表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

162/214

お初の交流会!

 クランの交流会が始まったその日、朝っぱらから私たちはそれぞれで動きだした。

 のんびりなんてしていたら、あっという間に終わってしまうからね。こういうのは早めに動いたほうが気合も入るし、気分もいい。


 私もでかいクランに乗り込んで、荒らし回ってやる気満々だ。


「葵さん、いまからお出かけですか? 最初は紫雲館でしたね」

「うん、ちょっくら行ってくるよ。あと今日は結構帰りが遅くなるわ。セーラさんのトコの後にも、別のクランに行ってみるからさ」

「遅い時間ということは、もしかしてあの『深淵究明会』ですか?」


 さすが雪乃さん。それだけでよくわかるね。


「なんか集合時間がめっちゃ遅くて気になったんだよね。どんなところか全然知らんけど、とりあえず参加希望って連絡しといたよ」


 ほぼ全部のクランが、朝から夕方までのどこかで行けばいい感じだった。夜から受付開始のクランは珍しくて気になったし、時間的に後回しでも行ける。そうとなったら行くしかない!


「あそこはモンスターの研究に特化したクランです。クランハウスも管理を任されたダンジョンの上に作ったという、珍しい存在ですね。とはいえ、葵さんの興味を引くクランとは思えないのですが……それにあそこはあまり良い評判を聞きません」

「え、そうなん? なんで評判悪いの?」

「ただの噂話なのではっきりとはしないのですが、怪しげな儀式を行っていると聞きます」


 儀式? うおー、マジかよ。むしろ面白そうじゃん。


「それは気になりまくるわ。私が行ってたしかめてみるわ」

「ほかにも交流会の参加者がいるはずなので、おかしなことはないと思うのですが、くれぐれも気をつけてくださいね」

「もしなんかあったら暴れ回って逃げるから大丈夫。よっしゃよっしゃ、楽しみになってきたね。でもその前に、セーラさんに会えるの楽しみだわー」

「なにかあったら連絡してくださいね。今日は日差しが強いので、帽子を被ったほうがいいですよ。ではいってらしゃい」

「ほーい、いってきまー」



 花園からはタクシー移動で、ぼけっとしている間に到着できた。

 行き先も『武蔵野お嬢様組』だけで通じるから、すごいもんだよ。

 私たちのクランハウスもそんな感じで実は行けるのかな? 今度試してみよう。


「ほっほー、セーラさんのクランハウスはやっぱシャレてるわー」


 私たちのクランハウスみたいに立派な塀と門、それに庭園があるお屋敷だ。

 花園とはちょっと雰囲気が違うけど、どこがどうとは私にはよくわからんね。なんか違うけど、こっちもかなりイケてるわ。

 建物とか庭園は、なんかこうモデルにした国とか時代とか、そういう種類の違いなんだろうね。よくわからんけど。


 開かれた門の内側には、受付っぽい天幕にお姉さんがいて、にこやかに私を見ていた。優しそうな人だよ、いい感じだね。

 待たせても悪いし、さっそく行こう。


「おいすー、私、永倉葵。よろ」


 しゅたっと手を上げる、愛嬌も愛想も満点なあいさつ。

 今日も円滑なコミュニケーションが取れること間違いなしだ。

 これで第一印象はバッチリだよね。しかも言われる前に身分証を差し出すよ。我ながらスムーズ!


「はい、こんにちは。『絶望の花園オルタナティブ』の永倉葵スカーレットさんですね。どうぞクランハウスにお入りください」

「ほーい! ちょっとお庭を見てもいい?」


 だいぶ早く来たし、私が一番乗りかも。まだ時間はあるよね。


「お好きにどうぞ。紫陽花が見ごろですよ」


 ほほう、アジサイ? どんなもんかな。

 広いお庭に侵入すると、とても爽やかな空間ですわ。朝っぱらから日差しがキツイけど、緑とお花の空間はいい感じ。

 お姉さんが言っていたように、アジサイが植えられまくった一画は、もうアジサイだらけですごい迫力だ。薄い紫から濃い紫色であふれているよ。


「そうだ!」


 せっかくだからスマホのカメラを使おう。私のは最新だからね。きっといい写真が撮れるよね。

 えっと、こうしてこうっと。パシャ、パシャッと。いけるいける。ちゃんと撮れてるね。

 こういう時には自撮りだっけ? それもやってみよう。


「いえーい!」


 ふんふん、いいじゃん。この写真はグループメッセージのほうにっと。

 いやー、私も文明の利器を使いこなすようになったねえ。我ながらすごい順応性だわ。文明レベルが上がりまくっているね。


「おはよう、葵。早いのね」

「セーラさん! アジサイすごいわ、一緒に写真撮ろうよ!」

「ふふっ、いいわね」


 セーラさんは私の英国お嬢様風スタイルを、もう少し大人びた感じにした服装で系統が似ている。おまけに麦わらのシャレた帽子まで、私のと似た感じで全体的におそろいっぽい。

 ちょっとだけわいわいしてから、そんなふたりが並んで写真を撮りますよっと。なんかこういうの、交流会っぽい感じだよ。


「うおー、これはいい写真な気がするわ。セーラさんにも送るね」


 やっぱ女優っぽいだけあって、セーラさんは写真うつりの良さもハンパない。いや、もしかして逆に私の写真テクがすごいとか? すごい才能があったもんだわ。


「ありがとう。そろそろ時間よ、行きましょう」

「もうそんな時間なんだ?」


 そういや、紫雲館の交流会ってなにするんだろうね。

 セーラさんに会うことしか考えてなかったから、ほかのことは全然気にしてなかったわ。



 立派なお屋敷の内装をじっくり見物したいなーなんて思いながらも、前を歩くセーラさんについていく。

 あ、いい感じの絵があるよ。あれはちょっと気になるね。


「そこが講習室よ。終わったらまたお話をしましょう。うちの交流会は少し厳しいかもしれないけれど、しっかりね」

「え、そうなん? まあうん、またあとでね」


 なになに、なにするのか全然わからんけど。なんか厳しいっぽい?

 ちょっと怖いけどまあいいや。せっかくの機会だからね、切り替えていくぞ。


 開いたままの扉の向こうには、結構な人数の女子がいた。全員若い感じの女子で男子はいない。

 しかもみんながみんなお嬢っぽい服装だよ。そういう決まりでもあったのかな? 私はいつもどおりだけど、この服装のチョイスでよかったわ。

 あぶねーよ。ここで芋ジャージだったりしたら、無駄に浮いちまうところだったよ。


 私に集まる視線は特に気にせず、空いていた席に座る。

 あ、今日は交流会なんだし、いつものような塩対応はよくないよね。よさそうな奴がいたら、お友だちになってみるか。


「ほーん」


 おとなしく座るお嬢様スタイルの奴らを、じろじろと見回した。みんなすました感じで、どいつもこいつもつまらんねえ。

 さっきまで私を見ていた奴はいっぱいいたのに、こっちから見るとなんで目を合わせないんだよ。


 今日は交流会なんだよね? もっと仲良くしたいんだけど。私ったら珍しくそんな気持ちなんだけど。

 これはあれだ、みんな恥ずかしがり屋? 恥ずかしがり屋さんなんかな?


 よっしゃ、私から積極的に話しかけてみるか。そう思ったところで、開いた扉からおばあちゃんが入ってきた。

 背筋のピッと伸びたカッコいいおばあちゃんだ。着物のスタイルもバシッと決まっているね。

 あれはもう上品なおばあちゃん選手権があったら、絶対殿堂入りできるわ。めっちゃ上品な感じ。


「おはよう、皆さん。ようこそ紫雲館へ」


 急に空気がビシッと締まった感じするんだけど。

 なになに、なにが始まるんだよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ