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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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再び現れたモンスター

 滝に打たれているモンスターとかさあ、なんなんだよ。

 修行中? あれって修行中なの?


「皆、どうする? 転送陣はすぐそこだ。わざわざ戦わずとも、逃げるのは容易だが」

「あの威圧感、普通とちゃう」

「だよな。またイレギュラーか?」


 それっぽいのと出会ったのは、神楽坂でマグマ骸骨のカッパくんと戦って以来かな。久しぶりだね。

 修行中のモンスターの様子を見ていたら、どうやら修行は終わったみたい。でっかいモンスターが滝のゾーンから前に進み出た。姿がやっとはっきりしたね。おお?


「あーっ、なんか見たことあるかも!」

「そうなんですか? 葵ちゃん、あれと戦ったことが?」

「そうそう、そうだよ。ずっと前にこの東中野でさ、もっと上の階層で会ったことあるわ。あの時のよりもずっとでかいけど、まあ似たような感じ?」


 頭がえっと、5つもある龍だよ。前の時にもそうだったような気がする。見覚えあるわ。

 うんうん、思い出した。ずっと装備しているこの魔法学園の制服っぽいやつをドロップしたモンスターだよ。ありがたやー。


「前にアオイが話していた五頭龍かしらね」

「たぶんね! ちょっとでかいけど、同じモンスターだと思うよ」


 あれは超いいモンスターに違いないわ。やっぱ滝に打たれて修行してるだけのことはあるよ。


「以前はどうやって倒したんですか? やはりハンマーで?」

「いやー、たしか毒で倒したわ。私ったら、まだあの時は弱っちかったからさ」

「毒が効くならアタシの出番だな。帰る前にさくっとやっちまうか」


 超いいモンスターだから、なんかいいものドロップするかしれんし。私もやりたいね。

 まゆまゆの毒攻撃で終わるなら、ホントにさくっと終わるかも。


「待って、あれはおそらくイレギュラーよ。アオイも前とは少し違うと言っているし、同じように倒せるとは限らないわ」

「だとしても私は戦いたいですね。イレギュラーと戦える機会は貴重です。葵はどうです?」

「そうだね。あ、でもマドカは『第六感』のスキルがあるじゃん? マドカが嫌ならやめとくよ。どうなん?」


 マドカは地味と言っているスキルだけど、私はマブダチの直感は信じるよ。知らん奴が直感で言うことなら、全然信じないけど。むしろいい加減なこと言うなよってぶっ飛ばすけど。


「特に嫌な感じはしていないのだけど、そろそろ引き上げる頃合いだから。みんなの疲労や消耗が気になっただけよ」


 みんなで顔を見合わせたけど、もう帰りたい派は特にいないみたい。

 それにたまには強いのとも戦わないと、感覚を磨けないからね。危険はあるけどそれがハンターってもんだし、よっぽどじゃなきゃ逃げたらダメだね。


「じゃあ、やろうよ! あと私が持ってる『弁財天の加護』って、あの龍を倒してゲットしたんだよ。魅力とか財運がアップするやつね。まあゲットできるとは限らんけど、もしかしたらお得があるかも?」


 ここでまたみんなが顔を見合わせた。なんなのよ。


「マジかよ、アタシはやるぞ。魅力と財運の加護と聞いて、黙って引き下がれるわけがねえ。絶対に倒すぞ」

「わたしも絶対っ、ほしいです!」

「異論はないな。実に魅力的な加護だ」

「まあ、あたしも加護はほしいわね」


 沖ちゃんは貴重なイレギュラーとの戦いに賛成だったし、みんなの気合が入ったなら理由はなんでもいいよ。まゆまゆとリカちゃんの気合が特にすごいわ。ツバキだけはわからんけど。



 イレギュラーモンスターは滝つぼから出たところのちょっと大きめの川で、のんびりしているね。気持ちよさそう。そいつを横目に見ながら簡単な作戦会議だ。

 加護がほしい欲望にまみれたみんなの都合と、相手は見るからに強そうなモンスターってこともあり、最初から全力全開でぶっ倒しにかかることになった。


 もうお試しがどうとか、そんなことは気にしない。とにかく全力でぶっ倒す。


「では皆さん、反撃があった場合にはわたしが全力で守ります。明るい未来のため、力を振り絞って倒してください。あとは帰るだけですから」


 いつになくリカちゃんの気合がすごいわ。ちょっと迫力がおかしい感じだね。


「任せろ、梨々花。あれは毒が弱点らしいからな、毒どころかアタシが持てる全状態異常を全力でぶち込んでやるぜ」


 まゆまゆもちょっと様子がおかしいね。まあいいけどさ。


「私は遠距離攻撃の手段がないので……」

「瑠璃はあれが距離を詰めてきた時に備えてくれ。それに他のモンスターの姿がないのは気になる。最悪、あれとの戦いに集中している時に不意を打たれかねん。周辺警戒を頼む」


 そこまで私は夢中にならないよ。まあみんなのフォローに沖ちゃんがいてくれるのは心強いかな。

 まゆまゆの『耐性喰い』と『毒針術』が届く距離まで近づいたら作戦開始だ。あとはもうなにが起こっても、最後までやり切るのみだね。


「よし、ここなら届く。いけるぞ」

「ほいじゃ、リカちゃんの防御と同時にいくよー」


 みんなの気合が高まるのがわかる。

 私も手は抜かない。こうなったら全力でやってやる。


「いきますねえ、はい『不動防御』!」


 これを合図にまゆまゆが『耐性喰い』を発動し、ツバキが梓弓をかき鳴らして、モンスターを弱らせにかかった。効果の確認もしない。一気にたたみかける。

 マドカと銀ちゃんが銃をぶっ放しまくり、まゆまゆはさらに状態異常攻撃を連発、ツバキは呪符を飛ばしまくりつつ新スキルの『清浄なる矢』まで放っていた。


 私も合わせて『黒縄』を発動した……はずなのになんか上手くいかない。


「マジで? もしかして水の中だと発動できないっぽい?」


 焼けた縄を地面から生やして敵を絡めとるスキル、なんだけどモンスターが川の中にいるからかな? たしかにこれまで試したことなかったわ。

 めっちゃ強いスキルだけど、空を飛んでる系の奴にも使えないし、いつでも使えるってわけじゃないよね。


「でもこっちがあるもんね!」


 スキルの代わりに、魔法の矢を放つ装備でやってやる。これだと命中率が低いけど、モンスターがでっかいからね。

 ドバドバ魔法の矢を放ちまくって、数撃ちゃ当たる戦法でカバーできる。


 そんな感じの全力攻撃をたぶん10秒とか? そのくらい続けたけど、モンスターが光に変わったらわかるはず。でもそんな感じはしない。煙で見えなくなってるけど、まだいるよね。

 みんなも気になったのか、全力攻撃を中断して様子を見ることに。するとそこには水の球? みたいなものがあった。でっかい水球だね。


「おいおい、なんだありゃ。防御結界みてえなもんか?」

「攻撃が届いていないように思えますね」

「水の衝撃吸収性はあなどれん。あれの厚さがどれほどかわからんが、仮に数メートル程度もあるとすれば、狙撃銃の弾丸すら完全に失速させることも可能だ」


 マジかよ。そんなに?


「あれをどうにかしないと。このままでは倒せそうにないですねえ」


 透明な水の膜の向こうに、巨体と5つの首がゆらゆらしているのが透けて見える。なかなか威圧感あるね。


「私の『迅雷・村雨丸』を全力で使えば、あの水球を凍らせることは可能かもしれません。かなりの魔力を消費しますが」

「それよ。ルリが水球を凍らせて、アオイの打撃でそれを砕けない?」

「氷だよね? いけるかも。試してみる?」


 水のかたまりを叩き割るのは難しそうな気がしたけど、氷ならいけるよね。特に私の新スキル『メラメラハンマー』はいい感じに効果ありそう。

 あ、川とかもまとめて凍ったら『黒縄』が使えたりする? まあ全部試してみればいいよね。


「その隙を逃さず、アタシが毒を仕掛けるって寸法か」

「反撃っ、きますよ!」


 警告にささっと反応して、みんなでリカちゃんの後ろに回った。

 その直後にすごい水しぶきが降りかかった。しかも大雨みたいにずっと続いている。なんだよもう、ずぶ濡れになっちまったよ。


「こ、これっ、ちょっとマズいかもー!」


 不動のリカちゃんが慌てるなんて、なかなかない。

 どんな攻撃だろうと思って、頼れる『カチカチアーマー』を使いながら横にずれてみた。


 水しぶきで全然見えないね。思い切って移動すると、なんと龍は5つの頭の口から水鉄砲みたいなのを吐き出していて、それが全部リカちゃんの盾に直撃していた。大量の水が盾に当たって弾かれれば、そりゃ雨みたいにもなるわ。


 ただ、あの水の勢いをスキルで耐えようとするなら、リカちゃんの消耗はとんでもないことになってそう。


 うおっと。見てる場合じゃない、お助けしないと!

 とりあえず魔法の矢を放って攻撃したら、また水の膜を張られて防がれた。しかも水鉄砲の攻撃はそのまま続いている。

 なんだよあれ。バリア張りながら攻撃とか、ずるいだろ。


「だったら、ドカンとかますしかないね!」


 ハンマーを直接叩きこんでやろうと思ったところで、首のひとつが私のほうを向いた。


「うおっと」


 水鉄砲を避けようとジャンプしたら、思った以上のすごいスピードで水が当たって吹っ飛ばされてしまった。

 こっちも『カチカチアーマー』のお陰でダメージはないけどさ。

 でもこれだと近づけないじゃん。どうするかな。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 見た目に違わず、めちゃ強いですね5ヘッドドラゴン(仮名)さん…!! 以前葵ちゃんが倒したのは若造で、今回のは経験豊富な壮年のベテランな可能性も? そう考えると滝マッサージ(?)し…
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