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お嬢様組の独占ダンジョン

 なんやかんやと難しくてややこしそうな話をされてしまった。

 話の半分くらいは理解できたような気がするけど、とにかく疲れたわ。


 でも私はなんとなくの雰囲気がわかっていれば別にいい。頼れる仲間がいるからね、それで十分だよ。

 難しいことは誰かに頼って任せたい! ありがたいっす。


「まどかおねえ、どないな話になったん?」

「もう、ツバキは全然聞いてなかったの?」

「ややこしい話には、うち入れへんし。結果だけわかれば、それでええ」


 その割り切った精神、私と同じ! 好きだね!


「しょうがないわね。いろいろ話はしたけど要点としては、紫雲館が花園の後ろ盾になることが決まったわ。そのお陰でもしもの場合に、葵や花園の自由が制限される可能性を減らせるの。その代償としてスキル強化の機会を時々、提供するということね」

「機会? 葵姉はんが少し大変なだけ?」

「いまのところはね。葵ひとりだと心配だし、その時にはあたしが同行するけど」


 まったくもう。私は立派な成人女性なんだから、ひとりでも別に大丈夫なのに。まあ一緒に来てくれるのはうれしいけどさ。


「しかし星ノ宮聖来と白峯琴葉は、エリートクランの幹部らしく油断ならない人物だったな。今回のことはすべて向こうの描いた絵図のとおりになったと思えば、あまりのんきに構えてもいられん」

「交渉事には慣れているのでしょうけど、トップクランの片鱗を見せられちゃいましたねえ」


 普通にいい感じのふたりじゃなかった? 嫌な感じはしなかったけどね。


「あっちはエリートだぜ? おまけに踏んだ場数だってアタシらとは段違いだろ。葵のスキルがバレちまってた状況を思えば、もっとこっちに不利な条件にだってできたはずだ。だがよ、あくまで対等な取引の体でアタシらの好感度を上げてやがる。これで今後、あっちの頼みは多少の無茶でも聞く気になっちまうわな」

「ただのいい人たち、そんなわけがありませんからねえ。もちろん計算づくですよ。どんな思惑があるのかは、わたしたちも考えないといけませんね」


 マジかよ。みんな考えすぎじゃね?


「それだけ有能なクランを味方につけられたのです。よかったではないですか」

「瑠璃の言うとおりね。最悪は利用されるだけの可能性もあったのだから、花園としては悪くない結果よ」

「そうだな。後ろ盾の件はどこまで信じられるかという問題もあるが、紫雲館の独占するダンジョンを利用できるのは面白い」

「はい。私としてはそれが気になってます。サブクラスまでの近道になることは間違いないですから」

「わたしと瑠璃ちゃんは、普通にダンジョンに入っていたら、まだレベルが上がるのは当分先ですからねえ」

「期待していいとは思うのだけど、葵のスキルの影響でどこがどう変わるかは未知数よ?」

「たしかに実際に――」


 帰りの車の中では、みんながさっきの話の内容を振り返りつつ、今後のことを話している。私はマジメな話はもういいわ。

 ふあー、晩メシはなに食べようかねー。



 セーラさんのところにみんなで行った次の日。

 私たちは紫雲館が独占している特殊なダンジョンにやってきた。これは花園がクランハウスの中に抱えている練馬ダンジョンと同じ扱いで、変わったダンジョンを特定のクランが管理するって名目で独占しているものらしい。


 それにしてもだよ。セーラさんたちは決断が早くてとてもいい。

 スキル強化は近いうちにやる話になったけど、独占ダンジョンはもう使ってもいいと言ってくれた。そうと決まれば、私たちはすぐ使うに決まってる。


 いつものぼろっちいワゴン車で入った敷地には、紫雲館の二号館みたいな建物があった。こっちもやたらと豪華な雰囲気だ。

 普通のダンジョン管理所はお役所っぽいのが多いから、お屋敷タイプは緊張しちゃうね。


 人けは全然ないけど、ここにはハンターとは違う管理人さんがいるとだけ聞いている。さっそくピンポンしてみよう。

 するとインターフォン越しにどうのじゃなく、立派な玄関扉が開いて、めっちゃ上品な感じのおばあちゃんが出てきた。


「おいすー! 私たち、花園のハンターっす。よろー」

「まあまあ、ようこそ三鷹ダンジョンへ。お話は聞いていますよ。さあさ、中へどうぞ」


 ニコニコして優しそうなおばあちゃんだね。

 でも只者じゃないのは私にはわかったよ。たぶんなめてかかったら、ぶっ飛ばされちゃう系の人だわ。まあ私のほうが強いけどね!


 ぞろぞろとお屋敷の中に入ったら、まずは更衣室でお着替えタイム。ささっと着替えてまたおばあちゃんの案内で奥へ奥へと進んだら、そこにはダンジョンへの入口があった。でっかい階段がわかりやすい。その手前にはピシッとしたおじいちゃんがいる。


 ほうほう。おじいちゃんは蒼龍のところの執事さんみたいな感じだね。この人もニコニコしているけど、油断ならない感じだよ。

 ちょろっと初対面のあいさつをしたら、なにやら説明が始まった。


「ここは事前に楓様か聖来様の許可を得られた方しか入れません。本日は他にご利用になる方はおられませんので、どうぞご自由に」


 私はよく覚えてないけど、そういうルールはすでに聞いてるから大丈夫なはず。みんなはちゃんと覚えてるよね。


「ありがとー! ほいじゃ、さっそくいってきます!」


 いってらっしゃいませ、なんて言われながらダンジョンに入るとは。ちょっとかしこまってしまうよ。

 今日は私たちしか利用しないとは聞いたけど、念のため『ソロダンジョン』を発動しつつ、ダンジョンの大階段を下った。


「やっべーよ。めっちゃ楽しみだね」


 このダンジョン探索は、昨日セーラさんからいろいろ聞いた時から楽しみにしていた。めっちゃ楽しみにしていた!

 だからこそ、昨日の今日でやってきたわけだ。


「まさかよね。メタル系モンスターが多くいるダンジョンなんて」

「ずるいわ。そんなのレベルがすぐ上がるじゃんね」


 メタル系モンスターは経験値をいっぱいくれる。そんなのを倒しまくれば、あっという間にレベルアップしまくりだよ。


「しかし高いレベルと比べ、実戦経験がまったく追いつかない歪なハンターが出来上がる。ここが一般に解放されない理由のひとつだろうな」

「主には職業としてハンターを選ばない要人やその家族が、箔をつけるために短時間でのレベルアップに利用するらしいですからねえ。お手軽なレベルアップはいいですけど、紫雲館の皆さんはそのお守りのお仕事が大変そうです」

「代わりに政財界へ太いパイプを持ち続けられる。モンスターの脅威や、それを圧倒する実力を見せつける機会にもなる。面倒の代償としては破格だろう」


 そんな話もしていたね。要人がどうとか私には関係ないからどうでもいいわ。


 ここは第三十階層まであるから、私たちの経験値稼ぎにかなり使える。レベルとそれに見合った経験の話はあるけど、私たちったらめっちゃダンジョンでの経験は積んでるからね。その辺は大丈夫だよねって話は昨日もした。


 なにより楽しみなのは、ここでちょろっと階層を進めば、いよいよ沖ちゃんとリカちゃんがレベルアップする。ついにサブクラスをゲットするってことだ。

 メタル系をバンバン倒せると思えば、もう一気に近づいた気がするね。


「うおおーっ! もうさっさと第二十階層くらいまで突っ走ろう!」

「はい!」


 うんうん、沖ちゃんも気合十分だね。


「待って待って! メタル系モンスターはかなりの強敵よ? それに葵の『ウルトラハードモード』でモンスターがどう変わるのか気になるわ」

「そのとおりだ。じっくり進んだほうがいい」

「まあな、焦ってもモンスターは逃げやしねえ」

「瑠璃ちゃんも慎重にいきましょう」


 みんながそう言うならね。私もちょっとは落ち着くよ。

 たしかに前に1回戦った時は、銀ちゃんの狙撃を普通に跳ね返したね。とんでもない防御力だったわ。

 あの時はツバキの呪いで倒したから、私たちがどう戦うかはちょっとお試しが必要なのはそう。


 まあいざとなったら、ツバキを頼りまくるよ。それでどうにかなる!

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