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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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あれこれクランの感想会!

 今夜はクランハウスのロビーに、みんなで集まることになった。


 うちはみんなが違う場所の交流会に出かけているから、どんなもんか共有しようって話が雪乃さんから飛び出した。

 話を聞いてみれば、これまで関心がなかったクランに興味がわくかもしれない。

 さすがは雪乃さんだね。楽しみが増えそうだよ。


 ちょっと遅い時間になってしまったけど寝るにはまだ早い、そんな感じの時間になって集合できた。

 わいわいと少し雑談したら、雪乃さんが改まった調子で立ち上がる。


「こうしてクランメンバー全員が集まるのは久しぶりですね」


 みんなバラバラに活動中だからか、こうやって全員が集まるとわくわく感が高まる。やっぱり仲間っていいものだ。


「では葵さんから。さっそくですが、気になったクランについて話を聞かせてもらえますか?」


 よっしゃ。これまでも個別にはあれこれ話しているし、今日は行ったばかりのクランについて聞かせてあげよう。面白おかしく!


「みんな、実は私、すっごい話をされてしまったよ……とんでもない話をされてしまった!」

「もったいぶってんな」

「どこのクランに行ったのよ?」


 ふっふっふっ、気になっているようだね。気になって仕方ないよね?

 いいですとも。教えてあげますとも!


「それはなんとー! 芸能界デビューのお話です。とあるクランでされてしまったわ!」

「芸能界? 本当か?」

「おい、マジかよ」

「今日の訪問先は『きら星エンターテインメント』というクランですね」

「そうそう、雪乃さんには話してたよね」

「……アオイ、本気?」


 あっと、そうだ。マドカは芸能界に嫌な思い出があるもんね。まあ安心しておくれよ。


「どんなクランか、ちょろっと見に行ったらさ。いきなりデビューがどうのって話をされたんだよ。1億は出すとか、場合によっちゃ10億稼げるとか、調子のいいこと言いやがってさあ。めっちゃ怪しい奴だったわ。普通にお断りしたけど!」

「なるほどな。『きら星エンターテインメント』と言えば、それなりに大手のクランで人気も高い。ハンターを芸能界に送り込んだり、その逆に芸能人をハンターとしてデビューさせたりな。たしか、まどかの元事務所とはライバル関係にあるクランだったはずだ」


 え、そうなの? 下手に関わると、なんかややこしい感じになりそうじゃん。あぶねーわ。


「まどか、なんか知ってるか?」

「一応はね。やり手で有名なクランよ。アオイやうちへの接触は、フロレゾ絡みで注目を集めようって魂胆ね。近づいても、ろくなことにならないわよ」

「花園のほうにもそのような打診と言いますか、その前段の話し合いの提案が届いていました。私からも正式に断りを入れておきましょう」


 それがいいわ。整髪料のおっさん、うさんくさい奴だったからね。

 なんか面白おかしい話を聞いてもらおうと思ったのに、空気が重くなっちゃったよ。まったくもう。


「瑠璃はどうだ? 毎日、戦闘メインのクランを巡ってんだろ?」


 ナイスだよ、まゆまゆ。ちょっと強引だけど話を変えてくれた。


「目ぼしいクランを雪乃さんに聞いて、葵のようにあちこち顔を出しています。それぞれ得意分野が違うので、勉強になりますね」

「得意分野っつーと、武器の違いか?」

「対人戦とモンスター戦の違いや、特定武器に特化した戦術など、直接関係なくても参考になることが多いですね。あと毎回、多数の勝負を挑まれます」

「マジで? 沖ちゃん、殴り込みまくってんの?」


 すげーよ。やるじゃん。


「いえ、殴り込んだつもりはないのですが……」

「返り討ちにしてんのか?」

「ダンジョン内ではないので、ステータスやスキルの力は使えません。純粋に技術や体力の勝負なので、負けることもありますね。ただ、訓練としてはとても役に立っています」


 楽しそうだし、それならよかった。


「まゆとつばきはどうですか? 魔法系スキルでトップのクランに通っているのですよね?」

「そうだな。あそこはさすがトップクランのひとつって感じだ。なあ、つばき」

「うん。うちも『紅の魔法愛好会』のお陰で、スキルに詳しなれた思う。まだ短い期間やけど」

「座学も実戦理論も、長年の蓄積ってもんを感じるな。まあ部外者が教わるのは、その入り口みてえなもんらしいがよ」


 ふーん。ふたりとも楽しそうだね。ちょっと気になるかも?


「まどかお姉は?」

「アタシも気になるな。毎日、朝から夜遅くまで行ってるよな?」


 そうだよ。そのせいであんまり話す時間もないよ。まったくもう。


「前にも言ったけど、あたしは『海風舞踊団』で基礎から鍛え直してるわ。朝は座学が中心で、午後からは体力トレーニングと武器の練習ね」

「なんか地味じゃない?」


 特に朝から座学はやばいね。私なら絶対、寝るわ。


「まあね、アオイには向かないクランだと思う。あたしにとっては、やっぱり銃の名手の教えはためになるのよ。教わりたいことが次から次に出てくるわ。魔導射手のギンコも、一度は行ったほうがいいわよ」

「そうだな。私も興味はある」

「銀ちゃんもいろんなクランに行ってんだよね? 今日はどこ行ってたの?」

「今日は『武蔵野お嬢様組』だ。葵も初日に行っただろう?」

「そうそう。お庭がすっごいし、絵も飾ってあるすごいクランだよ。馬もいるし」


 あそこにはもう一回、行ってみるのもいいね。


「大物クランの紫雲館か。だが銀子、お前にお嬢様連中ってのは、合わなかったんじゃねえか?」


 それはそうだね。あのお嬢様ルックの集団の中に、おっかない雰囲気で黒スーツの銀ちゃんはどう考えても合わないわ。


「いや、それがだな。紫雲館の凛とした雰囲気のせいか、我ながら意外と違和感はなかったように思う。特に今日の座学はクランの財務に関することだったこともあって、褒められた」

「金勘定といや、銀子の得意分野じゃねえか。そりゃあ、タイミングがよかったな」

「ああ、そのお陰か運よくクランマスターの桜庭楓とも個人的に話ができた」


 なんと、あの絵の上手いおばあちゃんと!


「個人的に? 随分と気に入られたな。それともやっぱ葵絡みか?」


 え、私? まあ絵を買った繋がりで、あのおばあちゃんとは仲良くなったけどね。


「間違いない。葵のことを気にかけていたな。いろいろ聞かれはしたが、思った以上に友好的だった。当然、紫雲館ほどのクランが単なるお人好しで動きはしないだろうが」

「とはいえ、ギンコでも不審なところは感じなかったのね? なにか思惑があるのは当然だと思うけど、どういうつもりかしらね」

「クランマスターとサブクランマスターのどっちも、葵には好意的みたいだしな。疑ってばかりじゃ、返ってよくねえぞ」


 セーラさんとおばあちゃんは、変なことを考えてないと思いたいわ。


「じゃあ銀子さんのほうは、あまり警戒の必要はなかったんですねえ。わたしが行った天剣は、ちょっと大変なことになりそうでしたよ」

「天剣が? 何かあったんですか?」

「瑠璃ちゃん、完全に目を付けられていましたよ。相当気に入られたみたいですねえ」

「剣のクランだからな。葵ではなく、瑠璃に目を付けたか」


 引き抜きって、マジかよ。あのゴリラっぽいハゲのおっさん、許せんわ。


「瑠璃の腕なら、そういう話も出るだろ。アタシらはまだクランの規模としちゃ弱小だからな、親切ぶって言ってきやがったんじゃねえか?」

「そういう節はありましたねえ。雪乃さん、クランのほうにはそういった話は届いてないのですか?」

「数多く届いています。枚挙に暇がないので基本的には無視しているのですが、中には返事をしたほうが良いクランもありまして。まさに天剣のような大手のクランですね。今日はそれを皆さんにお話しするつもりでもいました」


 え、マジかよ。そんなに?


「なんだよ、雪乃。そんなもん、アタシらに言うまでもなく断っていいぜ?」

「そうだな。後から加わった私たちは、このクランに恩義がある。それに花園以上に居心地の良いクランは、ほかに考えられん。実利的な面でも、むしろほかを選ぶ意味がない」

「まさにそうですねえ。実力を買ってもらえるのは嬉しい反面、わたしたちは脛に傷を持ってますからね。他のクランではその点で面倒が起こりそうです」

「引き抜きで入ったとなりゃあ、待遇だってそれなりのもんは保障される。嫉妬でごちゃごちゃ言ってくる奴は、必ずいるからな」

「私もほかのクランにいろいろ行ってわかりましたが、様々な意味で花園が一番だと改めて思いました」


 うおーっ、仲間たちよ!


「言うまでもないけど、あたしとツバキもね」

「……うん、うちも」


 いやまあね、出ていくとか言われても全力で阻止するけども。

 引き抜きなんて私は許さんけどもね。もう相手のクランマスターと決闘するわ。

 とにかく、みんなに出ていく意思がないってわかってよかったよ。


「あ、雪乃さんは? 雪乃さんもどっか行かないよね?」

「もちろんです。どこにも行きませんよ。では次に私のほうで集めた情報なのですが、フロレゾの高千穂さんの件もあって、現在世界的にハンターの業界が盛り上がっているようです。他国でも珍しいスキルの覚醒を求めて、盛んにレベル上げや新人育成に力を注ぎ始めたと聞きます。特に日本では、来年だけで蒼龍杯規模の大会がいくつも予定されています。参加依頼も増えそうですが、よく検討してから参加するか決めていきましょう」


 ふーん? なんかまたあちこちから、面倒なことを言われそうだね。

 面白そうならいいけど、つまんなそうなら普通に断ろう。なんでもかんでも付き合ってられないわ。

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