いろいろある交流会への参加目的!
大手クランからの交流会へのお誘い。
これにはほかのクランの奴らもいっぱい来るらしい。それもでかいクランが目をつけて誘うほどだから、それなりに活躍中だったり、有望だったりする連中ばっかりだ。
ド新人みたいなのを集めて、あれこれ教える親切なクランもあるみたいだけど、そういうのに私たちは行かなくていいよね。いまさらだし。
それにしても、いっぱい招待状が来るなんてちょっと意外に思った。
私たち花園はずっとダンジョン巡りを繰り返していて、特に目立つようなことはしてないはずなんだけどね。むしろ塩対応でちょっと有名だから、嫌われているほうだと思ったんだけど。
それでも将来有望な感じは伝わってしまっているみたいだわ! これはもう伝わりまくっちゃってるわ!
だから招待状がいっぱい届いたんだと思う。たぶん、そう。
あとはマドカが超美少女だし、弁財天の加護でマドカ以外もそこそこいい感じだし。そりゃトップクランの奴らだって、お近づきになりたいよね。
一応、招待された側のハンターたちは、マジメな目的で大手クランの招待に応じるんじゃないかと雪乃さんは話していた。そりゃそうだよね。ナンパ目的の変な奴はたぶん少ないと思うから、マドカも参加しやすそうでそこはよかった。
花園のみんなはそれぞれ行きたいクランがあるみたいだから、6月半ばから終わりまでのご招待期間中は、ソロ活動オッケーにした。
私たちは立派な成人女性だから、興味ない場所にまでいちいち一緒に行動しない。ちょっと寂しい気はするけど、そういう感じになった。私もクランの外にお友だちとか作っちゃおうかね?
せっかくの機会だしね。もう作りまくるとしよう。
「ふいー、本日の労働に感謝を!」
「明日から中断期間に入るから、ここまで来れてよかったわ」
キリよくダンジョンの第二十五階層到達で、スパッと終われたね。
「やはりこの半月では、私と梨々花はサブクラスを取れませんでしたね」
「レベル19にはなりましたから。遠くはないはずですよ」
「あ、沖ちゃんとリカちゃん。別行動中にレベルアップしちゃうかも?」
その瞬間には一緒にいたいわ。それはさすがに、ちょっと見逃したくないわ。
「いや、瑠璃と梨々花はまだレベル19になって間もない。クラン間やハンター同士の交流で、レベルが上がるほどモンスター討伐を繰り返すことはないはずだ」
「だな。スキルの試し撃ちにしても、普通に考えてダンジョンの上層にしか行かねえだろ。ダンジョン攻略が目的じゃねえしよ。だったら大した経験値は稼げねえ」
「それもそっか。でももし中層とか行っちゃって、レベル上がりそうになくらいモンスター倒しまくったら、その時は教えてよ?」
「大丈夫ですよ」
「もしもの時にはちゃんと伝えますね」
それならよし!
ダンジョンから地上に戻って、花園への帰り道。
最近はみんなちょっとお疲れ気味なのか、静かな車内だ。みんな寝ちゃってるけど、運転手は大丈夫かな。と思って後ろの席からリカちゃんの様子を見れば、なにやら音楽に合わせてノリノリになっている。居眠り運転はなさそうだね。
そんな車に揺られていると、隣に座ったのマドカが腕をつついてきたんで、つつき返した。ちょいちょいっと。
「ちょっと、なに? くすぐったいわよ」
「いやいや。マドカが先にやったじゃん」
「そうじゃなくて……それより、どこの交流会に参加するか決めた? 紫雲館だけ?」
紫雲館は女優っぽいハンターのセーラさんがいる『武蔵野お嬢様組』の通称で、さらにはクランハウスの名前らしい。セーラさんのクランは、通称もカッコいいわ。
「うーん、どうすっかと思ってるね。マドカは『海風舞踊団』だっけ? そこしか行かないの?」
「あたしも大手のクランにはいろいろ興味あるわ。だけど、今回はひとつのクランに絞って、じっくり教わったり稽古をつけてもらったりしようかと思ってるの」
「そっか。ツバキとまゆまゆも、そんなこと言ってた気がするね」
「ギンコとリリカはあちこち回って、繋がりを作ることと情報収集が目的よね。アオイは何か目的ないの? 特にないなら紫雲館でじっくり、ハンターとしての基礎を教わり直すのもいいと思うわよ?」
それもありっちゃありだね。セーラさんめっちゃいい感じの人だし。
「ちょっと考えてるのは、カッコいい上級クラスの人にさ、どうやってそれになったのか聞こうと思ってんだよね。勇者とか聖女とかの人にさ」
「ああ、それはいいわね。紫雲館の星ノ宮聖来は、まさに聖女よ。そういう意味でもちょうどいいじゃない」
セーラさんのクラスは聖女だっていうのだから驚きだ。まああの人なら聖女のクラスに似合いまくってるから許せるわ。
これがもしパッとしない奴が聖女だったら、私はこの世の理不尽を嘆いて暴れ回ってしまうところだったわ。
「昨日の夜、雪乃さんにあれこれ教えてもらったんだけどね。気になるところはもう全部行ってみるのもありかなって、いま思ったわ。面白そうなクランが結構あるんだよ」
「全部? あたしとしてはちょっと心配ね。本当にひとりで大丈夫?」
「え、大丈夫だって。私は立派な成人女性なんだからさ」
もう、そんな心配は全然まったく必要ないわ。
「よし決めた。私は気になる上位クランに殴り込みまくるわ」
「本当にやめてね?」
「意気込みの話だから。大丈夫だって」
あと私は新進気鋭の将来有望な新人ハンターだからね。普段はちょっと塩対応な私がフレンドリーに接近すれば、きっと歓迎されるよ。むしろ大歓迎されるわ。知り合いどころか、友だちだっていっぱいできるに決まってる。
うん、たぶんそうなる。そんでもって、私だけじゃなくて花園のみんなは歓迎されまくるはず。
この機会に花園のいい噂が広まればいいね。
「交流会を開いてくれる大手クランのハンターたちは、思惑はあっても基本的に指導やハンター同士の仲を取り持つ立場よ。あたしとしては、そこに集まる花園をライバル視するハンターが気になるわね。アオイは簡単に挑発に乗りそうだし……」
「まあまあまあ、大丈夫だよ。なんかあったら、ぶっ飛ばして黙らせるからさ」
「だからそれはやめてね?」
もう、マドカは心配性だね。
「まゆまゆは売られたケンカだったら買ってもいいって言ってたよ? ハンターはなめられたらダメだよって。私だったら、中途半端な奴らに負けないし!」
「時と場所を選ぶ必要があるって言ってるのよ。ふう……アオイ。帰ったら雪乃さんを交えて少し話すわよ。このままじゃ、単独行動させられないわ」
「えー、なんでよ」
むしろ勇者なんてクラスの奴をぶっ飛ばして、勇者より山賊のほうが実はすごいってことにしたかったのに。
どうせならケンカ売ってくれないかなって思ってたのに。もし負けても勇者がどのくらい強いかわかって、どっちに転んでも損はないのにね。むしろ勇者には超強くあってほしいわ。
それにしてもだよ。やっぱマドカは心配性だね。




