見たことありそうでなかったモンスター!
ダンジョン中層の第十一階層に入ってから、銀色の騎士っぽいモンスターを倒しまくる。
マドカが遠くのモンスターを地獄の黒い炎で焼き尽くし、私と沖ちゃんが近くのをテクニックで1体ずつ倒していく。
浅い階層だとがんばっても経験値が全然もらえないから、それを考えると無駄っぽく思えてしまう。
慣れないメタル系モンスターは硬いだけで、全然たいしたことがなかった。
練習はもう十分だから、みんなで話して本気を出すのは第二十階層からにした。
第十五階層に到着したら、キリがいいので終わりにしてまた次の日にダンジョンに乗り込む。
この三鷹ダンジョンは紫雲館が独占するダンジョンだけど、誰も使う予定がなければ、好きに使っていいことになっている。使えるものはバンバン使うぞ。早くレベルアップしたい!
日をまたいでダンジョン攻略を再開した。
進行方向にいるモンスターだけを、私と沖ちゃんで倒しながら進めば消耗は少ない。
人工的な感じの広い洞窟をずんずん進んでいく。
メタル系モンスターには昨日でもう慣れたから、硬い防御力にびっくりすることもなくなった。あとはちゃんと稼げる場所で戦いまくればいい。
「階層を下れば下るほど、モンスターが強くなるのがわかりますね」
「だね。ほとんど同じのだからわかりやすいわ」
銀色の騎士っぽいモンスターがずっと続いている。
階層を進むと見た目の装備が少しだけ強そうに変わって、そのせいもあるのか明らかに防御力だけじゃなくて全体的に強さが増している。
どこのダンジョンでも、先に進めばモンスターは強くなる。ただ、こいつらは変化が地味。
神楽坂ダンジョンの骸骨くんたちのほうが、もっと極端に装備が変わったり、徒党を組んだりしてあれこれ変わって面白かった。そういう意味でつまらない。防御に特化したモンスターでも、このくらいなら私は普通に倒せるからね。
中層に入ってからはモンスターもダンジョンの環境的にも、代り映えがしなくてもうつまらん!
もし話し相手や一緒に戦ってくれる人がいなかったら、くじけそうになるくらいつまらんわ。
メタル系モンスターが出まくるダンジョンなんて、もっとわくわく感にあふれているかと思ったのにね。
「葵の攻撃だから通じていますが、あの防御力は普通ではないですね。メタル系にしても相当なものかと思います」
「でも動きがのろいからねー。盾の防御はすごそうだけど、沖ちゃんがこかして私は踏んづけるだけだし」
私なら盾ごとでもぶっ壊せると思うけどね。暴れ回るのは第二十階層に到着してからでいいや。その時には頼れるハンマーさんの威力と私のパワーを思う存分、叩きつけてやろう。
「たしかに動きは並以下ですね……あ、また出ました。いきます!」
沖ちゃんはモンスターを見つけたらすぐに突撃した。
私も含めて、みんなで沖ちゃんの張り切り具合を見守る。順調に進めば、とりあえずの目的地にした第二十階層までそう時間はかからない。そこまで行けば、まともに経験値がもらえるはずだからね。沖ちゃんとリカちゃんのレベルアップは近いはず。
もう今日中にはサブクラスをゲットできると思う。それを思えば、そりゃ張り切っちゃうよね。もう楽しみで仕方ないよね。わかるわ!
うん、なんかそう考えると私も楽しくなってきた。先を急ぐとしよう。どんどこぶっ倒して、さっさと先に進もう!
そうして。
朝からがんばって、午後の早い時間帯で目的地に到着できた。ここからが本番だ。
「うおー、なんだあれ?」
第二十階層に行ってみて、もうびっくりしてしまった。モンスターが騎士っぽいのから全然違うのに変わっている。
環境がジャングルになったのは事前に聞いたとおり。開けた場所はいいけど、ジャンルの中はちょっと戦いにくそうだね。そこは仕方ないとして、モンスターの種類にびっくりしたわ。
「予想外だな。数々のダンジョンを経験してきたが、あれは見たことがない」
「肉食恐竜としか表現できない姿よね。シルバーとブロンズもいるわよ」
ホントに。騎士っぽいのは銀しかいなかったのに、恐竜は銅もいるのかよ。ダンジョンは気まぐれだわ。
恐竜はでっかい顎に鋭い牙がずらっと並んで、ぶっとい後ろ脚で立っている。まさにイメージのままの恐竜だ。メタル系のやつは遠いからよく見えないけど、ジャングルの緑の中でギラギラ光ってるからめっちゃ変な感じがする。
「おおきい恐竜や。ティラノサウルス?」
「すげえもん見れたな。ははっ、やっぱダンジョンてのはおもしれえ」
「待ってください。ジャングルのせいで見えにくいですが、メタル系ではない通常のモンスターもいますよ」
「通常種はサイズが小さめですねえ。ここからではよく見えませんが、あれも恐竜でしょうか?」
ちらほらいるメタル系の恐竜はでっかいから、ジャングルでも姿が見えやすい。それと比べてちょい小さいのが、いっぱいるみたいだ。そっちはメタル系じゃないんだね。
「とりあえず普通のやつから戦ってみる? なんか強そうな気がするわ。やっぱ恐竜だし」
「初めてのモンスターですし、まずはわたしが受けてみますね」
不動のリカちゃんは、よっぽどの強敵だろうとすぐにはやられない。どんな攻撃をしてくるのか見たいし、安心してお任せできるね。
大階段から移動して、結構開けた場所で戦うことになった。
そこに陣取ったリカちゃんが盾を構えて、いつもの『不動防御』を発動したら、すかさずマドカがスポットライトの魔法を重ねる。するとこっちに気づいたモンスターが、さっそくおびき寄せられた。
ドシンドシン鳴る足音からして、結構な重量感だ。ついでに速さも思った以上にありそう。
「……増えてますね」
ジャングルの向こうから、ドシンドシン鳴る音が増えまくっている。なんか1体だけおびき寄せるつもりが、いっぱい来ようとしてない?
ババンと現れた肉食っぽいけどちょっと小さめと思ったモンスターは、それでもリカちゃんの大楯よりでっかいサイズだ。そいつはギャアギャアわめき声を上げながら、大楯に飛びかかった。
「1匹ならそこまでの圧力はなさそうです!」
不動のリカちゃんなら、あのくらいは余裕だ。普通にはね返したね。
体勢を崩した恐竜には、沖ちゃんが素早くも力強い突きを食らわして、一発で光に変えてしまった。いい連係だわ。
でも恐竜は近くで見ると迫力あるね。もう顔が怖いわ。
「まだ来ますよ!」
ドスドス足音がうるさい。前だけじゃなく左からも右からも、木々の向こうから汚い鳴き声と足音が迫ってくる。ジャングルで遠くが見えないから、何匹いるのかもわからない。完全に囲まれつつあるわ。
「うちも結界張る」
「ちっ、明らかに数が多いな。メタル系が相手じゃなけりゃ、アタシの状態異常も通用するだろ」
「そうだな。まゆとつばきは全体を見ながらサポート、葵と瑠璃は梨々花の左右を固めてくれ。まどかと私で後ろから迫る敵を仕留める。囲まれるぞ」
「数が多いみたいだし、メタル系まで来たらあたしは本気でやるわね」
「いいじゃねえか。まどかの地獄の業火でよ、ジャングルごと焼き払っちまえ!」
うおー、盛り上がってきたね。
銀と銅のでっかい恐竜もいるし、いい感じの舞台が整ってきたよ。
恐竜と戦うの初めてだから、なかなか楽しみ。やったるぞ。