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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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衝撃の名残と休日の午前

 みんなマジメにゴリラっぽいハゲのおっさんの熱いトークを聞いていたけど、私はもう耐えられないわ。

 あのむさ苦しくも鬱陶しい絵面に我慢ならないわ。なんか私まで汗臭くなってきた気がするわ。


 それにしてもだよ。画面越しなのに、すごいパワーを感じる。さすがはトップ層のクランマスターだよ。女子人気は低そうだけど、そこだけはマジですごいかも。

 でももう十分だね。


「ういー、お風呂入ってくるわ」

「葵姉はん、うちも」

「だったらアタシも入るかな。天剣のおっさんども見てたら、なんでかアタシまで汗かいちまった」

「もう、まだ話の途中よ?」


 マドカはマジメで我慢強いねえ。あんなむさ苦しい画面を見続けるなんて、精神力がすごいよ。


「天剣の今後の話はアタシらに関係ねえだろ? フロレゾの方向性も見えたようなもんだしな。いずれにしても、花園は花園らしいやり方で行くことに変わりねえ。まどかも銀子も、あんま余所のクランを気にしすぎんな。いいから風呂入ろうぜ」


 まゆまゆはいいこと言うね。気にしすぎはよくないわ。


「私は念のため終わりまで見る。天剣はともかく、フロレゾの連中は何を言い出すかわからん。まどかに向かって余計なことを言うかもしれんしな」


 うわー。


「あたしも気になるから。ただ、マユの言うとおり全員で見る必要はないわね」

「では私は難易度を変えるスキルについて、特殊空間資源管理局に詳細を問い合わせてみます。同様の質問が殺到していると思いますので、返答には時間がかかりそうですが」

「特空局は内閣官房の所管でしたね。今回はかなり注目を浴びた出来事です。個別の問い合わせに答えるのではなく、会見を開いて質問に回答する形をとるかもしれませんね」


 雪乃さんと銀ちゃんがまた小難しいことを話している。もういいや。


「沖ちゃんとリカちゃんも一緒にお風呂入る?」

「私はトレーニングをするつもりなので、後で入ります」

「じゃあ、わたしはご一緒しますね」


 よっしゃ、よっしゃ。


 いったん部屋に戻って、着替えやタオルを持って大浴場に行く。

 それぞれ適当に体を洗ったら、ぬるめのお湯にみんなで浸かった。


「さっきの高千穂さんの話、どう思います?」

「あの女、『ベリーハードモード』とか言ってやがったな。名前からして葵のスキルのほうが強力なんだろうが、効果は同系統で間違いなさそうだな」

「よく公表しましたよねえ」

「スキルが強化されるなんて、かなりやべえからな。思い切ったことしやがる」


 ふいー、やっぱ明るいうちから入るお風呂は気持ちいいわ。たまらんね。


「きっとしばらくは大騒ぎになりますよねえ」

「アタシらの想像以上にな。だがこれ以上ねえ宣伝になっただろ。あいつらはもう一生、食いっぱぐれねえだろうな」


 あんですと? 一生? どういうこと?


「そんなにお金稼げんの?」

「使いきれねえくらい稼げる。金払えば一緒にダンジョンに入ってやるって商売すりゃあ、日本中どころか世界中からハンターが集まるんじゃねえか? 高難易度化がネックだが、どっかのダンジョンを占有しちまえばいい」

「効果が効果ですからねえ、ハンターたちの要望がきっとたくさん出ます。人の少ないダンジョンはいくらでもありますから、簡単に話は付けられると思いますよ」


 え、すごくね?

 もう世界規模じゃん。一生安泰じゃん。


「うおー、だったら私も教えちゃったほうがいいのかな? いっぱい稼げるよね? 私のウルトラハードのほうがすごそうだし!」


 スキルは秘密にするものって話だったから、私は仲間以外には内緒にしていたのにね。一生安泰はすごすぎる。


「葵姉はん、そやけど不便や」

「だな。占有したダンジョン以外には、気軽に行けなくなっちまうだろ。まあ休みくらいは取れるだろうが、基本的には毎日何時間かはそのダンジョンにいなきゃなんねえ。なんせ世界中からハンターが集まるんだからよ。スキルの強化だけじゃなく魔石の質も上がるなら、尚更サボれねえわな。むしろ死ぬまで逃げられねえだろ」


 は? 無理。絶対に嫌だわ。


 気軽にお出かけできないじゃん。その時の思いつきで行動できないじゃん。面白そうなダンジョンがあったら、好きに行って探索したいし。

 決まったダンジョンにずっといるなんて無理に決まってるわ。しかも死ぬまでって、なんだそれ。


 私は好きな時に、好きな所に行くのだよ。当然だろ。


「あ、そもそも私みたいに『ソロダンジョン』のスキルがないと、どっちみち気軽にダンジョンに入れないわ」

「ダンジョン内全体の、強制的な高難易度化ですからねえ。あえて公表したのは、それを考えての上かもしれません」


 マジかー。そういうこと考えると、ちっともうらやましくねーわ。

 お金があっても自由がないじゃん。逆に可哀そうかも。お金は大事だけどさ。

 とりあえずはいいや。午前中からの優雅なお風呂タイムに、小難しい話はいらないよ。



 お風呂上りにツバキと一緒にキッチンに移動し、業務用のでっかい冷凍庫を開けた。

 真のクランハウスは設備がいちいち豪快で、見ても使っても気分がいい。

 どこぞのレストラン並に広いキッチンなのに、これで家庭用サイズの冷蔵庫しかなかったら意味わからんからね。こんなもんなのかな。


「うち、ラムレーズン」

「ほいほい」


 コンビニで買ったちっさいカップアイスを取ってやる。量が少ないのに、ちょっとお高めのやつだ。

 それに対して私は量が倍くらいあるのに、お値段は半分以下のカップアイスを手に取る。こっちのほういいだろといつもみんなに言っているのに、どうしてか花園のみんなはちっさいやつを買うことが多い。わからん。


「絶対、こっちのほうがいいのに」

「そのアイス、ラムレーズンがあらへん」

「ブルーベリーも美味しいよ」

「うち、ラムレーズン……」


 まあ好きな味が食べたいよね。なら仕方ない。

 キッチンに置いた椅子に座って、雪乃さんが買ってくれたおしゃれスプーンを用意する。

 ふたり並んでモリモリ食べていると、家でも全然隙のない美少女がキッチンに入ってきた。


「まどかおねえ」

「アイス食べる? まだあるよ」

「そうね、じゃあ食べようかな。紅茶入れるわね」


 さすがだわ。紅茶があると急におしゃれ感がはね上がる気がするわ。

 マドカさん、さすがっす!


「いつも思うのだけど、このキッチンを誰も使っていないのが申し訳なくなるわね」


 せっかくの豪勢なキッチンなのに、花園は誰も料理をしないからね。お茶を入れたりカップ麺にお湯を入れたり、あとは電子レンジとトースターくらいかな。そのくらいしか使ってない。


「料理人とか雇う? 私たちったら、割と規則正しい生活送ってるし」

「アオイは料理してみる気ないの?」

「全然、ねーわ。めんどくせーわ。マドカとツバキは? なんか作ってくれてもいいよ?」

「あたしはいいわ」

「うちも」


 そうすか。そうだよね。めんどくさいしね。


「ふいー、今日はどうすっかなー。案外、休みって持て余すよね」

「うちはドラマ見る」

「ツバキって意外とそういうの好きだよね」

「あたしはもう少ししたら、雪乃さんと買い物に出るわ」

「え、ずるいわ。私も雪乃さんと行きたいよ。私も誘っておくれよ」

「化粧品を見に行くのよ?」

「それは行かないわ」


 もうたくさん持ってるのに、なんやかんや買わされるのが目に見えてしまうよ。


「それよりアオイ、暇ならスマホ買ってよ。もう住所あるんだから、買えるわよね?」

「おお、そういやそうじゃん。私ったら買えるじゃん」

「一緒に行く? 先にそっちに寄ってもいいわよ」

「大丈夫だって。お店で普通に買うだけだし」


 私ったら立派な成人女性だからね。いちいち付き添ってもらわなくたって大丈夫。


 それにしても、ついに私も自分のスマホか。

 ないのが当たり前だったし、最近は別になくてもよくね? と思いかけていたからね。

 でもあれば便利だよね。お金も住所もあるし、今日は暇だし。ちょっと買いに行ってみるかな。

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― 新着の感想 ―
アオイちゃん、大人なレディだもんね。 いらない光回線だとかオプションモリモリで帰ってきそう。
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