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ぼっち・ダンジョン  作者: 内藤ゲオルグ


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138/216

ただならぬ空気のお好み焼き屋

 お好み焼き屋さんでわいわい楽しくやっていたら、邪魔な奴らがやってきてしまった!

 なんかの番組? みたいなことを始めるらしい。ちゃんとアポ取って、貸し切りとかでやれよ。まったく、落ち着かないなー。


 結構な人数の食事中の客がいるというのに、遠慮なくスタッフっぽい奴らがそこらに陣取って撮影の準備を始めている。口先だけで謝りながら、図々しい奴らだよ。

 お店のおばちゃんもすまなさそうに、客の私たちみんなに謝っている。


 せっかく楽しくやっていたのに。こいつら、崇高な食事の時間をなんと心得る!

 どうせやるなら、もうちょい気を使えよな!


「タレントさん、入りまーす!」


 なーにがタレントじゃい、邪魔なんだよ。

 ちょっと文句を言ってやろうかね?


「こんにちはー! わあ、美味しそうな匂いですね」


 どんな偉そうな大物芸能人がやってくるのかと思いきや、入ってきたのは小娘だよ。

 ハハッ、一発かましてやれば、びびってとんずらするよね。見てろよ、他人様の崇高な食の時間を邪魔した礼をしてくれるわ!


「え、ルカ?」


 びっくりしたような声が隣から聞こえて、立ち上がりかけた腰をいったん下ろした。


「マドカ、知ってんの? あの小娘」

「小娘って、あたしたちと同じ年頃でしょ?」

「おい待てよ。まどか、もしかしてあれ、お前の昔の仲間じゃねえのか?」

「そうだけど……昔の話よ。いまは関係ないわ」


 おお、なんという偶然。でもたしか昔の仲間って、アイドル時代のだよね?

 だったら、マドカを裏切って追い出したとかいう極悪非道な奴らの仲間だよね?

 ここで会ったが百年目ってやつだよね?

 ハハッ、ぶっ飛ばしてやる!


「向こうはまどかに気づいていないようだな。下手に関わらんほうがいい」

「カメラが回っていますし、ライブでの中継や配信中の可能性もあります。銀子さんの言うとおり、関わらないでおきましょう」


 なんだよ、まあ銀ちゃんと雪乃さんがそう言うなら仕方ないね。

 マドカもはらわた煮えくりかえっているだろうに、涼しい顔でお好み焼き食べている。でもホントはぶっ飛ばしてやりたいよね?


「……まどかおねえ」

「大丈夫よ。みんなも気にしないで」


 そんな風に言われてしまうと、ますます代わりにぶん殴ってやりたくなるわ。マドカの敵は私の敵!


「あのー、インタビューさせてもらっていいっすか?」


 なんか近づいてくるのがいるなと思ったら、さっき土下座していた若造だ。話しかけてきやがったよ。

 マジかよ。どの面下げて、お店の客に頼んでんだよ。迷惑な奴め。ハッキリ言ってやる!


「いいわけねーだろ! 話しかけてくんな!」


 うおおー、こっちはムカついてんだぞ。空気読めよ!


「ちょっと、アオイ……」

「え、あれ? あの、もしかして、まどかさん? 九条まどかさんじゃないですか!」


 バカっぽい若造がでかい声を出すものだから、お店中に聞こえてしまう。みんながこっちを見ちゃってるじゃねーか。

 むしろいま撮影中なんだよね? そんな大声出すとか、マジかよこいつ。


 いや、そんなことよりだ。マドカがめっちゃ嫌そうな顔をしている。

 このバカっぽい若造、もしかして昔の知り合い? なんでもいいけど見過ごせないよね。

 マドカをガードするように体の位置を変えて、若造を威嚇することにした。よし、やったるぞ。


「うおいっ、聞いてんのかー!?」

「な、なんだ、君は」

「お前がなんだよ! さっきからなんなんだよ! どっか行けー!」


 気安くマドカに話しかけんなよな。まったくもう。


「どうした、トラブルか?」


 また別の奴の登場だ。ちょっと偉そうな雰囲気のおっさんが、バカっぽい若造に話しかけている。

 おっさんは責任者っぽい感じ? 無礼な若造をさっさと連れて帰れよな!


「あー、それがその……」

「お客様に失礼のないようにしろと、いつも言ってるだろ」

「違うんですよ、まどかさんがいて」


 だからこっち見んなよ。指まで差すなよ。


「まどかさん?」


 偉そうなおっさんまで、私のガードを避けてマドカを見ようとする。


「もしかして、九条まどか? まさか本当に」


 私のガードを貫く美少女オーラ全開のマドカだよ。隠しきれないのか、おっさんが覗き込もうとしてくる。まるでお宝を発見したみたいな目つきだよ。

 さらにタレントの小娘まで、こっちの様子をめっちゃ見てる。


「ほらほら、ちょっと困りますよ。ほかのお客さんには迷惑かけないって約束したでしょう」


 お店のおばちゃんが入ってきてくれた。

 そうだそうだ、もっと言ってやっておくれよ!


「ああ、騒がせて申し訳ない。しかしですね、あちらは知り合いでして……」


 ごちゃごちゃうるせー。これ以上、私たちの宴を邪魔すんな。

 よっしゃ、テーブルをバンと叩いて注文だ。


「おばちゃん! スペシャル大王ミックス、おかわりちょうだい!」


 お前らのペースに巻き込まれてたまるかい。やっぱ雪乃さんと銀ちゃんの言うとおりだね、関わらないのが一番。こんな奴らは無視するに限るわ。

 それにここは楽しいメシ屋なんだよ。おとなしくお好み焼きを食えよ!


「こっちもレモンサワーおかわりな」

「ウーロン茶も頼む」

「女将さん、イカ焼きと塩ホルモン追加でお願いしますね」

「それじゃあ、こっちは――」


 いいねいいね、さすが私の仲間たち。邪魔者にここはお前らの仕事場じゃなく、メシ屋なんだと自覚させてやろう。


「はーい、追加注文ね。空いたお皿、下げちゃいますね」


 おっさんや若造たちを無視する感じで、やり取りが進んでいく。

 ほかの客の目もあるし、奴らにとっては気まずい感じになった。基本的に図々しい奴らだとは思うけど、ここはおとなしく引き下がってくれんものかね?


 今日の私たちは、サブクラスゲットのお祝いなんだよ。楽しいお好み焼きタイムにしたいんだよ。まったくもう。

 ところがどっこい。そんな私の願いもむなしく、今度は小娘が近づいて来ちゃったよ。なんなんだよ、まったくもう。


「久しぶりね、まどか」


 なんだこいつ、やけに堂々としているね。おまけにカメラまで引き連れてきちゃって。

 え、これ、もしかして撮られてる? 撮られてるよね? マドカはダメだけど、私ならまあいいよ。


 がははっ、仕方ないね。私の勇姿を撮るのは構わんよ!

 よーしよし、ちょっとポーズとか決めてみる?


「まどか、聞こえてるでしょ?」


 うおっと。ポーズとか考えてる場合じゃねーわ。

 後ろにガードしたマドカの顔を見れば、めっちゃ不機嫌そう。そして諦めたように私をそっと押しやると、小娘のほうに体を向けた。


「……高千穂たかちほ春琉花はるるかさん、何か用?」

「随分と他人行儀ね。まあいいわ。それより、戻ってくる気はないの?」


 はあ? なに言ってんだ、こいつ。

 菩薩のように穏やかな私でも、怒りが有頂天になっちまうよ。

 ふざけんなよ、小娘が! 表に出ろい!

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― 新着の感想 ―
うん。読んでるだけで腹立たしい こういう奴らぶん殴れたらいいけど、それも出来ないのがまた腹立たしい 相手のフルネーム言ったのは、公表し辛くするちょっとした嫌がらせかな?
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