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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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キラキラ芸能界の誘惑

 毎日、自分なりに考えてあちこちのクランへお出かけ。

 いろんなクランを見物できるのは楽しい。交流会の名目があるからか、大手クランの人たちは親切でいまのところ変な奴はいても、嫌な奴には出会えない。結構意外かも。


 私たち花園はいい意味でも悪い意味でも目立っているっぽいから、いちゃもんつけられるかもってわくわくしていたのにね。

 招待してくれたクランじゃなくて、私みたいに招待された側のハンターも結構まともだ。まともすぎてつまんないくらい。


 まあ私ったら強いからね。ケンカ売っといて負けたら恥ずかしいからね。そういう意味でなかなか手を出せないのかも。

 マドカたちも平和にやれているみたいだし、ハンターは意外とあらくれ者が少ないのかな?


「お客さん、着きましたよ」


 うおっと。ボケっとしちまった。

 タクシーから降りた目の前にあるのは、立派なビルだ。都心のビルは雰囲気が違うね。なんかリッチ感が違うわ。そんなビルに堂々と入るよ。

 親切なことに、交流会に来たハンター向けの看板も設置してある。わかりやすいわねー、ありがたや。


 クラン『きら星エンターテインメント』主催の交流会へお越しの方は25階まで。


「ほうほう、25階かー」


 窓からの景色は、なかなかのもんだろうね。夜景とか。

 エレベーターホールに行ってみれば、結構な人で混雑している。あの中に入り込むのは嫌だなー。

 仕方ないかと思いつつ順番待ちをしてエレベーターに乗った。ぎゅうぎゅうだよ、もう。


「ういー、これを毎日はきっついわ」


 チーンと到着した25階でたくさんの人が降りたから、こいつらもハンターなんだろうね。

 それにしても都心のビルは大変だ。こんな場所がクランハウスじゃなくてよかったと、いまさら思ってしまった。都心の立派なビルより、いちいち混まないお家がいいわ。練馬最高!



 さてさて、どんなおもろいことがあるのかな。

 今日は『きら星エンターテインメント』なんて、超キラキラした名前のクランだからね。完全に名前だけ見てやってきたクランだから、どんなもんかわからんけど。


 人の流れについていってみれば、いつものようにまずは受付だ。そこにちょっとした列ができている。

 これを見るに、すごい人気のクランっぽいね。ただね、受付なんかでいちいち並ぶのかよと思うと、急にやる気がなくなってしまうわ。めんどくせー。ちょうど混み合う時間に来てしまったみたいだね。


 でもここまで来て帰るのはさすがにもったいない。ちょっとくらい我慢しますかね。

 並んでいる間は暇すぎて、誰かお話でもできないかなと思ったけど、妙にピリピリした空気があって話しかけにくい。


「そういやなんか、みんなキラキラしてんね」


 どいつもこいつも髪型がシャレてるなって感じがする。それに男も女も若い奴しかいないっぽいし、服装も気合入った感じだね。

 ここはそういうオシャレな奴らに人気のクランってことかな?

 振り向いてすぐ後ろの奴を見てみれば、ちょっとだけ美人風の女子だよ。でもメイクとか服装に、ものすごい気合を感じるね。


「……なんですか?」


 話しかけられちゃったわ。まあちょうどいいや。


「ねえねえ、ここのクランて人気あんの? なんか有名な奴がいるとか?」

「あなた、永倉さんですよね。あなたこそ、このクランに何の用?」


 ちょっとトゲトゲしい感じするね。なんだよ、こいつ。

 そういやあちこちのクランに行ってるけど、新しいお友だちとか全然できないわ。私ったら最近は、結構フレンドリー感出しまくりなのに。


「面白そうな雰囲気あったから、ちょっと見に来ただけだよ。それよりさ、なんでこんなピリピリしてんの? 楽しい交流会なのに、空気重くない?」

「……いいですね、余裕があって」


 あん? さっきからなんだよ、こいつ。

 ケンカ売ってんのかー? おおん?


「次の方、どうぞ……どうぞ!」

「うおっ、私か」


 いつの間にか前が開いていたわ。いそいそとカウンターに行き、にこやかなお姉さんに身分証を差し出した。


「永倉葵スカーレットさんですね。お待ちしておりました」


 受付のお姉さん、女優並みに美人じゃん。迫力あるわー。


「本日、永倉さんには代表の神谷がお会いになります。あちらの奥へどうぞ」

「代表?」


 よくわからんけど、そういうこともあるんだね。



 言われた部屋に入ってみると、もう社長の部屋って感じだった。

 お高そうな家具に、絵と壷もあるし、謎のオブジェまである。いいじゃん。


「やあやあ、永倉さん。初めまして」


 部屋の豪華そうな椅子に座っていたのは、ちょっと奇抜な模様のスーツを着たおっさんだった。髪型は整髪料使いまくりでばっちり決まってるし、笑顔も営業スマイル全開って感じ。


 いくつもつけた趣味の悪い指輪といい、キンキラな腕時計といい、すごい成金感がある。

 マジかよ。こいつ、すげーわ。絶対マネしたくないスタイルだよ。


「神谷です。今日はよく来てくれましたね」

「おいすー! お招きどーも。今日の交流会はどんなことするんですか?」


 なんで代表のおっさんとふたりになったんだよ、私。

 疑問に思いつつも、とりあえず置いてあった椅子に座った。


「これは驚いた。うちのクランがどのような活動をしているか、永倉さんは知らずに来たということですか?」

「いやー、それを教えてもらおうと思って。そんな感じっす」


 こういうのは前もって調べるより、いきなり来て内容を知ったほうが面白いんだよ。私はそういうスタイルなんだよ。


「そうでしたか。うちの主な仕事は、ハンター業界と芸能界の橋渡しでしてね」


 ほーん? そんな仕事があるんだね。てゆーか、そんなことをするハンターの集まりがあるんだ。だいぶ意味わからんけど。


「それにしても、君は思った以上に魅力的だね。カメラ映えしそうだし、キャラクターも立ってる。メディアが放っておくはずもない」

「はあ、そうすか」

「永倉さん。君の価値は、単なる実力だけではありません。君が持つ『ストーリー』こそが最大の商品価値なんです」


 整髪料のおっさんの目が異様に光っている。なんかちょっと怖いわ。言ってる意味もわからんし。


「ストーリーってどういうこと?」

「ホームレスから這い上がった少女。パンチングマシン全国上位の怪力。若さと実力を兼ね備えた新星ハンター。そして」


 身を乗り出すなよ。離れた場所に座っていてよかったわ。


「伝説のハンター、蒼龍とのつながり。さらには九条まどかを通した、フローラリア・レゾナンスとの因縁。これ以上ない話題性じゃありませんか」


 うわー、めんどくさい感じの話するね。こいつ。


「フロレゾのことも知ってんだ。結構、知れ渡ってる感じ?」

「もちろん。九条まどかとフローラリア・レゾナンスの確執、そして最近の天剣の星との協力発表。タイミング的に非常に興味深いですね」


 めっちゃ悪だくみしてます、みたいな顔だよ。嫌だわー。


「つまり、興味深い関係性の構図を描けるんですよ。蒼龍と近い絶望の花園と、天剣と組んだフロレゾ、蒼龍と天剣は協力関係にありますが、絶望の花園とフロレゾは対立関係にある。これはどのようにも解釈できる、非常に面白い構図です。両者の今後の活躍も込みで考えれば、さらに魅力あるストーリーが紡がれると期待できる!」


 うるせーな。


「いやいや。私たちったら、そんなアホみたいなことで目立つ気ないっす」


 マドカの敵はぶっ飛ばしたいけど、ランキングで圧倒してやるぞって決めているからね。余計なことはしないし、されたくもないわ。


「永倉さん、実際にどうかという話はあまり関係ありません。メディアが勝手にそう描いてくれますから。君たちはただ、いつものようにしていればいい。ああ、普段から可能な限り、化粧やファッションにはこだわりを持ってもらいます。専門のスタッフもつけられますよ」


 勝手なことを言うもんだよ。

 こんな話を聞いても意味ないし、そろそろ帰るかな。


「まずはバラエティ番組からスタートしましょう。我がクランのコネがあれば、いつでもねじ込めるので安心してください。そうですね、最初からインパクトを狙っていきたい。となれば、永倉さんが最初に名前を売ったあれで行きましょう。まずはパンチングマシンの企画で圧倒的な数値を叩き出す。視聴者は驚愕し、永倉さんの名前が、一般層にまで一気に広まります」


 整髪料のおっさんが勝手に話を進めているよ。もう帰りたいんだけど。


「顔と名前を広めたら、次に写真集です。ハンター装備での撮影を中心に、少し大胆なカットも織り交ぜて」

「だいたん?」

「水着程度です。決して下品なものではありません。ただ、話題性は必要ですから」


 いやいやいや。なんで水着なんか着るんだよ。やるわけねーだろ。


「お金の話では、初年度で1億円はお約束できます。人気が爆発して軌道に乗れば、5億や10億も夢ではありません」


 普通に億とかの話になるんだね。芸能界ってすごいわ。


「ただし、これだけの収入を得るためには、それなりの『お約束』もあります」

「ほーん? お約束?」

「スケジュール管理は完全に我々にお任せいただきたい。SNSの投稿内容も事前にチェックします。そして何より重要なのは……ハンター活動での『特別な成果』は、必ず我々を通して発表していただく、ということです」


 はあ? なんでよ。

 ネットの活動は私はみんなにやったらダメだよって言われてるから、そもそも投稿とかしないけど。

 てゆーか、なんなんだよ。さっきから勝手に。


「つまり、もし永倉さんたちが何か画期的な発見をしたり、特別なスキルを獲得したりした場合、それはすべて我々の管理下で情報発信する。そうすることで、最大の話題効果と収益を生み出せるのです。どうです? 非常に大きなメリットがいくつもあるのがお分かりになったでしょう。永倉さん、クラン同士で正式に提携しませんか?」


 整髪料のおっさん、こいつのクランと組むってことだよね。

 なかなか急な話をしてくるわねー。今日は楽しい交流会じゃなかったのかよ。

 まあ答えは決まってるけどね。


「絶対、ムリ! ほいじゃねー」

「え、あ、ちょっと! ちょっと待ってください!」


 ういー、まだお昼には早いけどお腹減ったね。

 ボリューム重視の定食とか食いに行こうっと。

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― 新着の感想 ―
葵ちゃんは毎日武蔵野のお嬢様講習を受けた方が楽しいんじゃ…
交流会お嬢様講習しか役に立ってないな……w
更新お疲れ様です。 なんか今回の交流で訪問したクラン、大体ロクでもないとこばっかりな印象なのは気のせいじゃないですよね? 最初のお嬢様講習と、見た目で風評被害(?)な勇者さんとこ以外は「えぇ…(困惑…
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