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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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驚きの速報!

 朝からのややこしそうな話に、どうしても頭が追い付かない。

 やっぱ朝はね。まだ頭が働かないから仕方ないよね。

 でもクランマスターとして、がんばって聞くだけはちゃんと聞こう。心意気が大事だよ。


「活動方針の確認って、なんか変えるのか? アタシはいまのままでいいと思うがよ。つばきはどうだ?」

「うちは、サブクラスがほしい」


 私たちはハンターとしての経験を積むために、いろいろなダンジョンを回りつつ、全員がレベル20になってサブクラスをゲットすることがとりあえずの目標だ。

 いまのところは私と銀ちゃんが達成していて、次はたぶんツバキの番だと思う。みんながどんなクラスを取るのか楽しみで仕方ないわ。


「別段、これまでと変わったことをしようと言うつもりはない。妙案が出れば話は変わるが、改めての確認と思ってくれ」

「実際のところ、あたしたちはこれまで通りのプランで進んでいくことがいいと思うわ。天剣のようなクランに比べれば、地味かもしれないけどね」

「地味でも堅実です。無駄なことをしているわけではありませんし。それに最上位のクランと私たちを比べても……」

「だよな、瑠璃。まずは全員でサブクラスとってよ、次を考えるのはその後じゃねえか? フロレゾは気に食わねえが、まどかは別に対抗意識ねえんだろ?」

「ちょっかい出されるのが鬱陶しいだけね」


 鬱陶しいよね。私は叩き潰したいわ。


「おふたりは『フローラリア・レゾナンス』がクランとして飛躍する可能性を指摘しながらも、私たち花園はこれまで通りにやっていきましょう、と言いたいわけですね?」

「そういうことです、雪乃さん。天剣の挑戦が上手くいけば、ほかの上位クランもこのまま黙ってはいません。中位から下位のクランにまで何かしらの影響は及ぶでしょうし、国中でハンター業界が盛り上がるでしょう。しかし、我々はペースを乱さずにやっていったほうがいい。そう考えています」

「アオイもそれでいい?」


 いやー、私は普通に勝ちたいんだけど。マドカの敵は私の敵だし、敵に負けたくないわ。


「葵ちゃんは不満そうですねえ」

「そうだよ! みんなでサブクラスゲットして、ランキング駆け上がって、フロなんとかって奴らをぶっちぎりたいわ! さっきの天剣とかいう奴らに協力したら、ランキングめっちゃ上がるってことだよね? どのくらい上がんの? てゆーか、いまってどのくらいだっけ?」


 そもそもね。普段はあんま気にしてないけど。


「花園は2,300位くらいですね。フロレゾのほうは、現在800位くらいです」


 雪乃さんがさらっと教えてくれたけど、私たちったらまだまだだ。思ったよりも全然低くない?

 なんかもう話にならんわ。私たちったら、そんな順位だったのかよ。そりゃあ、なめられちゃうわ。しかもだよ。


「うへー、いまの時点でも結構、差があるじゃん。2,300位と800位の差がさ、もっと離されるってことだよね?」

「具体的には読めないけど、さらに開くことは間違いないわ。ただ、それは一時的なものになるはずよ。天剣のおこぼれにあずかって、景気がいいのは今期と来期がせいぜいじゃないかしら。長くても数年なんてもたないと思う」


 ランキングは半年ごとにリセットだっけ。


「ああ、フロレゾのダンジョン探索実績はそれほど大したものではない。今後伸びはするだろうが、我々ほどではないだろう。スポンサー収入が主なフロレゾでは、どこかで必ず伸び悩む。今回のことは一過性のものと考えていい」


 たしかクランランキングは、魔石とポーションとその他の武具やなんかの売り上げの、個別ランキングがあった気がする。それら全部にスポンサー収入を加えたのが、総合のクランランキングになったはず。たぶん。


 ダンジョンでゲットした物を社会に還元するのがハンターの役割ってもんらしいからね。その稼ぎがランキングを決めるわけで、お金稼ぎのバトルだよ。


 私たちはいまお金稼ぎよりも、いろんなダンジョンを上層から巡って経験を積んでいきながら、みんなでサブクラスをゲットするのが目標だ。

 モンスターはそんなに倒してないし、大したお宝も見つけてない。おまけに武具は私専用になっちゃうから売れないし、順位が低いのは仕方ないわ。


 仕方ないんだけどねー。やっぱ負けてるのはくやしいわ。


「すぐに逆転しようと思ったら、神楽坂ダンジョンに閉じこもるしかない感じかー」


 慣れたあのダンジョンで骸骨くんを倒しまくってレベルを上げて、下層にさえ進めば稼ぎが跳ね上がるはずなんだよ。


「いくつか理由があっていまの方針にしたのだから、元に戻すなら相応の理由がないといけないわね。あたしはいまの方針の継続がいいと思うけど」

「様々なモンスターや環境を相手に経験を積むこと、そして新たに効率のよい稼ぎ場所を見つけることが主でしたよね。実感できる結果は出ていますから、このまま続けたほうがいいと私も思います」

「そっか。まあそうだよね。仕方ないね、いまだけ調子に乗らせてやるわ。いまだけ!」


 変に意識して自分たちのペースを乱すのはよくないかもね。


「アタシらには細かく組んだ予定があるしよ、それでやっていきゃいいってことだ」

「では我々の方針は変わらないということでいいな。天剣やフロレゾの話題が多くなるだろうが、何かあれば随時に伝える」

「ちょっと時間使っちゃったけど、今日もダンジョンよ。1時間後に出発予定だけど、変更なくてもいいわね?」

「いいよ。私、朝メシ食べてくるわ!」

「うちも」


 腹が減ったままでは、いいパフォーマンスが出せないからね。

 買い置きの冷凍メシをちゃちゃっと食べよう。今日は残り少ないハンバーグいっとくか!



 よそはよそ、うちはうちの精神で、騒がれている奴らのことなんか気にしない。

 世間ではなにやら盛り上がっているらしいけど気にしない! 私たち花園はいつものように活動を続けた。


 新しいダンジョンに乗り込んで、新しいモンスターをぶっ倒す。

 新しい環境で、新しい戦い方や探索方法を試し、あれこれといろいろな経験を積んでいく。そうやって私たちは地味にパワーアップを重ねるのだよ。地味だけど!


 うあー、でもやっぱ華々しく活躍したいわ。

 私ったら、めっちゃ注目を浴びまくって活躍したいわ。

 未知の階層に挑むなんとかって奴らが、うらやましくて腹立たしいわ!

 でもいまの花園は下積みの時代なんだとわかっているよ。地道にやっていこう。



 そんなこんなで数日が過ぎた、また朝の時間帯。

 今日はお休みの日だというのに、マドカと銀ちゃんの呼びかけで集められた。せっかく今朝は散歩の後で二度寝を決め込んでいたのに。


「ういー、今度はどうしたん?」


 ごしごしと丁寧に顔を洗ってからロビーに行けば、なんだか重たい空気だよ。

 なんかあったのかな? 誰かケンカしたってわけでもなさそうだけど。不思議に思いながらもとりあえず椅子に座った。


「全員そろったわね。みんな、朝のニュースはチェックした?」


 マドカの問いかけには誰も応えない。休みの日に辛気臭いニュースなんて見る奴はいないよ。

 それに私たちったら、朝はそれぞれのルーティーンがあるからね。日課にしているマドカと銀ちゃん以外は、誰もニュースは見ないと思う。


「どうしたってんだ? 深刻な顔してよ」


 ホントにそうだわ。マドカも銀ちゃんも、いつになく顔が怖いよ。


「……今日から天剣が第四十八階層以降に挑むという話はしたな? それが今朝の最新のニュースで、早々に失敗が報道された」

「はあ? なんだそれ。今日から開始で、もう失敗したのかよ? まだ朝の10時だぞ」


 いくらなんでも早すぎるだろ。意味わからんわ。


「詳細はわかっていないが、天剣の先遣隊が敗走したらしい。転送陣で第四十八階層に入って、間もないことだと報道されていたな」

「天剣の主力は無傷みたいだけど、露払いと調査を兼ねる先遣隊もエリートよ。第四十八階層は未知の階層ではないし、一流のハンターたちがあっけなく敗走というのはおかしいのよね」

「イレギュラーモンスターでも出たんでしょうかねえ」

「その可能性はありそうだな」


 ほうほう。イレギュラーモンスターって超強いからね。あんなのが出たら、そりゃ計画なんて狂うかも。運がないね。


「皆さん、天剣がいまから会見を開くそうです。モニターに映しますね」


 タブレットをチェックしていた雪乃さんが、言いながら準備をしてくれている。

 それにしてもだよ。天剣だか何だか知らんけど、派手に挑戦するなんて言っておいて、あっさりやられて戻ったわけだ。有名な奴らなだけに、これからが大変そうだね。


 立派な成人女性である私は、他人の不幸を喜んだりなんかしないけど。しないけど所詮は他人事だからね、割とどうでもいい気がしてしまうわ。


 いや、違う。私ったら新進気鋭のクランの代表なんだよ。

 どうでもいい奴らでも、立派な挑戦には関心を高く持っていないとだよ。そうだよね。

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葵ちゃんの知能指数が微増している!
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