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多すぎる必要経験値

 本当だったら経験値ザックザクのメタル系モンスターを倒しまくって、楽々とレベルアップ!

 やったね、沖ちゃんとリカちゃん、サブクラスゲットだね!


 そうなるはずだったのに、なんでか私たちはメタルじゃない恐竜と戦いまくっている。メタルじゃないやつ多すぎなんだけど。


 恐竜は動きが機敏なうえに不規則な感じで、ちょっとやりにくい。

 でも似たような鳥のモンスターと戦った経験があったから、すぐに慣れた。迫力はあるけど、そんなにたいしたモンスターじゃないかも。

 それにツバキの結界のお陰でだいぶ余裕もあった。モンスターの動きを鈍くするこの効果はやっぱりすごすぎるわ。


 ただ、この恐竜はめっちゃ嫌な攻撃をしてくる。


「あっぶねー、よだれがかかっちまうよ」

「本当に嫌ですね」

「そういうこと言わないでー。わたしは悲惨なことになってるんですよー」


 リカちゃんの盾なんてもう、よだれでびっちょびちょだよ。

 恐竜は大きな口を開けながら噛みつこうとして、よだれが飛び散りまくる。マジで汚いわ。


「ほいよっと、倒したら光になって消えるから我慢してね」

「なるべく早く倒します!」


 飛び散るよだれまで避けて立ち回るから、無駄に時間がかかってしまう。光に変わるとしてもよだれは嫌だからね。

 攻撃とよだれを避けながら、ハンマーとキックで倒していく。沖ちゃんもどんどん刀で倒しているし、マドカと銀ちゃんも後ろのほうで銃をバカスカ撃ちまくっている。ツバキとまゆまゆも魔法で倒しているし、結構なペースでやれているね。



 だんだん減ってきたかなってところで、ドシンドシンと大きな振動が足元から伝わってきた。

 まだ遠いけど、さっきまでの恐竜よりずっと重量感がある。後ろのほうだから、マドカと銀ちゃんの担当エリアだね。


「メタル系よ、いくわね!」


 お、マドカが本気を出すみたいだね。

 恐竜を適当に倒しながら、私もそれは見ちゃうよ。おらよっと、邪魔な恐竜を光に変えてっと。


 ものすごい力の気配みたいなのをドバドバ放出したマドカが、散弾銃をぶっ放した。連続で何発も。

 魔法の散弾が空中で弾けると、黒い炎の粒が雨のように降り注ぐ。それを浴びたジャングルの木々が一瞬で真っ黒に焦げて、炎が地面を這うように広がっていく。


 普通の恐竜もメタルな恐竜も、その黒炎に包まれたらもう終わり。光に変わってしまう。広い範囲があっという間に焼け野原だ。


 うん、強すぎね? 新スキルの『業火装填』強すぎね? さすがは羅刹姫のスキルだよ。

 私たちが苦手だった範囲の広い攻撃技を覚えてくれたのはホントにラッキーだね。しかもめっちゃ強い。

 さすがは私の心の友、自慢のマブダチだよ。


「よっしゃ、私も負けてられないね」

「私もです。ちょっとメタル系倒してきます!」

「え、沖ちゃんマジで?」

「モンスターも減ってきましたし、この辺りは葵に任せていいですか? つばきの護符があれば、あの巨大なメタル系モンスターにも私の攻撃が通用するはず。試してみたいのですが」


 うおー、沖ちゃんも気合が入ってるよ。レベルアップが近いし、マドカの活躍も見ちゃったしで、やる気がみなぎっているね。


「わかったよ! この辺は私とリカちゃんでどうにかするわ」

「瑠璃ちゃん、気をつけて」

「大丈夫です。無理はしません!」


 いつもの『春雷歩法』を使った移動で、あっという間にジャングルの中に消えてしまった。



 スポットライトのスキルにおびき寄せられた恐竜のモンスターを地道に倒す。

 リカちゃんに向かって集まるモンスターを、横から後ろからちょこちょこ殴ってぶっ倒すだけになってしまった。沖ちゃんがいなくても、私が倒すまでリカちゃんががんばって耐えれば別に大丈夫!


 恐竜の変な動きにはもう完全に慣れたから、あえてツバキの結界の外でも戦ってみる。こっちのほうがまだ楽しめるかな。


 ハンマーを振り回しながら沖ちゃんはどうしてるかなと思って、なんとなくジャングルのほうにを目を向けたら、遠くのほうで大きな恐竜が光に変わった瞬間が見えた。

 まだそんなに時間は経ってないのに、もう倒したみたいだね。


「やるじゃん」


 いくらツバキの呪いの護符があっても、あれは攻撃に呪いを乗せるだけだから、元の攻撃が弱かったら敵は倒せない。強い攻撃が強い呪いになって、メタルのアホみたいな防御力を突破する。そういうことだと思う。


 普通はあんなあっさりとは勝てないよね? 私は普通の感覚がわからんけど、たぶんそうなんだと思う。たぶん。

 どうなんだろうねーなんて思いながらもモンスターをぶっ倒しまくっていたら、だいぶモンスターが減ってきた。さすがにね、いっぱい倒したからね。


「あらかた片付いたな。私も遠くのメタル系モンスターを狙撃する。つばき、護符を使わせもらうぞ」

「うん、まだある」


 沖ちゃんがジャングルの中を駆けずり回って倒し、銀ちゃんが別の方向の遠くにいるやつをバンバン撃って倒してしまう。こうなったら私の出番はなさそうだね。


 ふいー、終わった感が出てきちゃったよ。

 それにしても普通の恐竜がいっぱいいたのはびっくりしたけど、まあウルトラハードなダンジョンだからね。これくらいはいつものことかな。

 恐竜のよだれはホントに嫌だったけど。


「警戒を解いてもよさそうですねえ。近くのモンスターは全部倒したみたいです」

「おう、そろそろ終わりだな。瑠璃が暴れんのやめたら、今日は帰ろうぜ」

「そうね。夢中になってしまったけど、ルリもリリカもレベルアップはしたんじゃない?」

「あれだけのモンスターに加えて、メタル系もああしてたくさん倒してますからねえ。実はずっと気になってます」

「うちも気になる。先に見る?」


 やばいね。急に緊張感が高まってきてしまった。毎度のことだけど、仲間のサブクラスゲットはやっぱ特別感あるし。


「どうしましょう? 瑠璃ちゃんが戻ってからにします?」

「それにしても瑠璃の奴、どこまで行く気だ?」

「すごいわね。もしかして全滅させるまで戦うつもり?」

「ふふ、張り切ってますねえ」


 あの調子だとツバキの護符の効果が切れるまで、ずっと戦って倒しまくるつもりっぽいね。


「こっちは片付いた。瑠璃はまだか?」

「沖ちゃんはまだ戻ってこないね。銀ちゃんは何体くらい倒したの?」

「正確に数えてはいないが、20体以上は仕留めたはずだ。かなりの稼ぎになっただろうな」


 マジかよ、いつの間にかめっちゃ倒してるじゃん。具体的にはわからんけど、これはみんなレベルアップしたんじゃね?

 メタル系モンスターの経験値は、銅でも普通のモンスターの10倍とかだった気がする。銀はたしか30倍とか? 合計したら結構なことになったよね。


 ここより前の階層でもたくさん倒したし、いままさに沖ちゃんが追加で倒してる。普通の恐竜モンスターだって倒しまくったし。


「わたしは魔石の回収をしてきますね」

「おー、頼んだよー」


 サブクラスゲットの報告は、もうちょいあとのお楽しみかな? 沖ちゃんが戻るまでは待ちますか。

 その前に私はレベルアップしたのかな。ちょっと見てみるか。



■星魂の記憶

名前:永倉葵スカーレット

レベル:21(レベル上昇に必要な経験値:239,043)

クラス:はぐれ山賊

サブクラス:しゃにむに悪鬼



 うおい、マジかよ。私ったらレベルアップしてないんだけど。

 あんなにいっぱい倒したのに。メタル系モンスターの経験値だって、ちゃんとゲットできたはずだよね?


「ちっ、あんだけ倒したのによ。レベルはひとつしか上がってねえな」

「まゆもそうか。私もだ」

「うちも」


 ここにいない沖ちゃんとリカちゃん以外が、身分証をチェックし始めたね。


「……あたしはレベル20のままよ」

「マドカも? 私もレベル上がんなかったよ」


 でもちょっと安心したわ。私だけレベル上がってなかったら、だいぶ悲しいよ。


「前からレベルの上がりにくさは感じていたけど、レベル20以降はもっと顕著になるのかもしれないわね」

「これが『ウルトラハードモード』の影響なのだろうな」

「葵は自分の必要経験値が見えるんだろ? 要求値はどんどん増えてんのか?」

「んー、そうだね。やばいくらい必要経験値は多いよ。でもみんなはどうなんだろうね? 普通のダンジョンにも入れるじゃん?」


 ウルトラハードにいると、レベルが上がりにくくなる。私は必要経験値がめっちゃ多いのがわかってるけど、みんなもそうなったとするとよくわからん。


 私と同じくらいの経験値が必要だとするとだ。めっちゃ大量の経験値を稼いで後で、普通のダンジョンに入ったらおかしいことになるよね?

 普通はそんなに必要ないんだし。私がいないとウルトラハードじゃなくなるんだし。


「何か法則が変わるのだろうな。確認する方法がないのであれば、気にしても仕方あるまい」


 銀ちゃんは切り替えが早いね。でもそれはそう。わからんことを気にしても仕方ないわ。


 さてと、沖ちゃんとリカちゃんはたぶんレベルアップしたよね。

 早く結果が知りたいよ。サブクラス、どうなったんだろう。

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