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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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猫に小判の最新高機能ガジェット

「これが私のスマホだよ! わかる? みんなの旧型とは違ってさ、最新だからね。もう最先端なんだよ、超すごいんだよね」


 練馬のクランハウスに戻ってみれば、ツバキしかいなかったけど自慢しまくった。見せびらかしたのに反応が薄かったのは、最新鋭のスマホに興味ないからっぽい。

 まあツバキは機械系が好きってわけじゃないから、そんなもんだよね。


 やっとお出かけから帰ってきたマドカと雪乃さんには、いいリアクションを期待したい。大いに期待したい!


「なに言ってるの。ここ数年に出たものなんか、どれも大差ないわよ」

「いやいや、そんなことはないよ。だって最新で、めっちゃお高いやつなんだからさ。これで数年前のと大差ないなんて、あるわけねーわ」


 そうだよ。むしろ、そんなことがあってたまるかって話だよ。いやホントに。


「どこがどう違うのか、店員さんには説明してもらったのですか?」

「えっと、うん。なんやかんや言ってたね。めっちゃ長々とした説明されたよ。ほら雪乃さん、見てみて? この未来感あふれちゃってるフォルムをさ。どう見ても最新って感じするよ」


 特にこの赤い金属の色と質感がカッコいいわ。未来感あふれちゃってるわ。


「ケースは付けないの?」

「あー、それね。店員さんにも言われたけど、そんなもん付けたらこのカッコいいフォルムと色が見えないじゃん。意味ないって」

「まあそう考える人もいるわね。アプリは入れたの? メッセージアプリ。手伝うわよ」

「実はもう入ってんだなー、これが!」

「よく自分でやれたわね。あ、お店で教えてもらった?」


 ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれました。


「それがさー、めっちゃ親切な女優に会ったんだよ。女優だよ、女優。それも超美人の。その人にいろいろ教えてもらったんだよ。メッセージ交換もできるようにしたし、もう友だちになったわ」

「女優……? 誰のこと?」


 そうか。マドカも元芸能人だからね。ひょっとしたら知り合いかもしれないね。


「なんとか組のセーラって人だよ。知ってる? すごい迫力ある美人だったし、有名女優かも?」

「……ちょっと心当たりないわね」

「組というと、劇団の方でしょうか」

「えー、知らないの? あ、ツバキならドラマ好きだし知ってるかも! おーい、ツバキ、こっちこっち」


 ロビーの隅っこで、スマホを見ていたのを呼び寄せる。


「ねえねえ、なんとか組のセーラって女優知ってる? すごい美人で迫力ある感じの」

「……組? うち、舞台女優には詳しない」

「あ、そうだよ。じゃあ写真見る? 一緒に撮ってもらったんだよ」

「写真あるの? なら最初に見せてよ」


 うえーっと、どこから写真を取り出せば……。


「貸して」


 素直に差し出すと、慣れた手つきでちょちょいと写真を出してくれた。

 最新鋭のスマホなのに、さすがだよ。順応が早いね。


「待って。これって紫雲館の星ノ宮聖来じゃない」

「しうんかん? てゆーか、やっぱ知ってんじゃん。有名な女優なんだよね?」


 それはそうだわ。あれだけ迫力ある美人なんか、芸能人の中にだってそうはいないよ。

 私はたまたま知らなかったけど、みんなは知ってるよね。


「葵さん、紫雲館というのはクラン『武蔵野お嬢様組』の通称です。星ノ宮聖来さんは、紫雲館のサブクランマスターですね。とても有名な方ですよ」

「え、ハンター? 女優じゃないの? あ、わかった。女優やりながらハンターもやってんだ!」


 それはそれですごいわ。


「芸能活動はしていなかったと思うけど。ツバキは知ってる?」

「うちは知らへん。雪乃はんは?」

「いえ、私も知らないですね。紫雲館には広報のメンバーもいますから、星ノ宮さんがそのような活動をされているのは見たことがありません。葵さん、星ノ宮さんが女優と言っていたのですか?」


 え? そう言われてみれば。


「なんとか組のセーラって名乗られたかな? たしかに、自分で女優とかは言ってなかった気がするわ」

「それはそうよ。そんな嘘をついても意味ないもの」


 いやでもあれは女優だって思うだろ。女優の見本みたいな人だよ。誰だってそう思うに決まってるわ。


「どういった経緯で知り合ったのですか?」


 スマホショップで暴れ回る寸前に話しかけられて、カフェで仲良くなって、最後にスマホを一緒に買って、面倒な手続きのサポートまでしてもらってしまった。そんな話を聞かせてあげた。


「……白峰琴葉まで」

「琴葉さんのことも知ってんの? 秘書っぽい感じでお堅い人かと思いきや、優しくて親切だったよ」

「紫雲館の幹部よ。アオイは知らないみたいだけど『武蔵野お嬢様組』って、トップクランのひとつなのよ。しかも最近台頭したクランではなくて、ずっと長くトップで居続けている、正真正銘のエリートクランよ。そこの幹部を女優やマネージャーと思い込んだまま、一緒にお茶を飲んだり買い物したり、そんなハンターはアオイだけよ」


 おおう、エリートかよ。なんというか、あれだね。

 蒼龍のおっさんも自分で「俺があの蒼龍だ」みたいなことは言わなかったし、セーラさんたちも自分が「あのトップクランの幹部なんです」みたいなことは言わなかった。


 きっと知ってて当然みたいなところがあるのかも。有名人はそういう感じなんだろうね。

 真の大物の振る舞いを私も学んでいこう。うちだって未来はトップクランになる予定だし、いいお手本に恵まれているわ。ありがたや。

 うん、なんか知らんけどやる気がわいてきた。


「不思議なところで縁を繋ぐのが、葵さんらしいのかもしれませんね」

「そうなんですけど、一応は警戒したほうがいいかもしれません。時期が時期なので」

「天剣とフロレゾの件ですね。葵さんの話では、星ノ宮さんも気にかけていたようですし」


 その話はもういいよ。よその奴がどんなスキルを持っていようが、どうでもいいし私に関係ないからね。


「そういえば雪乃さん、紫雲館のような老舗クランって、他のクランとの交流はあるんですか?」

「ええ、定期的に業界全体の技術向上を目的とした勉強会を主催していると聞いたことがあります。紫雲館だけではなく、上位クランはそうした取り組みをしているようですね」

「あ、そういえば交流会がありましたね」

「交流会? へー、そんなのがあるんだ」


 勉強はめんどいけど、交流は面白そうかも。


「あ、まゆ姉はんからメッセージや。グループのほう」

「そうだよ! 私もそのグループに入れてよ」

「いまやるからアオイのスマホ貸して」

「まゆさんたち、お好み焼き屋に集まるみたいですね。私たちも行きましょうか」

「うおー、いいじゃん! スペシャル大王ミックス、また食べたいわ」


 今夜はまた盛り上がって、英気を養おう。最新鋭のスマホも自慢しまくらないと。

 そうしたらまた明日から気合を入れてダンジョン巡りだ。


 みんなのサブクラスゲットを思うと楽しみでならないね。

 今日はいっぱい食べまくって力をつけよう。前祝いをしたっていい。

 ちょっと先の未来のみんな、サブクラスゲットおめでとう!

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― 新着の感想 ―
1ヶ月後… 「最新鋭のスマホだよ!」 「新機種出たからそれ型落ちしたで」 「(´・ω・`)」 とかなってそう。
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