「以上のスキルの特性は、高千穂さんの『ベリーハードモード』でも同様との報告がありました。現時点では『ハードモード』のスキル所持者がいないので比較検証できませんが、おそらく読んで字のごとく『ベリーハードモード』のほうが難易度の上昇幅が大きいのだと考えられます。メリットとデメリットも相応でしょう」


 まあ、そりゃあね。そんな感じだろうね。


「葵さんの『ウルトラハードモード』も同様ですか?」

「うん、だと思うよ。私は最初から『ウルトラハードモード』で普通がわかんないけどね。マドカはどう?」

「……そうね。白峯さんのご説明のとおりとあたしも思います」

「セーラさんたちは、まだあの高千穂とかいう小娘のスキルは体験できてないの?」

「申し入れはしているわよ。予定通りなら、来月というところね」


 抜かりないねー、8月のどこかで『ベリーハードモード』なダンジョンを体験するんだね。私もちょっと違う難易度を体験してみたいわ。


「その前に、今日はもっとお楽しみの日ってわけさ。琴葉、続けな」

「はい、楓様。葵さん、九条さん、スキル『ベリーハードモード』については、天剣やフロレゾが公的な支援を受けながら積極的に検証を行っています。先ほど申し上げたようにある程度のことは判明していますし、残されている疑問も多くは解消されていくでしょう。ですが、それだけではわからないことがあります」

「それだけ?」


 なんだろうね。私に言うってことは、私でわかることかな。


「特に重要なところでは、やはり『ハードモード』影響下で生じるスキルの強化についてです。これは1度だけでしょうか? 高千穂さんの影響下では、ひとりにつき1度だけのようです。葵さんの影響下でもこれは同じですか?」

「そうですね。レベルが上がった時以外で、スキルに変化が起こったのは1度きりです」


 マドカが答えてくれたけど、私もスキル強化されてみたいわ。


「では高千穂さんと葵さん、それぞれの影響下で、それぞれスキル強化の恩恵が受けられるでしょうか? つまり2度目のスキル強化が可能かという疑問が浮かびます」


 おー、まあそれは思うよね。


「さらに言えばよ? もし1度しかスキル強化の恩恵が受けられないとしたら『ベリーハードモード』と『ウルトラハードモード』では、どちらの強化のほうが優れているか、という疑問が生じるわ。この場合、漠然とした感覚では当然『ウルトラハードモード』の影響下となるわね?」

「だからこそスキルの強化を受けるなら、葵を優先したいという思惑になる。実際のところどうなるかは、人数をかけて検証してみなければわからんがな」


 私はごちゃごちゃ考えたくないけど、それはそうかも。

 まあ、どっちを先にやったほうが得かはやってみないとわからんよね。そもそも2回強化されるかもわからんし。


「もっと言えばよ? 葵と高千穂さん、ふたりが一緒のダンジョンに入ったらどうなるのかしら? 難度の上昇は、より上位のスキルと考えられる『ウルトラハードモード』が適用されるのか、ダンジョンに入った順番に影響されるのか、あるいは掛け合わせたような難易度に変化してしまうのか。もし未知の難易度にまで上がるとすれば、その影響下でのスキル強化は? 疑問は尽きないわね」

「花園ではどのようにお考えですか? これまで葵さんのスキルの影響下で活動されていたのです。これらの疑問について、そちらでもすでに可能性は検討されていますよね?」


 ややこしい話だよ。うちのクランでも前にごちゃごちゃ話していた気はするけど、私はあんまり覚えてないわ。

 マドカさん、お願いしますよ! 心の友には目と目で通じ合える。


「……もちろん花園でも話し合いましたが、花園はフロレゾや天剣と協力関係になるつもりはありません。2回目のスキル強化が起こるかどうかは、いまのところ紫雲館の皆様にしか確認できないと思います。それとスキルの強化については、良いことばかりとも考えていないのです。もしアオイの『ウルトラハードモード』が強化された場合、手に負えない難易度になってしまっても困りますので」


 別にそうなったら、そうなったでいいけどね。スキルの強化はレベルが上がった時にもたまに起こるし。

 なにが起ころうとも、なるようになるんだよ! でもいま以上にレベルアップしにくくなったら、さすがに嫌だわ。やっぱいまのままがいいね。


「そのとおりです。スキルの強化がそのままポジティブな変化に限らないことは、すでに実例としていくつか上がっていました。ただ、やはり魅力があることは確かです」

「どのスキルが強化されるかわからない、どう強化されるかもわからない。それでも確実に強化はされる。面白いわよね」

「さて、もういいだろう? そろそろ葵の『ウルトラハードモード』を体験させてもらおうじゃないか。まずは中に入って様子を見たい」


 あ、いいんだ。

 こういう時って、可能性がどうとかごちゃごちゃ言って、結局なにもしないってパターンが多そうなイメージなのに。

 やっぱりセーラさんたちは思い切りがいいね。そういうところが気持ちいいわ。

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